5話「最期の再会」~前篇~
「・・・」
玖夢の語った過去。
それを聞いた律都と明希は無言のまま口を開く事が出来なかった。
「ごめんなさい。こんな話をしちゃって・・・。でも、零といる貴方達には知っていてほしかったんです」
玖夢は息子のことを零の名前で呼ぶ。
すると、律都が重い口をやっと開いた。
「・・・俺は知ってた。あいつ・・零が『破壊人形』だったことは。ただ・・・俺の想像以上の酷さだった。あいつは、自分の全部を奪われてしまっていたのか」
「それと引き換えに、異常能力を手に入れたんですね・・・」
明希もそれに続く。
「でも、そんな事って許されるんですか?。あ、地球では駄目だけど、火星ではいいのかな?。え?でも普通に考えて駄目なことだし・・・?。火星?火星!?。零さんって火星の人!?」
「・・・いまさらかよ」
律都が呆れたように突っ込む。
「で、でも副隊長!!。それって駄目じゃないですか!。火星が零さんの故郷なら、異星人ですよね、地球の太陽系征服チームにいるのはまずいんじゃ・・・。それに、隊長は火星征服する気ですよ!!。そんなことじゃ零さん悲しむんじゃないですか?。止めないと!!」
「馬鹿かお前は。零はそのぐらい理解している。止める必要性はない」
「なんでですか!。ここの住人全滅が義務なんでしょう!?。そうしたら、目の前の玖夢さんだって・・・」
「え?どういう事?」
玖夢は思わず聞き返す。
「零さんでも悲しみますよ!。実の母親殺さr」
明希の口を律都が塞ぐ。
「・・・普通に口走るなよ」
「ふいまへん(すいません)」
すると、玖夢は納得したように呟く。
「そうだったんですか。確かに零が居なくなってから、火星は零の探索に全力を注いでいらから・・・。もう、他の星に狙われていたのね」
すると、律都が玖夢の腕を壁に押し付ける。
この話を聞いた玖夢が、逃げる事を防ぐためだ。
「すまんが、この話を聞いてしまったのなら、生きて帰らすわけにはいかない。一般人に手をあげる趣味は無いが・・・」
律都が、自分の腕に力を入れる。
同時に、彼から殺気が滲みだしているように見えた。
「ふ、ふ、副隊長!?。駄目ですよ!!。玖夢さんは悪くありませんって」
「お前は甘いんだ」
律都に冷たく言われる。
確かに、きっと律都や他のメンバーは、今までこんな修羅場を何回も越えて来たのだろう。
しかし、明希は違う。
彼は、こんな人の生死に関わるような出来事に遭遇したことがない。
だから、律都に判断が甘いと言われるのだろう。明希はそう考えた。
“でも、でも、罪のない人を痛めつけるのなんておかしいよ。玖夢さんはなにも悪くないのに・・・”
明希が微妙な表情で迷っていると、玖夢が口を開いた。
追い詰められているというのに、冷静な声だ。
「私をどうしても構いません。でも、1つだけお願いしてもいいですか?」
「な、なんですか?」
明希が聞き返す。
律都は、もう分かっていると言いたげな目を玖夢に向ける。
玖夢の願いは1つ。
「私を、零に会わせてください」
やはり、と言いたげな顔で律都はため息をつく。
「悪いがそういうわけにはいk」
「いいですよ!!」
明希が律都の言葉を遮った。
「はぁ?お前なんてことを」
「だって、いいじゃないですか!。玖夢さんは零さんに会いたいって言ってるだけです。親子が会う事に理由はいるんですか?」
「それはな明希。複雑な事情だ。俺は、断じてあの2人を再会させない」
「酷いです!副隊長!。何でですか!?。零さんと玖夢さんは3年間も会ってないうえに、火星でも10年間も離れて暮らしてたんですよ!。零さんだって心の内では、玖夢さんに会いたいって思っているに違いないです!」
「零はそんなこと考えてはいない!。・・・あいつは全部忘れている」
「嘘です!。いくら『破壊人形』に育てられた零さんでも、玖夢さんのことを完全に忘れているわけありません!」
「お前に零のなにが分かる!!」
「副隊長だって!。自分が決めつけているだけです!!」
「・・・何て言った!?」
「事実を言っただけですっ!」
「止めてください!!」
2人の喧嘩を玖夢が止めた。
完全に我を忘れて喧嘩していた2人は、急に入った仲裁に驚いたようだ。
「零は・・・。確かに、私のことを忘れているかもしれません。でも、私はあの子にもう一度会って、できればそれから2人で昔のように暮らして・・・・。少しずつでもあの子の記憶を手繰り寄せてあげたいんです。2人で暮らす事が無理でも、貴方達ならきっと零の笑顔を取り戻せるはずです、それを見守ってあげたいだけなんです」
玖夢は真剣な顔で自分の想いを語る。
その声には、息子を気遣う母親の姿が映っていた。
「ほら、副隊長!。玖夢さんの気持ちに答えないといけませんって!」
明希は今にも、零を呼びに行きそうだ。
「すいません。私を零に会わせてもらえませんか?」
玖夢も律都に頭を下げる。
すると、律都は難しそうな顔をしながら呟いた。
「・・・拒否だ」
「副隊長!。何故ですか!?。何故ですか!?」
明希は律都の肩(自分より低い)を揺さぶりながら繰り返し問う。
すると、律都は明希の手を払いのけながら、続きを紡ぐ。
「第一、お前が零の母親って地点から怪しい。それに、名前すらつけない。どういうことだよ。お前はつけられなかったって言うが、本当に零が大事なら、上司に逆らってでもあいつを守ろうとするだろう。・・・現に俺があいつに出会った時。あいつはどうしようもないくらい壊れていた。最初、人間じゃないと思った。そのくらい、あいつを壊してしまったお前をあいつに会わせたくない。また、どうせ、あいつを壊すんだろう?」
「な!、ふ、副隊長!。玖夢さんは零さんのために命までかけて戦ったんですよ!。本気で、上司に逆らって守ろうとしたじゃないですか!」
「しかし、零は俺達の所にいる」
「そ、それは・・・。守りきれない事だってありますよ。人間ですし」
「守りきれないのは、守ろうとする気持ちが薄いからだ。今2人が再会しても、気持ちの間の溝は埋まらない」
どこまでも、非道なことをいう律都に、明希はもう我慢できなくなった。
「分かりました!!。もう好きにさせてもらいます!。僕は零さんを連れてきます。もう止めても無駄ですからね!!」
荒い口調で明希はそう言い残すと、走って他のメンバーの所に行った。
「・・・馬鹿野郎。どうなっても責任取らないからな」
律都は吐き捨てるように呟いた。
明希の到着を待つ間、玖夢はとても緊張していた。
たしかに、律都の言うように玖夢は零を守り切れなかった。
でも、もう一度チャンスが欲しい。それだけだったのだ。
「あ、あの・・・」
「・・・なんだ?」
「貴方が零に名前をつけたのですか?」
玖夢の質問に、律都は不機嫌に答える。
まだ、明希に腹を立てているのだろう。
「あぁ、そうだ」
「何故、『零』という名前にしたんですか?」
「聞きたいのか?」
「えぇ。貴方にあの子がどう見えたか知りたくて」
すると、律都は不機嫌そうに歪んでいた顔を少し緩め、懐かしむような、悲しむような表情になる。
そして、表情と比例したような声で話しだす。
「俺があいつに会ったのは、今から3年前だ。俺も親とイザコザがあって家出していた。それで、行くあてもなくブラブラしてたら、路地裏で蹲っているあいつを見つけた。酷い有様だった、無表情で虚空を見つめる様な目線だったから、最初死んでるのかと思ったんだ。でも、よく見ると呼吸していて・・・・。俺、不安になったんだ。自分と同じぐらいいや、年下かもしれない人間が、目の前で死にかけてるから。俺自身も家出中だったから、こいつも家出かなって思って、優しく接したんだ。少量の食糧を2人で分け合ったりして、俺もあいつもすごい空腹だったんだ。金もないし。でも、1人でいるより全然マシだった。ある日、やっと話せるくらいまで体力を回復させたあいつに聞いたんだ『名前は?』って。答えは『無い』だった。俺は不思議に思った。どう見ても自分と歳の変わらない人間が名前を持っていないことが。それで、俺はその時『お前って本当に何も持ってないんだな。じゃあ、なにも無いって意味の0。[零]って呼んでいいか?』って言った。あいつの名前は『何も無い』って意味なんだ」
律都は一気に話し終えると、虚空を見つめ、呟いた。
「悪かった」
「え?」
「お前の息子に、勝手に名前をつけて悪かったな」
すると、玖夢は首をゆっくりと横に振った。
「いえ、ありがとうございました。私はやはり弱かったんですね。貴方の言う通り」
すると、律都は考え込むような顔で話す。
「いや、お前は弱くなかった・・・のかもしれない。よくよく考えれば、俺も幼いころは母親の言いなりだった。・・・上の人間には逆らえないものだな」
「え?。どういう心変わりですか?」
「分からん。急に自分が馬鹿に思えてきた。明希の言う通りだ、親子が再会するのに理由なんていらない。・・・キツイ事をいってすまなかった」
律都が玖夢に向かって頭を下げる。
律都自身にも分からない心変わりのおかげで玖夢と律都は険悪では無くなった。
「あぁ、そういえば」
玖夢は付け足すようにこう告げた。
「0には『何も無い』以外に『無限』っていう意味もあるんですよ」
「・・・知ってるさ」
しかし、2人や明希の願いをシナリオは思いっきり裏切った。
誰かが、このシナリオを書いているのなら、その人間は相当の悪趣味だ。
シナリオは最悪の方向へと進んでいく。
「玖夢さん!!」
しばらく後、明希の声が聞こえてくる。
「零さん連れてきましたよ!!」
「よくやった」
律都は明希を褒めた。
「あれ?。副隊長あんなに怒ってたのに?」
「あぁ。自分でもよくわからんが、お前の考えが正しいように思えてきたんだ」
「?。変なの?」
不思議そうに首をかしげながら、明希は玖夢の方に向き直る。
そして、最初から仕切りなおした。
「玖夢さん!。零さん連れてきましたよ!」
すると、明希は零を玖夢の前に出す。
零は相変わらずの無表情である。
対照的に玖夢の表情は喜びに満ち溢れていた。
「零!!」
玖夢はそう叫ぶと、零のもとに駆け寄った。
3年ぶりの再会である。
「元気にしてた?。なにか楽しい事とかあった?。・・・いいえ、貴方が無事に生きている事が私には一番嬉しい!!」
玖夢はさっきまでと違い、興奮を隠しきれない様子で零との再会を喜んだ。
「良かったですね、零さん。お母さんと再会できて。3年ぶりなんでしょう?」
「おい、お前もっと嬉しそうにできないのか?」
明希と律都もその光景に顔を綻ばせている。
「副隊長。連れてきたかいがありましたね」
「そうだな。ただ、あいつはノーリアクションだが」
「恥ずかしいんですよ、きっと」
律都の言う通り、零はさっきから瞬き以外で顔の筋肉を使っていない。
ただ、突然の再会に呆然としてしまっているのだろう。
3人はそう考えた。
しかし、その無表情には別の意味が隠されていた。
残酷な『破壊人形』の義務が。
こんにちは、蒲沢公英子です。
予想外の前後篇となってしまいました。
あまりにも、長くなってしまったので・・・。
完全に明希&律都ターンですね。
個人的にこの2人は対照的な感じだと思っていましたが、思いがまっすぐなのはそっくりですね。
2人とも仲間思いなんですね。
あと、途中の方でシナリオを書いている人間が悪趣味だ。ってありましたが。
自分でもひどいなぁと思う展開に後半突入します。
あぁ、先に言っておくと、しばらく主要キャラの死オチはありませんから!!。
言っておかないと不安なので・・・・。
では、後半もすぐ投稿しようと思います。
また後半で。
FDSの運命は貴方の応援にかかっています。
次回予告
最悪のシナリオ、零の無表情の意味、親子の絆。
すべては、最悪の輪廻を作り出す。
FDSの運命。そして、玖夢と零はまた幸せを手に入れられるのか。
「Force that defends space」6話「最期の再会」~後篇~
「私は、零に笑顔でいてほしいだけなの」




