10話「救出戦闘」
暗い室内。
電気は全く通っておらず、光を抹消したような部屋だった。
「この雰囲気・・・。懐かしいものがあるね」
声はまだ幼げの残る少年の声だった。
「それがどうした?」
こっちの声は成人男性の声。
すると、少年は挑戦的な意志をこめて言葉を放った。
「昔、僕には暗闇しかなかったからね、でも、昔の様には戻りたくないし、戻る気もない。だから、僕を利用しようとしても無駄だよ。ねぇバド」
第三の人影が息をのむ気配が伝わった。
ショウ=カンナギダの過去の話を聞き終わった後、メイと明希はお互いに見つめ合っていた。
しばらくすると、明希が恐る恐る口をひらいた。
「ショウ=カンナギダっていうのは、今の巫田章と同一人物なんだよね・・・」
「そうです。貴方がナギと呼んでいる方が、ショウ=カンナギダ様です」
「隊長達は知っているのかな?。ナギの過去」
「私にはわかりません」
また、永い沈黙が訪れる。
すると、思い立ったように明希が叫んだ。
「そうだ!隊長達を呼びに行かないと!。メイちゃん案内して!」
「あ、はい!」
メイは思った以上の速さで走った。
“玖夢さんの時もそうだったけど、地球以外の惑星の女の人って皆走るのが速いのかな?”
実際はそんなことは無いのだが、明希は息を弾ませながらメイの後を追った。
たくさんの入り口があるこの屋敷。
明希、章以外のメンバーは別の大きい広間に着いていた。
「広いなここは。おーーーーーい!!」
「馬鹿。黙れ」
龍介が叫ぶのを、律都が殴って止めている。
「ちょっおまっ殴りすぎ!!。戦闘の前に怪我したらどうするんだよ」
「別にいいだろ。怪我どころか死ね!。東京湾に沈め!」
「・・・東京湾って・・。いつの時代だよ・・・・」
敵地のはずなのに、どこまでもフリーダムな2人を、桔梗は考え事をしながら見ていた。
“なんで、ナギと明希君はいないのかな・・・。まさか・・・!!”
桔梗は、金星に着く前に明希が言っていた言葉を思い出した。
『桔梗さん!!。僕はおかしいと思います!。火星を侵略した時、あんなことする必要なんてあったんですか?。玖夢さんはなにも悪い事なんてしていない。火星の人達も・・・』
“もしかして・・・。明希君はナギと一緒に、金星の侵略を止めようとしてるんじゃ・・・・。いやいや、そんなことはないか・・・・”
桔梗は自分の邪念を振り払うように頭を振った。
そして、考え事を続けようとすると、急に声が聞こえてきた。
「隊長、副隊長、零さん、桔梗さん!!。大変です!一大事です!!」
わざわざ全員の名前を呼んだためか、全員が後ろに振り向く。
「どうしたんだ明希。そんなに血相変えて」
「何があった?」
龍介と律都は、走って来た明希に何かを感じたらしい。
さっきまでの雰囲気を捨て、真剣な表情になった。
しかし、明希は息が切れていて、なかなか話せない。
すると、桔梗がある異変に気づいた。
「明希君、ナギはどうしたの?。一緒じゃないの?」
明希は呼吸を整え、深呼吸をして、事実を話した。
「すみません・・・。ナギが・・ナギが・・。誘拐されました」
「はぁ!?。なにがあった!!」
龍介が血相をかえて問いただす。
明希は自分と章の身に起こった事を話した。
龍介は最後まで聞くと、全員に指示を送った。
「全員、ナギの救出に向かう。準備はいいか!」
「はい!」
全員の一致で章救出作戦は始まった。
同時刻。
暗い室内。
何も見えない部屋で、3人の人間が話していた。
「父様。僕を使って何がしたいのですか?」
少年の声、しかし、この暗闇の中でも声に戸惑いは感じない。
「なにを言う、ショウ。お前を使って何かするわけでは無い。第一お前は死んでいるはずなのだ」
紳士の声。威圧感を持ったどこか鋭い声だった。
「僕は死んではいません。何故僕が死ななければいけないのでしょうか?」
章の返事はどこか皮肉の混ざった返事だった。
紳士はその返事にいら立ったのか、少し声を荒げた。
「お前は死ななければいけない筈なのだ!。あの後、どうやって生き延びた」
「あの後、僕は地球に渡りました。そこで素晴らしい医者の先生に目を治してもらったんです。そして、宇宙安全対策本部に身を寄せました。ご不満でも?」
章はらしくもなく、紳士を挑発した。
すると、紳士は、今度こそ怒りに身を震わせた。
「お前の態度が気に食わないのだ!!。バド、こいつを始末して来い」
「・・・もうよろしいのですか?」
「あぁ、こいつから聞き出せる情報はもう無いだろう。もう、顔も見たくないしな」
「はい。分かりました」
紳士がこの部屋を去る。それと同時にバドは章に近づいた。
「ショウ、俺がどれだけお前のことを恨んだか知っているか?」
「・・・バド。黙って出て行った事なら謝るよ。でも、僕は君に恨まれる理由が分からないんだ」
さっきまでとは違い、章はどこか不安げに呟いた。
すると、バドは自分の剣を抜き、叫んだ。
「貴方は変わった。俺とメイのショウ様を返せ!!!!!」
次の瞬間、バドの剣が章の身体を貫通した。
「ここです、ここでショウ様は旦那様に・・・」
メイはFDSのメンバーを案内して、最初の場所にたどりついた。
「ありがとう!メイちゃん」
明希はメイにお礼を言う。
メイの存在は簡単に説明しておいた。そして、彼女も案内役を自ら務めてくれた。
しかし、ここには誰も居なかった。
「おい、ここから抜け道とかは無いのか?」
律都がメイに聞くと、メイは首を横に振った。
「わかりません。ここから先は旦那様と奥様しか入れないので・・・」
メイは悔しそうに呟く。
「すみません、力になれなくて」
「いや。ここまで案内してくれたんだ。謝る事なんて無いさ」
龍介は軽く言っていたが、急に上、天井を見つめた。
「どうしたんですか隊長?。なにがあっt!?」
明希が後ろに飛びのくのと同時に、天井からたくさんの人間が降りてきた。
全員剣を持ち、体格もいい大人だ。
「旦那様の兵です!!」
メイが叫んだ。
すると、龍介が1歩前に出た。
「明希!」
「はい!?」
「お前は、メイを連れて安全な場所に避難するんだ」
「分かりました!」
明希はメイの手を引き、戦場から避難した。
「よし、まずは小手調べってとこか」
4人が戦闘態勢に入る。
開始早々、零の雷降下術により、兵は半分ほどの数に減る。
「な!?。なんだ今の雷は!?」
「どこだ、どこから撃たれたんだ!」
「おい!しっかりしろぉ」
相手は今の一撃でかなりの精神的ダメージを受けたらしい。
全員が発射源を探すので必死だ。
「まぁ、先手必勝だな」
律都が呟く。
FDSのメンバーは少し離れた場所に全員待機している。
「これで半分ほど・・・。でも、まだまだ数は多いですね」
「もとが多いからな」
桔梗の言う通り、半分になったとはいえ、4人で全滅できる数では無い。
「もう一発いけるか?」
律都が零に催促する、すると、零はこくりと頷き、もう一度雷を落とす。
「これで、だいぶ減るだろう」
龍介は期待を込めて、相手の状況を確認する。
「!?」
そして、驚愕に目を見開いた。
「増えているだと!?」
「何故だ!?。今のは完全に当たったはずなのに?」
律都も混乱している。
何故かというと、兵の数が最初より増えているからだ。
「援軍でも来たんでしょうか!?」
「いや、でも奴の雷降下術の中に入り込める人間なんているか?」
「少なくとも今までには居なかったな」
三者三様の反応を示す。
「どうするんだ?、こんな大人数。俺たちじゃ厳しいぞ」
龍介、律都、桔梗は3人ともが1人1人を確実に仕留める能力にたけている。
特に、律都、桔梗は個人の力はあるが、一気に攻撃できる範囲は狭い。
龍介の範囲もそこまで広いものではない。
実は、FDSのメンバーの中で一気に広範囲に攻撃が出来るのは零だけである。
大人数を一気に相手をするのは、FDSとしてなるべく避けたい事だった。
それを察したか、零がもう一度右手を挙げる。
しかし、雷は起こらなかった。
その代償だといわんばかりに、零はその場に膝を折った。
「・・・っっ」
「大丈夫か!?。フィードバックか・・・」
無敵と言われる『最終兵器』の弱点。
それは攻撃のフィードバックだった。
零自身の攻撃力、スタミナは共に人知を超えているが、改造で壊された身体には無断で負荷がかかっている。
それを、広範囲の攻撃で大きくしてしまうと、いくらスタミナがあっても、身体が弱ってしまうのだ。
普通の戦闘時は滅多に起きないのだが、今回は最大級の威力のものを、2回も発動したため、負荷に身体が耐えられなくなったのだろう。
「これ以上こいつは無理だ。俺達で行かねえと」
律都が零を戦場から離れたところに座らせる。
「ここで休んでろ」
零が頷くと、3人は戦場へ走って行った。
「見た目より、人数が多いとかありえん!!」
龍介は叫びながら棒を振り回す。
「龍介、そっちはどうだ!?」
「減らん!律都は?」
「無理だ!。全く前に進めない!!」
こんな時は相性抜群の二人は、減らない敵に苦戦していた。
“・・・敵が多すぎる。僕の武器じゃ一気に攻撃を加えるのは厳しい・・”
手の中で苦無を弄びながら、周りを窺う桔梗。
“せめて、少しでもたくさんの人に攻撃しないと”
桔梗は、自分の懐から呪札をとりだし、それを苦無に巻きつける。
それを投げると、狭い範囲だが、爆発が起こるのだ。
“・・・・苦無がすぐになくなるのが欠点だけど・・”
その爆発で敵の足どめに成功したらしい、桔梗はすこし口角を釣り上げ笑った。
しかし、その瞬間、首元に冷たい感触。
それが剣先の感触だと気付くのに時間はいらなかった。
「っっ!!」
「油断してるとあぶないぜ」
敵は勝ち誇ったような声で叫ぶ。
桔梗のなかで、危険信号が鳴る。
そして、それと同時に声が聞こえた。
《なにやってんだよ、殺されそうじゃねえか》
「!?・・・なんで今頃」
「なんだ?命乞いでもするか?」
敵の声は無視し、桔梗は自分の中の声を消そうと集中する。
しかし、声は止まらない。
《代わってやるよ。どうせお前ならこの絶体絶命の状況から抜けられないんだろ。俺なら抜けられるさ。間違い無くな。だから代われ》
「い、嫌。や・・・め・・t」
その瞬間桔梗の身体から力が抜けた。
「は!?。どうしたんだこいつ?」
敵も急に崩れ落ちた桔梗に驚くが、好都合とばかりにそのまま攫おうとする。
しかし、その男は地獄を見ることになった。
数秒後、桔梗が急に目を覚ました。
その右目には、いつかの怪しい光が灯っていて、左目は相変わらず淀んでいる。
「俺を仕留める・・・?。はっ!馬鹿な奴め」
その声はさっきまでと違い、人を見下したような声だった。
桔梗は男を蹴り飛ばし、自由な身となる。
「はぁ!?。なにがあったんだ!?」
男の叫びを黙殺して、桔梗は自分の懐から武器を出す。
それは、手裏剣でも苦無でもナイフでも、ましてや呪札でもない。
綺麗に手入れされた、日本刀だった。
桔梗は、目の前の男を皮切りに、周りの兵を全滅させ、龍介や律都の周りの兵まで瞬殺した。
そして、その強さに驚いていた龍介や律都が正気に戻った時。
兵は完全に全滅し、死体の山の中心に桔梗が立っていた。
日本刀を持ち、返り血を浴びた桔梗は狂った声で嗤い続けていた。
「アハハハハハハハハハハハハハ・・・・アハハハハハハ・・・・・」
こんにちは。蒲沢公英子です。
更新遅れてすみませんでした。
ついに戦闘シーンも本格的に書けて良かったです。
でも、戦闘シーンは予想以上にグダグダですが・・・。
まぁ、いつもどおりですよね。(←
そして、次回はナギルート完結です!!。
グダグダ戦闘シーンもきっとあります。
暖かい目でみてやってください。
お願いします。
次回予告。
ナギルート完全決着。
FDSのメンバーは章を助ける事ができるのか。
バドと章の関係は。
そして、章の過去の話には続きがあって・・・。
なによりも、物語の終わりで覚醒しちゃった桔梗はどうなるの!?。
「Force that defends space」11話「決着」
FDSのメンバーの応援をよろしくお願いします。




