6話「最期の再会」~後篇~
しかし、その無表情には別の意味が隠されていた。
残酷な『破壊人形』の義務が。
「零、照れなくていいのよ。笑ってくれていいのに」
玖夢は笑いながら話す。零は無表情である。
「でも、本当にごめんなさい。貴方を13年間も置き去りにして。でも、もう見捨てないから。安心して」
そう言うと、玖夢は零を抱きしめた。
身長は零の方が高いが、玖夢は自分の体全体を使い、思いっきり零を抱きしめたのだ。
しかし、それは・・・。
母親に抱きしめられた零は、その瞬間誰にも見えない程の速さで、懐からナイフを抜いた。
そして、それを・・・。
無表情のまま、自分を抱きしめている母の左胸に深く突き刺した。
「――――っっっ!!。れ・・れ・・・零・・・??」
玖夢は零にもたれかかるように倒れ込む。
零は倒れかかってきた玖夢を、無造作に地面に落した。
そして、無表情のままこの場を去ろうとした。
「お・・・おい!・・おい!待て!!」
しばらく呆然としていた律都が我に返り、零の腕を掴んだ。
そして、焦点の合っていない目を見つめながら叫んだ。
「お、お前!!。じ、自分がなにやったかわかってんのか!?」
すると、律都が叫んだのをまるで気にしないように、零は淡々と自分が行った行為について説明する。
「住人全滅義務遂行」
「・・・・は?」
律都はあっけにとられたような表情になる。
「ってことは、お前は本部が言ってた、惑星の住人を全滅させろっていう命令のために?母親を刺したのか?」
すると、零は首を縦に振った。
「・・・え?・・なんで・・です・・か?・・」
明希が怯えたように後ずさる。
それを見ると、零は今度こそこの場を去った。
名残惜しげでもなく、まったくの無表情で。
「だ・・大丈夫で・・です・・か?」
倒れた玖夢に明希が駆け寄る。
玖夢の元では、律都が応急処置を始めていた。
「く・・これは・・。血が出すぎている。零の腕力で刺されたんだからな、当たり前か」
律都は焦った様子で止血をしている。
「副隊長・・。玖夢さん助かりますか?」
「・・・・明希」
「なんですかっ!?」
律都は、感情を押し殺して明希に命令した。
「・・・すまん、黒雨を呼んで来てくれ」
「桔梗さんをですか?。・・・そんなに酷いんですか?」
「つべこべ言うな。早く」
「は、はい!」
桔梗を呼ぶとなると、一大事なのだろう。
明希はそう考えるとダッシュで桔梗のもとに向かった。
「桔梗さん!!」
明希はメンバーが向かった、軍事部の中心核に飛び込み、桔梗の名を呼んだ。
彼の予想では、各々メンバーが火星の軍勢と戦っている事を想像していたが、事実は違った。
メンバーは、軍事部のデータ室を占拠していて、龍介は火星の長と思える人間と交渉を済ませていた。
すべて終わっていたのだ。
「?。どうしたの?明希君?」
桔梗はいつもの優しげな笑顔で微笑む。
しかし、それを見て明希はゾッとした。
桔梗の顔は返り血で染まっていたのだ。
いつもは温和な笑みが、血で染まっていた。
他のメンバーもそうなのかもしれないが、桔梗の笑みが血を余計不気味なものに見せている。
左目はいつもの通り暗く淀んでいたが、右目には怪しい色の光が灯っていた。
「桔梗さん・・ど・・どうしたんですか?」
「ん?。あぁこれ?。少し、手こずっちゃってね。で、どうしたの?」
変に誤魔化された気がするが、本来の目的を思い出し深く聞かない事にした。
「あの、律都さんが・・・」
説明すると、全員が血相を変えて明希のあとに続き走り出した。
零は何故か、この場にはいなかった。
「律都!!」
龍介は、律都の居場所に辿りつくと律都の名を叫んだ。
「りゅ、龍介。・・・すまん」
律都は必死で止血や応急処置を続けていたが、休まず動いていたせいか、それともさっきの衝撃事件のせいか、ものすごい疲労がたまっているようだった。
「鏡谷副隊長、代わってください!。ナギ手伝って!」
「はい!」
桔梗が律都に代わり応急処置を引き継ぐ。
律都は極度の緊張が解けたからか、後ろに倒れ込んだ。
「お、おい!よっと」
龍介が倒れ込んだ律都を支えてやる。
「すまん・・・」
「いや、お前はよくやった」
龍介は白い歯を見せ付けるようにニッと笑った。
それを見て律都は薄く笑った。
零も、このように笑ってほしいと思いながら・・・・。
しばらく待っていると、桔梗が声をかけてきた。
「すみません、鏡谷副隊長。こっちへ」
「?。どうした桔梗?。こいつは疲れてるんだが」
龍介は渋っていたが、律都の答えは違った。
「いや、大丈夫だ。行かせてくれ」
そう言うと律都は玖夢の元に行った。
玖夢は衰弱状態になっており、初めに、もう助からないと桔梗は伝えた。
「本当にすみません。僕の力不足です」
「いや、構わない」
そう呟くと律都は玖夢の方に顔を向けた。
「では、僕はここで」
桔梗は後ろに下がった。
「おい、大丈夫か?」
「・・・大丈夫なわけないでしょう」
玖夢は弱りきった声で答える。
「でも・・1つだけ頼んでもいい?」
「なんだ?」
すると、玖夢は律都の頬に手を当て、優しい声で語りだす。
「零に、幸せをあげてほしいの。あの子、もう機械としか機能しなくなってるみたい。私が会ったら変わるかなって思ったけど、甘かった。13年も置き去りにしていたんだがら・・・」
「いや、そんなことねぇよ。あいつが・・・非道なだけだ」
2人はしばらくの間黙っていたが、玖夢がもう一度呟いた。
「私の願い。それは零が笑顔を思い出す事。律都・・・貴方にあの子は任せるわ。お願いね」
玖夢はそう言うと、体から力を抜いた。
「お、おい玖夢!」
「零を・・・よろしくね。あの子の笑顔と貴方の幸せを願っているわ」
「・・・あぁ。あいつは俺が守る。安心しろ」
「ありがとう・・律都」
玖夢は色々な願いを胸に秘め、息を引き取った。
加賀屋玖夢が最後に見ていた景色は、息子の笑顔だったのか?。
それとも、別のものだったのか?。
加賀屋玖夢は輝く夢となった。
「・・・」
律都が悲しそうにうつむく。
「副隊長・・・・。僕達なにか出来なかったんですか?」
火星。今まで賑わっていたこの地はFDSの面々が征服し、無人都市と化していた。
「僕、玖夢さんを助けたかったです」
明希が悔しそうに呟く、しかし、それに答える者はいなかった。
零を除いたFDSのメンバーは全員で、無人の星に立ち尽くしていた。
「これから、どうするんだ?」
龍介が1歩前に出て、顔を見せずにメンバーに問う。
だれも、答えない。
すると、龍介は自分で答えを出した。
「落ち込んでる暇はねえ。次行くぞ」
こんにちは、蒲沢公英子です。
零君ルート完結です!!。
ただ、彼はFDSきっての問題児ですので、これからもいろいろな事をやらかしてくれると思います。
そのたびにフォローに追われる律都君。
この2人は実はかなりの信頼関係で結ばれてたりするんですよね。
まぁその話はもう少しあとになりますが。
えーと。零君ルートが完結したので、次はナギルートです。
FDS最年少の彼の思い、過去とは。
そして、今回は明希、律都、零でしたが、次回からは、明希、ナギ、桔梗で行こうと思います。
ナギと桔梗。医療班2人の秘密とは、そしてナギはなぜ桔梗を慕うのか。
ガラリと雰囲気を変えて、今回カットした戦闘シーンも入れていこうと思います。
では今回はここまでで。
零が自分を取り戻すためには、貴方の協力が必要です。
次回予告。
ナギルート解禁!!。
今回一連の事件で、FDS内に疑心暗鬼の亀裂が走る。
そんな中、龍介の選んだ次の侵略先は・・・!!。
「Force that defends space」7話「光輝星」
FDSの活動は始まったばかりです。




