4話「過去編~悲劇の人形~」
「あ、自己紹介が遅れてしまいました。私は加賀屋玖夢。G150・・・いや、零の実の母親です」
彼女は語る。今から13年前の悲劇を・・・。
13年前。
「ねぇままー!ぼくこんなのみつけた!!」
一面が綺麗な花畑で覆われている。
その中で、2人の人間が遊んでいた。
1人は20歳ぐらいの若い女性。もう1人は、3歳ぐらいの幼い少年だ。
少年は、女性にたくさんの花を渡していた。
「ありがとう、嬉しいわ」
「どういたしまして!!」
満面の笑みを浮かべる少年。
女性には彼が眩しく見えた。
いつか、この笑顔は見られなくなるのに。
女性の名は加賀屋玖夢。
彼女は人形だったのだ。
このころの火星は、他惑星侵略の遂行を目指していた。
太陽系で一番、過激派な星だと有名になっていて、それは真実だった。
軍事力を強化した火星の次の目標は、『最終兵器』の制作。
『最終兵器』とは、極限状態の強さの人間を創り、なおかつその人間の感情を抹消し、兵器として機能させる。そんな兵器だった。
外見が人間なだけあり、油断が誘いやすく。スパイ活動にも向いている。
それに、火星では人間こそが最強だと思われており、人間を兵器にすることが、太陽系侵略の近道だと考えられていた。
そして、すべてが重なり、『最終兵器』の制作は進んでいった。
玖夢は、その計画の被害者だった。
玖夢は、若いうちに計画の被害者にされることが決まっていた。
彼女は、火星最強の男との結婚を決められていて、その最強男との間に、『最終兵器』の子供をつくることが役目だった。
『最終兵器』の子供のために、最強のDNAを造るために。
彼女は、人体改造をうける。
辛かった。窓もない地下の実験室に閉じ込められ、毎日のように改造をくり返される毎日は。
しかし、彼女はそれに耐えきり、『最終兵器』の息子を産む。
それが、彼女の隣にいる少年だった。
生まれた少年は名前をもらう事を許されなかった。
代わりにG150という番号をもらい、兵器として生きていかなければいかなくなった。
玖夢はそれを認めたくなく、彼をG150とは呼ばなかった。
名前をつけてやりたかったが、彼女の力では上司には逆らえない。
だから、玖夢は彼を2人称系で呼ぶ事にし、それで息子とのコミュニケーションを図っていた。
その息子は今3歳である。
本当は生まれた時に、上司には彼を引き渡すように命令されていた。
しかし、引き渡したが最後。玖夢のような悪夢を見る事になってしまう。
彼も『最終兵器』になるために、人体改造をうけることになっていた。
しかも、玖夢の時とは比べ物にならない程のものを。
彼女は息子を守りたい一心で、上司を説得し“3歳の誕生日の1週間後”まで、息子と暮らす約束にこぎつけた。
そして、今日で誕生日から5日目。
あと2日である。
玖夢がなぜ、3歳の誕生日ちょうどで契約しなかったというと、少しでも長く息子と居たいのもあったが、残りの1週間で火星を出ようと思っていたからだ。
しかし、それは難しく。残りの時間は刻々と減っていく。
“私はどうしたらいいの?。この子を守りたい。だけど、私は上の人達に造られた改造人間でしかないのに。どうやって、この子を守ればいいの?”
玖夢は必死で悩む。
すると、それを察したのか、少年が玖夢の顔を覗き込む。
「どうしたの?まま。げんきないよ。これあげるから、げんきだして!!」
そう言うと、玖夢の頭の上に花の冠を乗せる。
3歳児の出来る代物ではないが、彼は最強のDNAの持ち主。簡単に作ってしまった。
白い花が綺麗に冠になっている。それを見ると、少年は太陽のような笑みを浮かべた。
「まま!。にあってるよ!」
嬉しそうにそう言うと、新しく花を摘みに行く。
“この子の笑顔を奪いたくない・・・。どうせ、あいつらに渡せば兵器にされてしまうのなら・・・。いっそ私1人でこの子を守ろう。何もできなくても、あの子にとってそれが良い事なら”
玖夢はそう誓い、もういちど息子を見る。
楽しそうに花を摘んで遊ぶ息子を見て、もう一度決意した。
“絶対、あいつらには渡さない・・・!!”
次の日、明日が約束の日である。
玖夢は、息子を呼び出しこう話した。
「ねぇ。少し遠いところに旅行に行きましょう」
「え?。ぼくとままで!?」
「えぇ。とっっっても楽しいところにね」
「うん!!。わかった!!」
少年はそう言うと、明るい笑みをこぼす。
彼は、感情がとても豊かで、特に笑顔は玖夢も一番好きな表情だった。
しかし、『最終兵器』の実験で感情の抹消がある。
やつらは、絶対に少年から笑顔どころか、すべての感情を奪い取る気だろう。
だから、多少のリスクがあっても、火星のどこかに身をひそめる事にしたのだ。
“上手くいくといいけど・・・”
息子を騙すのは心苦しいが、旅行という口実で、火星内を転々とする親子。
1日逃げ切ることは、星内だと警備が緩いのか簡単だった。
しかし、次の日は違った。
約束の日、2人は宿泊場所で起きると、早速追っ手が来ている事に気付いた。
「思ったよりも、早い・・・!」
かなり遠くまで来ていたはずだが、駄目だったらしい。
玖夢は、動揺している息子に声をかける。
「あの人達は悪い人よ、絶対について行っちゃ駄目」
「・・・わかったよ」
すこし、息子が悲しそうに見えたが、それを気にする暇などなかった。
そして、壮絶な追いかけっこが始まった。
しかし、玖夢は息子をつれており、逃げ惑ってもすぐに追われ、すぐに囲まれてしまう。
しかも、彼女を改造したのはあいつ等だ。
行動パターンは完全に読まれていた。
彼女は必死で何回もピンチを乗り越えたが、追っ手は増えて行く一方だ。
「G150を渡せ!」
「今日が契約の日だ渡せ!」
「上の方がG150を必要としている」
「渡せ!」
追っ手達は、次々と声をあげ迫ってくる。
「・・・まま・・」
不安げな声が聞こえる。
「大丈夫よ!。私が貴方を守るから!」
玖夢は大声でそう叫ぶと、追っ手達の方に向き直った。
「あんた達にこの子は渡さない。『最終兵器』?G150?。この子は私の息子なのよ!!。普通の子なの!。あんた達にこの子の自由を奪う権利なんてない!!」
啖呵を切り、追ってに突っ込む玖夢。
辛い人体改造に耐えてきた玖夢は、尋常ではない強さを持っている。
追っ手の雑魚などは、簡単に片づけることができた。
「よし、行くわよ!」
息子にむかってそう叫ぶ。
しかし、息子はその場を動かなかった。
「?。どうしたの!?。行くわよ!」
「・・・もういいよ」
寂しそうに息子は呟く。
「なにが!?」
「ママ。僕、もう分かった」
いままで、まだ片言だった言葉がきちんとした言葉になる。
「どういうこと!?。なにが分かったの?」
玖夢は驚いたように問い詰める。
すると、息子は3歳児とは思えない声で話しだした。
「僕、本当は知ってたんだ。自分が『最終兵器』G150だってこと。今日、実験体にならなきゃいけない事。・・・黙っててごめんなさい。だけど、ママと居ればいつか普通の人間になれるって思ってた。でも・・・、叶わない願いだった。僕は望んじゃ駄目だったんだよね。普通の生活。でも、ママは僕のことを大切にしてくれた。ママが僕のせいで辛かったのは知ってる。だがら、これ以上ママが僕のせいで傷ついてほしくない。ママも辛い事たくさんあったんだから。だから、僕、行くよ。ごめんなさい」
「・・・ちょっと待って!。知ってるのなら、なおさら着いて行ったら駄目だってわかるでしょ!。なんd」
「ごめんなさい」
もう一度繰り返すと、G150は母から離れ両手をあげた。
「よし、ついてこい」
「はい」
抵抗の意思がないことを示すと、G150はその場に来た重役のような奴に乱暴に腕を掴まれ、連行される。
「ま、待って!!」
玖夢が叫んでも、待ってくれない。
もう、息子は振り向いてくれない。
話をしてくれない。
笑顔を見せてくれない。
「う・・・うっうわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
玖夢はその場で崩れ落ち、絶叫した。
朝日の光はいつの間にか消え、周りは暗くなっていた。
息子の後ろ姿も消えていた。
それから、10年後。
玖夢は、地下の実験室に向かっていた。
10年前に取りこぼした息子を救うために。
今までなんども救おうとした。
しかし、上司に拒否をされ、今の今まであの時から息子に会っていない。
やっと、説得に成功した今でも、今日の1分間という限られた時間のみでの面会だった。
“会えないよりマシよ、すこしでも成長したあの子が見たい”
たぶん、酷い実験をされているのだろう。
私の力があれば、1分あれば息子を救いだせる、あの地獄から。
“ごめんね、10年も待たせて。もう助けてあげるからね”
少し自虐的な笑みを浮かべながら、心の中で呟いた。
普通にいれば彼は13歳である。
こんな、永い時間待たせた事を反省しながら、玖夢は地下室に入った。
地下室はやはり酷い空間だった。
窓などなく、たくさんの機械が所せましと入れられており、1つだけ寝台があった。
そこに息子は寝かされていた。
玖夢が実験をうけている時もその寝台の上に寝かされていた覚えがある。
玖夢は、10年ぶりに息子との再会を果たした。
成長し、しっかりとした顔立ちになっており、あの頃よりも格好良く見えた。
しかし、目は優しく閉じられている。
「・・・私よ、玖夢。覚えてる?」
優しく声をかける。
玖夢は望んでいた。ここで息子が笑って“やっと来てくれたんだね”と言ってくれる事を。
しかし、その望みは裏切られた。
その寝台の上にいたのは、息子ではなくG150だったのだから。
G150はゆっくり目をあける。
「・・・」
黙秘権厳守とでも言いたい様子で玖夢を見つめた少年は無表情だった。
顔つきは息子のそれだったが、息子のような感情は全く見られなかった。
息子は別人になってしまっていた。
「ねぇ・・私よ?。ねぇ・・・!!」
無言。
まるで焦点の合っていない目で、玖夢の存在など気にしていないようだった。
「・・・酷い。ここまで・・・ここまで・・・変えられるなんて!!!」
そう叫び、玖夢は息子を抱きしめた。
「ねぇ!ねぇ!。返事をして!。返事をしてってば!・・・」
息子の体を揺さぶるが、まるで人形のように無反応のされるがままだった。
「・・・聞こえてないの?。もしかして、私のことも見えてないの?」
無言。無反応。
「・・・どうして・・。どうしてこんな酷い目に!」
玖夢の時以上の酷さの実験だったらしい。
息子は、自我と感情を完全に失ってしまっていた。
『最終兵器』G150が完成してしまったのである。
しかし、玖夢は現実を認められない。もう一度叫ぶ。
「返事をして!!。首を縦に振るだけでもいいから!!。肯定を示してよ・・・・」
反応は無い。
「・・・うっ・・うっ・・」
あの日、あの時と同じように嗚咽が漏れる。
あの時となにも変わらない、玖夢はこの子を助けられない。
「・・・」
息子の名前を叫ぼうとして、名前がない事に気付く。
名前すら、彼女には叫ぶ権利がなかったのだ。
「名前ぐらい・・・あげればよかった・・・。こんな事になるのなら・・」
涙が一筋落ちる。
そして、止まらなかった。
「な・・なんで・・酷すぎる・・・酷すぎる・・・この子は・・この子は・・・!!」
無言のまま、反応を示さない、息子。
「ねぇ・・・どうしちゃったの?。最後に聞くわ、私のこと覚えてる?」
最後に賭ける。知っていると答えてほしい。
彼は無言だった。
「もう時間だ」
看守の言葉により、地下室から追い出される。
そして、彼女は外に出て、悲しみにくれた。
「あの子は変わってしまった。なにも覚えていない」
すべては、彼をG150にしてしまった奴らのせい。
「そばにいて笑っていてほしかった」
もう、涙も乾ききって出てこない。
もう、駄目だった。生きる気力が抜けていく。
「ごめんね。もう、私駄目。誰か、あの子を救ってあげて」
その日の夜
G150が地下室を脱走し、火星から出て行った。
実は、玖夢は地下室でG150のプログラムに脱走を命令していた。
自分にはもう不可能だが、彼を知らない人なら、彼を笑わせられるかもしれない。
彼を普通にあつかえる人なら。
「あの子の行く場所にいる誰か。あの子の笑顔を取り戻してあげてください」
玖夢は息子が旅立っていった方向を見つめる。
「それが、私の最後の願いです」
こんにちは、蒲沢公英子です。
過去編の難しさに絶望しました。
書きにくすぎます。
ただ、次の話で零君ルートも終わりのメドがつき、いい感じになってきます。
でも、次話は、シリアスかかってます。
ここで、残酷描写設定しててよかったと思えるように・・・。
頑張って自重はしますが・・・。
では、今回はこの辺で。
これからもFDSを応援してください。
FDSのメンバーは貴方の応援を必要としています。
次回予告
時は再び、明希達の時代へ。
玖夢達の過去を知り、明希は親子の再会を実現させる。
しかし、物語はひたすら残酷で・・・。
「Force that defends space」5話「最期の再会」
タイトルをついにFDSから脱出させることにしました!!。




