13話「新メンバー参上っ!!~前編~」
FDSの宇宙船は素晴らしい速さで進んでいた。
それはもう、今までにないぐらいの速さで。
行き先は、宇宙安全対策本部だった。
「くそっ・・・。もっとスピードでないのか、これ!!」
「この宇宙船のスピードは地球最大規模だが」
龍介のぼやきに律都が冷静に突っ込む、しかし冷静なのは見せかけだけで、彼も時計とスピードメーターをチラチラ見ている。
何故彼等がここまで急いでいるのかというと、金星の侵略時に仲間が重度の傷を負ったからであった。
その本人、巫田章はあの時から全く目を覚ましていない。
桔梗が必死で今も世話をしているが、連絡はなにもない。
「地球までもてばいいが・・・」
律都が虚空を見つめながら呟く、すると、第3者の声が割り込んできた。
「隊長!副隊長!ナギの様子はどうなんですか!?」
明希が息を切らせてこっちへ来た。
「あ、あと。地球へはあと1時間ほどで着くそうです!!」
「・・・遅いな。もっと早められないのか?」
「これ以上スピードをあげたら、宇宙船が壊れるって零さんが言ってましたっ!」
「・・・・・そうか・・・・」
自信満々でそう返されると脱力しかできないのだが。
「まぁ、これ以上は無理か・・・。桔梗とナギに頑張ってもらうしかねえな。明希、桔梗に飲み物でも持っていってやってくれねえか?あいつ、今日何も口にしてねえから」
「了解しました!!」
明希は桔梗の部屋へ急いだ。
飲み物を持って桔梗の部屋に行くと、いまだに眠り続ける章と、やはり表情に疲れの見える桔梗がいた。
「桔梗さん、飲み物を持って来たんですけど・・・。飲みますか?」
すると、桔梗は明希の方に振り返り、微笑んだ。
「ありがとう、少しもらうよ」
明希の持ってきた某メーカーのお茶を少し飲むと、桔梗は自分の座っていた席を立った。
「・・・やっぱり座りっぱなしだと、身体が痛いし、鈍るね」
「どのくらい続けてるんですか?」
「あの日からだから、まだ2日目だよ」
桔梗は当たり前のように言うが、2日もずっと看病を続けるのは大変だろう。
明希は心配そうな顔をしながら。
「じゃ、じゃあ、桔梗さんは2日間眠って無いんですか?」
「うん、まぁそうなるかな。でもこれくらい普通だよ?」
いとも簡単に返されてしまった。
「でも!それは駄目ですって!先に桔梗さんが倒れます!」
「はは、ありがとう。でも、心配しなくても慣れてるからね」
優しそうな笑みを零すと、桔梗は急に真剣な表情になった。
「明希君、地球にはあとどれくらいで着くの?」
急に表情が変わったことに驚きながらも、明希は答える。
「あ・・・、1時間くらいです」
「そうか・・・・」
桔梗は悲しそうな表情になる、やはり1時間じゃ遅いのだろうか。
「あの、やっぱりもっと速い方がいいですか?」
明希は桔梗の顔色を見ながら問う。
すると、桔梗は取り繕ったように笑顔になり。
「ううん、1時間くらい大丈夫。ナギはそこまで弱い子じゃないよ」
そこまで言うと、急に声を潜め、桔梗は意味深な発言をした。
「でも・・・新しいFDSはできるかもね」
「へ?それ、どういうことですか?」
明希が聞き返す、新しいFDS?もしかして、ナギは任務を続けられない程の重傷なのだろうか。
しかし、桔梗はその質問には答えなかった。
「あ、お茶ありがとう。僕はそろそろ治療に戻るから、ごめんね」
そして、再び定位置に座る。
なにやら、はぐらかされた気しかしなかった。
その後、龍介達の所に戻ると、龍介の怒りは爆発状態だった。
やり場のない怒りは、哀れにも宇宙船にそそがれ、壁がへこんでいた。
「放っておいてやってくれ、あいつ、あれでも責任感じてんだ」
愕然としている明希に、律都が声をかける。
「責任・・・??」
明希が聞き返すと、律都はいまだに八つ当たりをくり返す龍介を見ながら呟く。
「あいつ、巫田が誘拐された時なにもできなかっただろ。それが屈辱的なんだと思う」
確かに、章を誘拐した首謀者を倒したのはバドだ、まぁバドも初めはそっち側の人間だったが。
「でも、隊長は戦闘で活躍してたじゃありませんか」
龍介は、その前に当主の兵を倒している。
「僕に比べたら、すごく貢献していると思うんですけど・・・・。あ、でも僕なんかと比べるのは駄目ですね・・・。すみません」
しかし、律都は明希の失言に腹をたてることもなく、淡々と事実を紡ぐ。
「しかし、巫田は怪我を負っている」
その声は、威圧的なものだった。
隣では龍介が暴走を続けている、明希はなんとなくその理由が分かった気がした。
“隊長は仲間を救えなかった事を悔やんでいるんだ。僕だって、ナギと一番近くにいたのは僕なのに・・・・。結局僕がしっかりしていたら、ナギがあんな思いをする事は無かった。僕だって桔梗さんに「仲間だ」って言われた時は嬉しかった。だから、きっと同じFDSの仲間が傷ついた事が許せないんだ。・・・・きっとこの気持ちは副隊長達も一緒だよね”
明希は自分の気持ちを整理すると、律都の目をみて話す。
「副隊長、なんとなくですが、僕、隊長の気持ちが分かった気がします」
一直線上に向けられた目線。律都はそれを見ながら深く頷いた。
「よし、ならするべき事は分かったな」
確認するような口調、もちろんわかっている。
「はい、今はナギを安全に地球へ連れ帰る事を最優先事項にします!!」
「その通りだ」
律都は珍しく笑ってみせた、そして、龍介の方をみながら。
「あいつは俺が止めておく、お前は到着の準備をしてろ」
「了解しました!!」
その後の1時間はとても長く感じた。
律都のこともあり、自分の部屋で準備をする明希だが、心のなかは不安で埋め尽くされていた。
“どうしよう、あんなこと言っちゃったけど僕になにができるのかな”
思い出すのはFDSのメンバーの顔。
“僕だけだよね・・・、皆に助けられてばかりなのは”
火星の時も金星の時も、明希はメンバーに助けられてばかりだった。
唯一役に立てたのは、金星で桔梗とバドが交戦している時に、横からバドに傷を負わせた時だけだった。
それも、桔梗が自分の身体を張ってまでしてやっと気付いたことだ。
それ以外は銃の引き金が引けていない。
“確かに人を撃つのは怖い、だけど、そんなことで立ち止まっちゃいけない・・・”
明希は目に決意の色を仄めかせた。
「僕もFDSの一員として、皆を守る!!」
彼以外無人の部屋で、彼の決意が響く。
「あ、今の格好良くない!?僕、格好良くない!?」
という、無駄な一文も付け加えて。
余りにも嬉しかったのか、調子にのった明希はもう一度くり返した、・・・・・・・鏡の前で。
「僕もFDSの一員として、皆を守る!!」
その瞬間、明希に異変が起こった。
鏡に映る自分、その自分の瞳の色が変わっていた。
「え?目の色かえて決意したら、本当に目の色が変わった!?」
おかしいジョークしか思いつかないが、本当に変わっている。
普段は茶色の瞳が、右目は宇宙から見た地球のような青、左目は太陽のように燃える赤になっていたのだ。
「へ?・・何で?」
一度鏡から目をそらし、もう一度鏡を見つめる。
「・・・あれ?直った」
もう一度確認した時、瞳の色は紛れもない茶色だった。
「なんだったんだろう・・・。まぁいいか、こんなことに気をとられてる場合じゃないよね」
余りにも事態が受け止められなかったのか、明希は現実逃避をかねて再び出発の準備を始めた。
今の出来事が今後の自分を大きく左右するとも知らずに・・・・。
「おい、全員集合!!」
しばらくしてから龍介の声が響いた。
律都がどうやって説得したのか、もう正気にもどっているようだ。
「はい!今行きます!!」
明希は返事をし、龍介の元へ向かった。
“皆を守る!今度こそ、絶対足手まといなんかにはなりたくない!!”
明希の足取りは自然と軽くなっていた。
全員が集合したミーティングルーム。
外には青く光る地球が目の前にあった、もうすぐ着陸開始らしい。
着陸作業が始まるなか、衝撃の抑えられた宇宙船内で打ち合わせが行われた。
「地球の本部前に着陸が可能になった、直接本部に着陸し、まずはナギを本部専属の医療施設に移す」
本部専属の医療施設とは、本部の優秀な医療班の人間が集まり、宇宙など特別な場所で負った傷を治療する施設だ。
「そして、俺達は本部長と接触し今後のことについて検討する」
そこまで話が進むと、宇宙船の航路が降りていく。
“もう地球だ。上手くいけばいいけど・・・・”
明希は願いを神に託し、静かに到着を待った。
久しぶりの地球、我が母星。
明希にとってはそうなはずだが、別に喜ばしいことでもない。
何故なら、他に大事なことがあるからだ。
着陸直後、宇宙船の周りにはもう医療班の人間がきていた。
全員が白衣を着用しており、手に手帳のようなものを持っている。
すると、桔梗が真っ先に宇宙船を降りた。
明希は気になり少し顔を外に覗かせる、すると、外の会話が聞こえてきた。
「ごくろうだった、黒雨」
白衣の男は自分の手帳を見せ、桔梗に白衣を手渡した。
「ありがとうございます」
お礼を言いながら白衣に袖を通す桔梗は、この姿だと若い医者に見えた。
・・・実質間違ってはいないのだが。
その後、宇宙船から章を運び出し桔梗達は病棟へ消えて行った。
その他のメンバーは、本部の方へ向かう。
「ナギは大丈夫でしょうか・・・」
明希は不安げに呟きながら龍介の顔を覗き込んだ。
龍介は険しい表情だったが、明希の視線に気づいたのか表情を緩めた。
「ま、あいつならどうにかするさ」
本部の建物が近づいてくるにつれて、明希の緊張はましていく。
“・・・・・上手くいくのかなぁ”
心の中で呟きながら、彼は龍介達の後を追った。
宇宙安全対策本部、本部長室。
地球規模で考えても、かなり大きい部類に入る組織の本部長室は立派なものだった。
しかし、決して悪趣味なわけではなく、清楚な感じでまとめられている。
そして、部屋の一番奥の大きな机に、本部長――――刻星時政はいた。
「FDSの諸君、長旅ごくろう」
威圧感のある声、歳は40~50代で若いのだが、絶対的な強さが見えた。
「ありがとうございます」
龍介が頭を下げる、明希は口をはさむことが出来ずおろおろするばかりだ。
何故なら、ここにいるのは龍介、律都、零というFDSのTOP3で、3人とも本部長と面識があるが、明希には無い。
あの日――FDSができた日―――に、明希をここに連れてきたのも他の上司だったからである。
予想外の対面に明希も戸惑っているようだ。
しかし、そんな明希のことは気にせず、刻星は本題に入る。
「先ほど医療班の人間と話したが、巫田章の回復には時間がかかる」
“やっぱり・・・。ナギって結構重傷だったんだ・・・”
明希は心を痛め俯く。
「しかし、次の任務まで時間が無い。そのため、巫田章の代わりの人間を用意した」
「!!」
FDSのメンバーに緊張が走る、そして本部長室のドアが開いた。
“怖い人じゃありませんように・・・!!”
明希がどこか分からない神に祈りを捧げると同時に、新メンバーの少年が姿を現した。
少年は軽やかな足取りで本部長と明希達の間に入ると、くるっとまわって明希達をじーっと見て、ペコリとお辞儀をした。
「こんにちは!刻星曽羅ですっ!」
軽くまとめられた青に近い髪、ぱっちりとひらいた大きな目。
それは、少年というより少女とよんでも大丈夫な顔立ちだった。
「これからよろしくおねがいしますっ!!」
曽羅は満面の笑みを浮かべる。
「ああ。これからよろしくな!」
龍介も笑いながら、曽羅に握手を求める。
「はい!!」
曽羅は龍介の手を握り返した。
“よかった。怖い人じゃなくて・・・”
明希は心の中で安堵した。
すると、律都がふと思い出したように呟いた。
「・・刻星?まさか、お前」
すると、曽羅は律都の聞きたいことなどお見通し、と言いたいような顔で答えた。
「うん!本部長は僕の父さんだよ!!」
沈黙が走った。
すると、今まで威厳に満ち溢れていた本部長から焦りの色が見えた。
「あ・・。あのな、この時期本部の人間は誰も空いて無くてだな・・・」
どこかあさっての方向を見ながら話す、本部長。
すると、曽羅はニコッと笑いながら。
「父さん、僕が宇宙に行きたいっていったら、いいよって」
決定、宇宙安全対策本部の本部長、地球トップの人間は、親バカである。
「と・・とにかく、運動神経などに問題はない。十分使えるはずだ」
取り繕った言葉は、龍介のニヤニヤを誘うだけだった。
本部長と少し会話というより、挑発をすませると、曽羅を含めたFDSの5人は医療施設にいる桔梗を迎えに行く。
「おい、桔梗!大丈夫か!」
龍介が呼ぶと、桔梗はすぐに帰ってきた。
「えぇ、すみませんナギのことは」
「いや、大丈夫だ。帰ってこれるんだろ」
「まぁ・・・いつになるかはわかりませんが」
桔梗と龍介の会話に、曽羅が割り込む。
「あ、刻星曽羅です!!」
「君が新メンバー?僕は黒雨桔梗。よろしく」
曽羅が軽く自己紹介を終えると、龍介がきりだした。
「桔梗、それより次の行き先が決まった」
「あ・・・はい」
珍しく歯切れの無い返事をする桔梗。
しかし、龍介は突っ込まず続きを話した。
「次は、天王星。本部直々の命令だ」
龍介の言葉に、桔梗は少し安堵した様子を見せた。
しかし、明希には引っかかる事が残っている。
“これまでいった惑星や、零さんやナギのことも考えれば、次も何かあるよね、きっと。でも、今回の行き先については誰も何も言わない・・・?ナギの時は行き先が決まっただけで大変だったのに・・”
しかし、他のメンバーを見ていると、やはり誰も動揺はしていない。
“・・・・思いすぎかな”
明希の不安をよそに、他のメンバーは宇宙船に乗り込もうとする。
「おーい!明希!速く来い!!」
「あ、はい!!」
“ナギのためにも、がんばらないと!!”
明希が決意を新たにする。
その時、彼の目の色は一瞬だけ、また変化したのだが、本人含め、誰もそれには気がつかなかった。
その日、宇宙船内部。
「おい、明希!!」
龍介の声が響く。
「なんですか?」
「曽羅だが、お前と同年代らしい」
「え!同じ歳ですか!」
明希の表情は嬉しさに染まる、彼が同年代の友人に飢えているのは真実だからだ。
すると、龍介は悪戯っぽい笑みを浮かべ、明希に呟いた。
「ってことで、曽羅の世話よろしくな」
「は?」
明希は呆けたような表情になる。
「だから、曽羅にFDSのこと教えてやれ」
「・・・・あ、はい」
逆らうこともできず、明希はしぶしぶ曽羅の部屋にむかった。
曽羅の部屋。
「曽羅ー!いるー?」
明希が曽羅の部屋をノックする。
「いるよー」
明希は曽羅の部屋に入ると、曽羅の隣に座った。
「どうしたの?」
同じ歳ということで、2人とも軽い気持ちで話している。
「あの、隊長からさ、曽羅にFDSの基本を教えてって」
「え?あぁ、うん」
そこで明希は曽羅に1日のスケジュールや、任務の内容、他のメンバーの紹介など、特にメンバーの紹介はときおりジョークを交えながら話した。
曽羅は楽しそうに聞いていたが、急に表情を陰らせた。
「どうしたの、曽羅?僕、悪い事言った?」
明希が心配そうに曽羅の顔を覗き込む。
すると、曽羅は表情を見せずに、ボソッと呟いた。
「・・・次の行き先って天王星なんでしょう?なら、あの人大変だねぇ」
思ったより黒い声に、明希は固まる事しかできなかった。
こんにちは、蒲沢公英子です。
かなり間があきましたが、ついに第2代目のFDSです。
そして、この話が侵略編の中盤にあたります。
ここからは、侵略編後半です。
次の話は後編です。
次回予告。
曽羅の思惑が蠢く。
次回「Force that defends space」14話「新メンバー参上っ!!~後編~」




