11話「決着」
桔梗の残酷な嗤い声が響く中、龍介と律都はひたすら混乱していた。
「あいつ、どうしちまったんだ・・・?」
龍介が呆然として桔梗を見つめている。
すると、ふいに桔梗がこっちに振り向いた。
そして、残酷な表情と声で、2人に話しかける。
「・・・?。まだ排除するべき奴が残ってるみたいだな」
そう言うと、桔梗は日本刀で龍介と律都に斬りかかって来た。
「・・・!!」
「うお!!」
2人は桔梗の日本刀をギリギリで避ける、危ない、一瞬ずれていたら即死だった。
「おい、桔梗!なにしやがる!!。俺らは味方だぞ!!」
龍介が叫ぶ。しかし桔梗は止まらない。
「全部全部全部全部全部全部全部・・・壊す・・・ぶっ壊す!!」
もう一度斬りかかってくる桔梗。しかし、さっきの一撃でひるんでしまった律都は足が動かなかった。
「律都!!」
「・・・っっ!!」
桔梗は理性の箍が外れてしまっているようで、自分が律都を狙っている事に気付いていない、そして、残酷な哄笑が辺りに響き渡った。
“殺される!!”律都は心の中で覚悟を決め、目を閉じた。
そして、日本刀が振りおろされ・・・・・なかった。
「・・・・!!!」
律都は閉じていた目を、驚愕に見開いた。
自分の目の前にフィードバックで休んでいたはずの零が立っていたのだ。
「なんだお前?。新手か?」
「・・・・」
零は無言で律都に振りおろされるはずだった日本刀を掴み、桔梗のすきを狙って、手刀を延髄に打ち込んだ。
その瞬間桔梗の身体から意識が抜け、ガクッと力が抜ける。
そして、しばらく沈黙が場を支配したが、我に返った律都が零に声をかけた。
「・・・すまない。礼を言う」
無言だった。いや、何か聞こえた。
「お前?。今何て言った?」
律都が零に聞き返す、しかし、今度こそ無言だった。
明希とメイは戦闘が収まったのを見て、他のメンバーの所に駆け寄った。
「大丈夫ですか!!・・・桔梗さん!?」
明希は意識を失っている桔梗を見て、焦った声を出した。
「大丈夫。少し眠っているだけだ」
律都がそう答えると、龍介が強引に会話を変えた。
「ほら!お前等ナギを助けに行くんだろ!!」
その声はなにかを隠したがっている様な声だった。
「まずは、桔梗の意識が戻るのを待とう」
暗い室内
「はぁ・・・はぁ・・・」
浅い呼吸音が聞こえる。
「まだ死なないか、厄介なやつだ」
成人の声、これは章の父親の声だ。
「バド!。早く殺してしまえ!」
すると、バドは、何回目か分からないが、章の身体に剣を刺した。
「うっ――――っっ!」
悲鳴を必死で押し殺しながら、章はいまだに光る目で、父とバドを見つめた。
「・・・そう・・・・か・・んた・・に・・死に・・せん」
切れ切れの声で、まだ命を捨てない章に、とうとう我慢の限界が来てしまった。
“・・さすがに・・もう駄目・・・かも・・。FDSの皆さんは・・・・この星を侵略できたかな・・・”
そんな事を考えていると、もう一度、身体に刃物が貫通する。
「―――――っっ!!」
その時、章は必死で繋ぎ止めていた意識を手放してしまった。
意識の無くなる直前、脳裏によぎったのは、FDSのメンバーの笑顔・・・。
「・・・・??。ここは?」
闇の中に光が差し込んでくる、見えてくる景色で自分が横になっている事を認識した。
「おい、桔梗!。目が覚めたか?」
「お前、大丈夫か?。正気か?」
「桔梗さん!!よかったです!」
FDSのメンバーの顔が、鮮明になっていく、そして、初めて自分が気絶していた事を思い出した。
「・・・すみません」
桔梗が呟くと、周りは口ぐちに。
「気にすんなって!!」
「喋って大丈夫なのか?」
「桔梗さんが無事でよかった!!」
などと言ってくれた。
「ところで、ナギの救出にうつりたいが、桔梗、大丈夫か?」
龍介が聞くと、桔梗は身体を起こし。
「大丈夫です。問題ありません」
と答えた。
「こっちです、こっちに旦那様の部屋が」
メイが話し出す。
「さっきの間、旦那様が部屋に入って行かれました」
すると、この場の全員が目を合わせ、一目散に走りだした。
メイ曰く旦那様の部屋は、悲惨な状態だった。
電気もつけられておらず、鉄の臭いが鼻をつく。
「電気がない。どこにあるんだ?」
「この臭い。血か?」
しかし、電気の問題はすぐ解決した。
「点火」
零がそう呟き、炎を造りだし、その炎により、室内を見渡す事が出来たからだ。
「ナギ!!」
明希が叫ぶ、章は身体中に刺し傷を負い、鎖で拘束されていたからだ。
意識が無いのか、目は閉じている。
「僕のせいであんなことに・・・!!」
明希が地面を叩く、しかし、それは龍介によって止められた。
「やめろ、今さら言っても始まらない。おい、そこの男。あんたか?ナギの父親っていうのは?」
すると、紳士はニヤリと口角を釣り上げた。
「そうだが、なんのようだい、君達」
皮肉たっぷりの口調で呟く紳士に、龍介の我慢の限界がきた。
「お前・・・・殺してやる!!」
龍介は、紳士に殴りこむが、それはあえなく止められてしまう。
しかし、龍介はダミーだった。棒術ではFDSNo1の彼だが、肉弾戦ならもっと強い奴がいる。
龍介が殴った拳を受けた事による隙に、律都が滑り込むように拳を入れる。
いつもは喧嘩ばかりだが、いざという時は最強の力を発揮するコンビ、それが、龍介と律都だ。
しかし、2人の拳は・・・・止められた。
「っっ!!」
律都の拳が止められた事に驚愕する2人を、紳士は吹き飛ばす。
「隊長!!副隊長!!」
明希が叫ぶが、2人は壁に背中を叩きつけてしまう。
「チッ・・・決まらねえか・・・」
口の端から血を流しながら龍介が呟く。
「大丈夫か?律都」
「お前に心配される筋合いはねえ」
律都は不敵な笑みを浮かべ、龍介にアイコンタクトをおくった。
その合図で、2人はもう一度紳士に突っ込んだ。
「どうしよう・・」
明希は頼りなさげに呟く、しかし、次の瞬間身体が飛ばされた。
「うわあ!!」
明希を飛ばしたのは桔梗だった、すると、さっき明希のいた位置にバドが立っている。
「・・・誰?かなぁ・・・」
桔梗の殺意のこもった声、するとバドはこちらも声で人が殺せそうな声で呟く。
「俺は、カンナギダ家執事。バドだ」
その声を皮切りに、激しい攻防が繰り広げられる、桔梗は様々な飛び道具で、バドは金色の一般サイズの剣で。
金属と金属のぶつかり合う音は、明希に追い打ちをかけた。
“僕も戦いたい・・・!!。皆を助けたい・・・!!”
そんな事を考えながら、明希は戦闘を見守った。
「バド君。君はナギの親友だと聞いたが、なぜナギを傷つける」
桔梗は距離をとり、バドに質問する。
すると、バドは憎しみだけでできたような声で叫んだ。
「俺の親友はショウ様だ!。今の巫田章は俺の憎むべき相手でしかない!。ショウ様は変わってしまわれたのだ!。ショウ様は亡くなってしまわれた!」
叫びながら、剣を振るバド、それを見て、桔梗は真実を紡ぐ
「という事は、君はナギに光を与え、宇宙安全対策本部へ誘った医者を恨んでいるってこと?」
「あぁ。ショウ様を変えたのはその医者だしな」
すると、桔梗は自虐的な笑みを浮かべ、答えを紡ぐ。
「ナギに光を与え、巫田章としての人格を確立させた医者。君の憎むべき相手は、僕だよ」
6年前。章が家を出て、少したった時のこと。
「あの・・貴方は僕の目を治してくださるのですか?」
章は不安げな声で呟く。
なぜなら、未来の見える家系の“不良品”となると、非合法な組織が実験台にしようと、いくつもの組織が章に近づいたからだった。
しかし、目の前の医者は、自分1人で安全に目を治してくれるという。
「・・・先生の名前を教えてくださいますか?」
章の声に医者は答える。よく言い聞かせるような声で。
「僕の名前は、黒雨桔梗だよ」
そして、桔梗は章の目を手術した。
どんな医者が挑んでも治せなかった彼の目を、桔梗は1人で治してしまったのだ。
「ありがとうございます、ありがとうございます!!」
目が治り、光を手に入れた章は嬉しそうに嬉しそうにふるまう。
桔梗はそんな章を見るのが好きで、その上彼が家族に捨てられている事を知って、宇宙安全対策本部に誘った。
今でも、章は桔梗に感謝しており、それが彼等の信頼の一部にもなっている。
バドは怒りに震えていた。
「お前が・・お前がショウ様を・・・・!!」
そして、バドは桔梗に斬りかかろうとした。
しかし、桔梗は避けようとはしなかった、せめてものバドへの罪滅ぼしのつもりなのか。
明希は混乱した。
“ナギの目を治したのが桔梗さんだった!?。でも、なんでバドはナギの視力が戻った事を喜ばないのだろう。ナギは戻った方が嬉しかったのに。本当にナギのことを想っていたのなら、幸せは一緒に共感するべきだよ。桔梗さんにやつあたりなんておかしい”
明希は自分の腰にある銃を握った。
“もしも、外したら桔梗さんに当たる・・。でも、バドが桔梗さんを斬るのは防ぎたい・・・。外れるかもじゃない、外さないんだ!!”
明希は自分の手に力をこめ、思いっきり引き金を引いた。
パンッ!!。
乾いた銃声がする、その瞬間桔梗は後ろへ引き下がった。
そして、鉛の玉はバドの肩に直撃した、
「ぐっ――――っっ!!」
声にならない悲鳴を上げ、バドがその場に崩れ落ちる。
「・・・明希君。ありがとう」
桔梗が明希に向かって微笑んできた、その表情を見ると、きっと明希が引き金を引く事を信じていたのだろう。
「・・・もしかして、僕が引き金を引くだろうって・・・」
明希が恐る恐る尋ねると、答えは簡単に返って来た。
「うん、そうだよ。僕は君を信じていた」
桔梗の声はどこまでも優しかった。
バドは自分の肩を押さえ、足を引きずりながら歩いていた。
桔梗の飛び道具が足にも当たっていたらしい。
“俺の役目はショウ様を守る事・・・。あの医者だけは、あいつだけは許せない・・・”
虚ろな目で章に近づくバド、彼の手には先ほど桔梗戦で使った剣が握られている。
“もう、ショウ様が帰ってこないのなら、いっそ巫田章は始末してしまおう、あいつがいると、ショウ様との思い出と決別できない・・・!!”
「き、桔梗さん!!僕、誰かの役に立てましたか!?FDSのメンバーっぽかったですか!?」
「うん。明希は僕たちの仲間だよ」
「やったー!!」
明希は嬉しさで飛びあがっていた。
“やっと僕も皆のためになれた・・・。FDSのメンバーになれたんだ!!”
明希はこれまでになくはしゃいでいたが、その時間は終わりを告げた。
「死ね!巫田章!!」
急に、バドの叫びが響く、そして、自分の持っていた剣をナギにむかって振りおろした。
「―――――っ!!」
「や、やめろ!!」
桔梗も明希も気付いたのが遅かった。2人が追いつくこともなく剣が下ろされる。
“もう駄目だ!!。せっかく、皆の仲間になってナギを助けれると思ったのに・・・!!”
明希の顔が絶望に染まる、見えないが、きっと桔梗も同じような顔をしていたに違いない。
殺気に支配されたバドの剣がナギの身体を両断しようとしたその時――――。
「・・・バド。もう、朝なの?」
「――――っっ??」
バドはギリギリの所で剣を止めた。
気絶していたはずの章が、目を覚ましたのだ。
章はバドに向かって、場違いな発言を繰り返す。
「・・・もう、朝か・・・。今日はどんな天気?」
「・・・!!。ショ・・ウ・・さ・・ま??」
微笑みかける表情は、ショウのものだった。
ショウはバドに向かって微笑んでいたが、急に悲しげな表情に変わった。
「バド・・ごめんね。勝手に出て行ったりして。父様と母様が君やメイに会うのを許してくれなかったんだ」
「で、でも・・光を取り戻したのなら・・・。なぜ・・会いに・・・きてくれ・・・」
バドの目から大粒の涙が溢れ出す、そして、ショウは罪悪感を噛みしめたような顔になって、淡々と話し出した。
「Chinese bellflower」
「・・・!!」
バドとメイの目が見開かれる、3人で見つけた美しい花の名前だ。
「地球での呼び名が分かったよ」
ショウは2人の顔をしっかり見つめてから、続きを話した。
「Chinese bellflowerは、桔梗だ」
すると、バドとメイの視線が黒雨桔梗に集まる。
ショウは話し出す、いや章が話し出す。
「2人との友情の証Chinese bellflower。僕は地球に同じ名を持っている人を見つけた。その人と繋がっている事で、2人とも繋がっているつもりだったんだ。今まで、2人のことを忘れた事は一度もなかった・・・。本当にごめんなさい」
章の目からも涙が溢れ出す、バドはその後ろにショウの面影を感じた。
“・・あぁ。ショウ様も章も同一人物なんだ。しかも、章も俺達のことを大切にしてくださっていた”
章とバドの涙は、離れ離れになっていた6年間を、少しずつ埋めて行く。
今まで、忘れていたものを少しずつ思い出すように。
バドは涙をふき、立ちあがり剣を持つ。
しかし、次の狙いは章ではなく、ショウと章を苦しめたカンナギダ家当主。
当の本人は、龍介と律都との戦闘に夢中だ。
「ショウ様・・・いや、章。俺にとって貴方は大事な人だ」
「僕にとってもだよ、バド、メイ」
「私にとっても」
メイも声を重ね、3人の気持ちは再び集まる。
そして、バドは2人に向かって決意する。
「章、メイ。俺はあの当主を殺る」
「・・・!。お兄ちゃん!」
「バド!!。そんなことをしたら君の立場が!!」
メイと章が止めようとする、しかし、バドの決意は固いものだった。
「いいんだ、俺の立場なんてそれに、章の望みは金星の人間を全滅させることだろう」
「・・・!!」
章は息をのんだ、確かにFDSとしての彼の目的は金星の侵略だが・・・。
すると、バドは章の手を握った、そして決意の光を宿した目を章に向ける。
「俺は、章の望みどおりに動く、今まで誤解していてすまなかった。そして、ショウ様、いつまでも貴方らしく生きてください、いつまでも、俺は貴方の味方です・・・。メイ、章を頼んだぞ」
「うん・・・お兄ちゃん」
章は止めようとした、しかし、彼が声をあげるよりも速く、バドは走りだしていた。
その後の出来事は一瞬だった。
バドはものすごい速さでカンナギダ家の当主に斬りかかり、龍介や律都の驚愕を無視し、絶命させる。
そして、次の瞬間自らの心臓に剣を当てる、そして、一瞬章の方を見て、唇で言葉を紡いだ。
『さようなら』
それを章が読みとった瞬間、バドは自分の心臓を貫いた。
飛び散る潜血、それは、章の頬を少し濡らした。
『ショウ様・・・。俺は貴方に会えて幸せでした。・・・できる事なら、もっと貴方の隣に居たかった・・・』
バドの呟き。彼のショウと章への想いは消えることはなかった。
その証拠か、倒れたバドは穏やかに微笑んでいた。
沈黙。しばらくして、章は事態を把握した。
「うっうっうわあああああぁぁぁぁっっ!!」
章は、今までしたことの無いような声で絶叫し、そのまま地面に崩れ落ち、気を失ってしまった。
「・・・ナギ?」
桔梗が表情を覗き込む。しかし、返事は無い。
「おい、大丈夫か?」
「何があったんだ!?」
「・・・ナギ?。どうしたの!?」
メンバー達が駆け寄る、しかし、章が目を覚ます事は無かった。
こんにちは、蒲沢公英子です。
ナギルート完全決着、そしてバッドエンドという・・・。
あれ?、零のルートよりひどい終わり方じゃんなんて言わないでください。
しかも、後半のグダグダさ、バドは最後までキャラクターが固まりませんでした。
まぁ気を取り直して、次回は番外編です!!。
実は、水星と金星はいっしょくたになってます。
その理由を書いていきたいと思います。
新キャラ出ますよ、しかし、番外編なので、読まなくてもストーリーに大きな支障はありません。
そして、12話は番外。13話はなんとストーリーがガラッと変わります。
なんというか、まぁ、登場人物がね・・・はい。
と、いうことで、この話もここで小さな一区切りです。
「残りの星どうするんだよ!!」
はい、きちんと進めていきますよ、そこは。
では、こんな駄文につきあっていただきありがとうございました。
また、皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。
次回予告。
3年前に起こった出来事。
番外編では、それを詳しく語ろうと思います。
「Force that defends space」12話「叙事詩~水星VS土星戦争~」
番外もよろしくお願いします。




