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3話「FDS到着」

 「取説ください」

「あ・・・。おう、分かった」


 明希は龍介に武器の扱い方を教わる。

普通の銃よりも破壊力に優れているうえ、2本である。

結構扱いにくそうだ。

「む・・難しいですね」

「そうか?」

明希が難しい顔をしているのにかかわらず、龍介は気楽そうにしている。

龍介にとっては、楽なものなのかもしれない。

「あ、火星に到着したらお前にも手伝ってもらうからな」

「!?。本気ですか?」

「あぁ、もちろんだ。だって武器持っているんだしな」

明希は一瞬無理だと思ったが、よくよく考えると行き先は火星である。

隣の星とはいえ、火星である。隣町に出かける様な感じではない。

かなりの時間を要するであろう。

“じゃぁ、その間練習すれば・・・”

銃の練習など出来るかわからないが、基礎知識ぐらいなら仕込めるだろう。

しかし、龍介は絶望的な事実を言い放った。

「火星には後24時間で着くからな」

「鬼隊長ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!」

明希は知らなかった。

現在の宇宙船は人を乗せても、かなり遠い距離を速く移動できるだなんて・・・。


 結局明希は夜になって眠っただけで、気がつけば火星に着き始めていた。

「・・・どうしよう」

独り言を呟く。

「・・・?。どうしたの明希君?」

横にいた桔梗に聞かれていたようだ。

桔梗は心配そうに明希の顔を覗き込む。

「顔色が悪いよ。・・・あぁ緊張してるんだね」

彼は顔色を見ただけで、明希の心境を把握して微笑む。

「大丈夫。安心して、皆良い人ばかりだからさ」

「でも・・・。僕何もできないんです」

明希は不安そうに言葉を返す。

章に聞いた限りでは、この人もすごい実力者らしい。

こんな優しそうでも・・・。人を傷つける才能をもっているらしい。

しかし、桔梗は明希の予想外の答えを返した。

「僕もだよ、僕も何もできない。居ても足手まといなだけだし・・・。正直まだFDSのメンバーっていう自覚も無いんだよね」

「え!?。でも、桔梗さんは医療知識でも戦闘技術でも一流だって・・・」

「?。誰が言ってたの?。僕はそんなすごい実力は持ち合わせてないよ」

たぶん謙遜なのだろうが、桔梗は薄い笑みを壊さないまま続きを紡ぐ。

「君なら大丈夫。自信を持って」

桔梗の言葉は明希に届いたらしい、明希の表情に活気が戻る。

「あ、ありがとうございます。僕頑張ります!!」

「うん、頑張って」

明希が気を取り直し、座っていた椅子から立ち上がると、龍介の声が聞こえた。


「到着だ!。全員出撃用意!!」


 火星は遠くから見ると赤い星なのだが、降りてみるとまた違っていた。

やはり、地球ほど緑は多くないが、人が暮らしているだけあり、すこしは自然が存在する。

荒れ果てた荒野一色ではない。

火星の人間は地球の人間と古くは同じと考えられていて、外見はとてもよく似ている。

実を言うと、一部の星を除いて、人間と似たような生物が生息しているのは、もう分かっている事だった。

「ここが、火星・・・」

明希が感動と不安の混じった声で呟く。

彼はこの景色に圧倒されていた。

「おい、ボーッとするな」

龍介に引き戻される。

「俺らはもう警戒されている、中心核の奴らだけやるぞ。それまで、余計な行動をするな」

龍介は明希の耳元でそう呟くと街に歩いて行く。

「あ、はいぃ!」

明希もそれを追った。

他のメンバーもついてきている。

街では、火星の人間は楽しそうに買い物をしたり、雑談をしたりしている。

技術にいたっては地球に劣るが、その楽しそうな光景は昔の地球に似ていた。

今の地球は急激な人口増加により、娯楽などは無くなってしまっているからなのか、火星は地球の失われた姿の実現体のようなものに見えた。

「ここを壊さなきゃいけねえの・・・か・・」

さすがの律都も気おくれを起こしたのか、弱気に呟く。

「それを気にしちゃぁ終わりだろ」

龍介は小声で返事を返した。

表情は、見えない。


カーン・・・カーン・・・・。


 突然鐘が鳴り始めた。

そして、その鐘が鳴ると同時に、火星の住民達は皆一斉に自分の家に入ってしまう。

「!?。なんだこれ!」

家に入ろうとする住民達に流されかけながら、龍介は叫ぶ。

他のメンバーも人ごみに流されてなければいいが・・・。

そう思ったが、龍介は、何故住民達が家に入ろうとするのかが気になり、先にそっちを調べるために、身近の青年を捕まえる。

「おい、なんで鐘ごときでそんな慌ててるんだ?」

青年は逃げようとしたが、龍介の握力に完敗し、素直に話す。

「G150が来る。近くにいると殺されちまう」

「は?。なんだ?、G150って?」

龍介の疑問に青年は絶望したような声を返す。

「G150を知らないのか?。あれは兵器だ、人間の形をした兵器だよ。恐ろしい破壊力を持つ、この星の最終兵器だ。うかつに見ようとするなよ、G150を知らねぇのならどうせよそ者なんだろ。先に忠告しといてやる、あれには近づくな」

そう言い残し、青年は逃げ出して行った。

いつの間にか、さっきまで人が賑わっていた場所は、FDSのメンバー以外無人になっていた。


 「な・・なんですかこれ?」

無人になった空間で明希は心細そうに呟く。

FDSの面々は、無人の空間に突っ立って呆然としていた。

「おい、お前。さっき誰かと話してたじゃねえか。何の話だったんだ?」

律都が龍介に聞く。

「あぁ。なんかG150っていう人間型兵器が来るから、皆逃げてるらしい」

「人間型兵器・・・?。それってまさか・・・」

律都の声色が急に変わる。

そして、なにか恐ろしいことを悟った様な表情になる。

「?。どうした律都。心当たりでもあるのか?」

律都の変化に気付き、龍介も聞き返す。

「いや・・・」

彼が続きを語ろうとした時、明希がそれを遮る。

「あの・・人間型兵器ってなんですか?」

空気の読めない明希に呆れたのか、龍介と律都は答えを出さない。

困惑する明希を気遣い、桔梗が答えを代弁する。

「人間型兵器とは、文字の通り、人間の形をした兵器のことだよ。超人的な能力を持ち、破壊をくり返す人間の事を指す事もあるけど。後者の方は『破壊人形』の方の名で呼ばれる事もあるんだ。そっちの方なら聞いたことがあるんじゃない?」

『破壊人形』その名前は、昨日龍介から聞いたばかりだ。明希も記憶に新しい。

「『破壊人形』って零さんの渾名・・・」

「うん、そう・・・」

悲しそうな表情で、肯定を意思する桔梗。

「あの人・・もしかして」

遠くを見るような目で呟く桔梗。

その目線は完全に零を捕らえていた。


 「なにも・・起きないですね」

あれから、10分ほど。この空間にはG150のような人間型兵器はおろか、人一人も出てこない。

「僕。思うんですけど・・・。G150って本当は存在しないのではないんでしょうか?」

章が唐突に話しだす。

「え!?。なんで?」

明希が面白いように喰いついてきた。

「だって、住人が皆避難しているのに何も起きません。しかも、何も起きていなくても住人達は出てこようとしないじゃないですか。G150はいなくても当たり前の存在なんじゃないのでしょうか?」

「じゃぁ何で、皆を避難させてるの?」

「多分、この星の上の方の人は、G150という架空の人間型兵器を創りだし、住人達を恐怖や恐れで統括してるんじゃないかと思うんです。命令に逆らえば、人間型兵器に始末されると言えば、大体の人間は大人しくなるんじゃないのでしょうか」

「なるほどな。確かにナギの言っている事は正しいかもしれん。地球でも昔よくあったことだ」

龍介もその意見に同意を示す。

「ってことは、ナギの推測通りなら、ここは完全に無人ってことか。なら都合がいい。今の内に軍事の中心核にのりこんで、主導権握っちまおう。そのあと、G150の名前でも借りて、住人達を適当に逃がせば問題ないだろう」

「・・・俺も賛成だ。早く済ませたい」

珍しく律都が龍介に賛成を示した。

結束力的な物が生まれてきているのかもしれない。

「よし、お前ら行くぞ。住人達が出てくる前に終わらせる」

「はい!」

全員が返事をし、龍介に続こうとした、その時。

律都の肩が叩かれた。

「ん?。あぁ零か、どうした?」

零が律都の肩を叩いたようだ、律都が振り向いたのを確認すると、零は前方の建物の影を目線で指し示した。

「はぁ・・・。あそこがどうし?おい!、人がいるぞ!」

その建物の影には、1人の女性が立っていた。

歳は30~40歳くらいだろう。律都が声をあげると、すぐに逃げてしまったが。

「聞かれてたかもしれん。おい、律都、明希2人であの女を追え!」

「了解!!」

龍介の命令に2人はそう返事すると、走って女を追った。

「よし、その間俺達で本部を潰すぞ」

龍介に残りの3人は続いた。


 女を追っていた2人は、ひたすら走っていた。

「・・・あの女。足早いぞ。人間業じゃない」

その通り、女は体力を徹底的に鍛えた戦闘班の律都でも、追いつくのが困難、いや、不可能かと思わされるような速度で走っていた。

普通の人間のはずなのに、しかも30代以上の。

この人間に追いつけるのは、FDSでは律都以上の実力者の龍介と、チート全開の零しか思い当たらない。

“・・・俺じゃ無理か。くそっ・・・”

律都は龍介をバカにしているわりに、彼に憧れと羨望と嫉妬心を持っている。

龍介はどう見ても知能では自分以下なのに、他のもので何一つ勝てない。

それが、律都は悔しかった。

“あいつ・・・龍介には負けたくねぇ・・・。どうにか・・どうにか・・”

体力はどんどん限界に近づいていく。龍介ならまだ“ヒャッホー!!”などといいながら余裕で走っている距離なのに・・・。

律都は、最近頭脳派労働が多かったせいか、体力は鍛えていたはずだが、大きい差をつけられていたようだ。

“・・・どうすれば・・・。!、そうか。追いかけっこじゃ勝てないが、あの手を使えば・・・”

律都は急に進路を変更し、一度女を視界から消す。

そして、持ち前の知力で火星の地図を脳内に描き、次の行動パターンを予測する。

一瞬でその計算を終えた律都は、女とは全く反対方向へ全力疾走した。

そして、次のつきあたり地点に待ち伏せし、女の進路をふさぐ。

単純な挟み撃ち作戦だが、初めてくる星でこれをするのは、至難の業である。

しかし、律都はそれをいとも簡単に成功させてしまった。

彼の知力が成す技である。

「・・・チェックメイト」

律都は小さい声で呟く、実はもう大声を出す気力は残っていなかったのだ。

女は真っ直ぐな瞳でこっちを見てくる。

整った顔立ちをしており、なかなか好感度の高そうな女である。

「なにか聞いたか?」

律都が女に質問する。女が答えようと口を開いた時。

「・・ふ、副、・・副隊長・・速いです」

明希が息も絶え絶えでこちらに来た。

「ど・・どういう・・状況ですか?」

早くも息が整ってきている。

やはりFDSの人間に選ばれただけあり、明希も普通以上の体の強さを持っているらしい。

「あぁ、今こいつを追い詰めた、これからだ」

「そ・・そうですか」

2人は顔を合わせ、女の方に向きなおる。

「もう一度聞く。お前はなにか聞いてないか?」

静かだが、威圧感のある声。やはりいつ聞いても怖い。

しかし、女は律都に圧倒されず、自分の意見を述べた。

「私は、貴方達を遠目で見ていただけです、話も聞いていません。それよりも、私も貴方達に聞きたいことがあるのです」

「はぁ?。なんだそれは?」

「貴方達と一緒にいた、無表情の少年。彼は今何と呼ばれているのですか」

無表情・・・。零のことだろうか?。

「?。何と呼ばれているか?。変な聞き方だな、まぁ俺らは零って呼んでるけど。勝手につけた名前だけどな。なんせ初めて会った時に“名前は?”って聞いたら、“無い”って答えられたんだ。本名なんて知らねえよ」

少しだけ、律都の零の過去を見た気がするが、明希はそれ以上追及しなかった。

そんな律都の返答を聞くと、女は少し嬉しそうな声をあげる。

「そう・・・あの子は零って呼ばれてるのね・・・。良かった」

「?。零と何の関係がある?」

律都が不思議そうに聞き返す。

しかし、女は1人語りを止めない。

「あの子は、名前ももらってきちんと人間として生きているのね・・・。優しそうな人にも囲まれている。・・・私の選択はきっと間違ってなかったんだわ」

「あ、あの~?。どういう意味ですか?」

明希が窺うように質問する。すると、女は慌てたように自分のことを説明した。


「あ、自己紹介が遅れてしまいました。私は加賀屋玖夢かがやくゆめ。G150・・・いや、零の実の母親です」


こんにちは蒲沢公英子たんざわぽぽこです。


なんかハイスピード更新になりました。

いつもこんな感じだといいのですが・・・。


今回から零君ルートですね。そこまでここのルートは長くしませんが・・・。

個人的には彼はお気に入りですが、一番彼は晴嵐とかぶっている人物でもあり、あまり派手に出せない悲しさです。

恢霧君とは別人です。設定が似てますが、全くもって別人です。

無口キャラは台詞を書かなくても、存在が認知されるので楽です。(頭数にさえ数えれば)。

しかし、彼も悲しい人なんですよね。

まぁ、次話で真実は述べようと思います。

では、今回はここまでで。ありがとうございました。

明希が進化するには、皆様の存在が必要なのです。


次回予告

零パート過去編です。

現在から13年前の話を書こうと思います。

なぜ、零は無表情で、異常能力を所持しているのか。

『破壊人形』の本性は?。そして、母の夢とは。

「Force that defends space」4話「過去編~悲劇の人形~」

13年前の悲劇とは!?。

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