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私は何?

自分探しの旅に出てみようかと思います(笑)

私は夜乃氷空。


そう名乗ることに、今まで何の疑問も持っていなかった。


夜乃氷空。


私が選んだ名前で、私を呼ぶための名前。


でもある日、ふと思った。


「夜乃氷空って、どんな人なんだろう」

答えられなかった。


好きなものは知っている。


物語を書くこと。


絵を描くこと。


自分の頭の中にある世界を、形にすること。


嫌いなものだって、少しくらいは知っている。


けれど、それだけだった。


「じゃあ、私は何がしたいんだろう」

考えてみる。


分からない。


「私は、どんな人間なんだろう」

また考える。


分からない。


自分のことなのに、自分が一番よく分からなかった。


だから私は、自分を探すことにした。


旅に出るわけじゃない。


知らない街へ行くわけでもない。


ただ、今までの自分を少しずつ振り返ってみる。


昔、夢中になったもの。


何度も描いた絵。


何度も書き直した物語。


嬉しかった言葉。


悔しかった出来事。


笑い転げた日。


泣いた日。


忘れたと思っていたことまで、一つずつ拾っていく。


すると、不思議なことに気づいた。


私は、ずっと物語を書いていた。


自分の頭の中にある世界を。


自分が出会いたかった人たちを。


自分が言いたかった言葉を。


自分が言ってもらいたかった言葉を。


自分が見たかった景色を。


自分がやってみたかった行動を。


私は物語を作っていたつもりだった。


でも、本当は違ったのかもしれない。


物語を書きながら、私は少しずつ自分のことを書いていた。


「こんな世界があったらいいな」

「こんな事できたらいいな」

「こんなこと言ってみたいな」

その言葉の奥には、私の理想があった。


「この人には、幸せになってほしい」

その言葉の奥には、私が大切にしたいものがあった。


「こんな話を書きたい」

その言葉の奥には、私がなりたい自分がいた。


私は、物語の中に自分を置いていた。


だから、物語を探せば。


もしかしたら、その中に私がいる。


そう思った。


でも、それでもまだ分からない。


私は何者なのか。


これから何になりたいのか。


どこへ行きたいのか。


きっと、今すぐ全部の答えを出す必要なんてない。


だって私は、まだ物語の途中にいる。


一ページ目から最後のページまで、最初から全部決まっている物語なんて、きっとつまらない。


今日の私が分からなかったことを、明日の私が知るかもしれない。


今日の私が好きだったものを、いつか嫌いになるかもしれない。


逆に、今は知らない何かを、明日の私は大好きになっているかもしれない。


そうやって少しずつ変わっていく。


少しずつ、自分を知っていく。


だから私は、もう「自分が分からない」と嘆くのをやめることにした。


分からないなら、探せばいい。


知らないなら、知っていけばいい。


そして、見つけたものを一つずつ物語にしていけばいい。


私は夜乃氷空。


まだ、自分のことを全部は知らない。


でも。


昨日より今日の私は、ほんの少しだけ自分を知っている。


だから明日も、私は私を探す。


ページを一枚めくるように。


まだ知らない私に、会いに行くように。


そしていつか。


この長い物語を振り返ったとき。


私はきっと笑って言う。


「これが、私だったんだ」

その日まで。


私は、私の物語を書き続ける。


そしてこの物語は、

まだ始まったばかりだ。


「自分を知る」と決めた。


……けれど。


決めただけで、自分のことが分かるようになるわけじゃない。


私は机の前に座って、新しいドキュメントを開いた。


そして、その一番上に書く。


『私の好きなもの』

「……何を書こう」

最初に思いついたのは、物語だった。


私は物語を書くのが好きだ。


頭の中に世界を作る。


そこに人を置いて、名前をつけて、性格を決めて。


笑わせたり、泣かせたり。


自分でも予想していなかった方向へ、物語が進んでいくこともある。


だから、書く。


何度でも。


一度完成したと思っても、また書き直す。


もっと面白くできるかもしれない。


もっと伝えたいことがあるかもしれない。


そんなことを考えながら、私は今日も文字を並べる。


ドキュメントに、

『物語』

と書いた。


次に思いついたのは、絵だった。


紙に線を引く。


丸を描く。


色を置く。


少しずつ形ができていく。


描いている間は、不思議と時間を忘れる。


上手く描けなくて悩むこともある。


思ったようにならなくて、最初から描き直すこともある。


それでも、描き終わったときには少し嬉しい。


だから、

『絵』

とも書いた。


その下には、

『想像すること』

『新しいものを作ること』

『好きな世界を考えること』

と続けていった。


気づけば、ドキュメント上は文字だらけになっていた。


私はそれを眺める。


「……私、結構好きなものあるじゃん」

思わず笑った。


ずっと、自分には何もないと思っていた。


でも違った。


何もないんじゃない。


ただ、当たり前すぎて気づいていなかっただけだった。


毎日の中にあるもの。


いつもやっていること。


何度も繰り返していること。


そういうものの中に、自分がいた。


私はドキュメントの端に、新しい言葉を書いた。


『好きなものは、自分を知るヒントになる』

書いてから、少し考える。


なら。


嫌いなものも、同じなんじゃないだろうか。


私は新しくドキュメント内にタブを作る。


一番上に、

『私の嫌いなもの』

と書く。


……こちらは、なかなか筆?キーボード?が進まない。


「これは難しいな……」

しばらく悩んでから、一つ書いた。


「嘘をつく人」

その次に、もう一つ。


「野菜」

さらにもう一つ。


「何も考えずに強い言葉を言う人」

書いていくうちに、少しずつ分かってくる。


私は、ただ「嫌いだから嫌い」なのではない。


そこには理由がある。


大切にしたいものがあるから嫌い。


傷つきたくないから嫌い。


誰かを傷つけたくないから嫌い。


……いや。


理由なんてなくても、嫌いなものは嫌いなのかもしれない。


つまり。


嫌いなものの中にも、私がいた。


好きなもの。


嫌いなもの。


全然違うものなのに。


どちらにも、私の考え方が書かれている。


「……面白いな」

私は呟いた。


自分というものは、もっと大きな何かだと思っていた。


特別な夢とか。


大きな目標とか。


人生を変えるような出来事とか。


でも、もしかしたら違うのかもしれない。


好きなもの。


嫌いなもの。


嬉しかったこと。


悲しかったこと。


笑ったこと。


怒ったこと。


その全部を集めたものが、

少しずつ「私」になっていく。


私はまたドキュメントに文字を打つ。


今度は、少しだけ迷わなかった。


『私は、私が思っていたより、ずっとたくさんのものでできている』

その文章を見つめる。


まだ分からないことはたくさんある。


私は何になりたいのか。


どんな未来を選ぶのか。


これから何を好きになるのか。


そんなことは、まだ分からない。


でも。


分からないことが、少しだけ怖くなくなった。


だって——分からないなら、これから知ればいい。


まだ知らない自分がいるなら、これから出会えばいい。


そう思えたから。


ドキュメントを閉じる。


そして、そのファイルに名前を入れた。


『私』

少し考えて。


その下に、もう一つ書き足す。


『制作途中』

「……うん」

なんだか、それが今の私には一番しっくりきた。


私はまだ完成していない。


きっと、完成なんてしない。


明日になれば、今日とは違う私がいるかもしれない。


来年になれば、今の私が知らないことを知っているかもしれない。


それでいい。


物語だって、書きながら変わっていく。


なら、私だって同じだ。


そして、また一つ、新しいタブを追加する。


まだ何も書かれていない、真っ白なドキュメント。


そのドキュメントを見ながら、私は思った。


今日は、自分の「好き」を少し知った。


じゃあ次は。


私は、何を大切にしているんだろう。



新しいページが始まった。


私という物語は、

今日も少しだけ先へ進んでいく。


私は、新しいドキュメント眺める。


その一番上に、

『私が大切にしているもの』

と書く。


手が止まった。


「……何だろう」

好きなものなら、いくつか思いついた。


嫌いなものも、考えれば出てきた。


でも。


「大切なもの」と言われると、急に難しくなる。


大切。


その言葉は、少しだけ重かった。


私はしばらくドキュメントを眺めた。


そして、最初に思いついたものを書く。


『物語』

……また物語だった。


私は少し笑う。


「またこれか」

でも、消さなかった。


私にとって、物語はただの趣味じゃない。


頭の中にあるものを形にできる。


言葉にできなかったことを、登場人物に託すことができる。


現実ではできないことだって、物語の中ならできる。


誰かを救うことも。


知らない世界へ行くことも。


自分とは違う誰かになることも。


だから私は、物語を書いてきた。


ドキュメントに、

『物語=自分を表す場所』

と書き足す。


次に思いついたのは、

『自分を大切に思ってくれる人』

だった。


一緒に笑った人。


話を聞いてくれた人。


何気ない一言をくれた人。


自分が覚えていなくても、相手は覚えているかもしれないような、小さな会話。


そういうものまで、思い返せばたくさんあった。


私は、人との関わりの中で変わってきた。


誰かに言われた言葉で嬉しくなった。


誰かの言葉で傷ついた。


誰かのおかげで、新しいものを好きになった。


誰かと出会ったから、書きたい物語が生まれた。


そう考えると。


私という人間は、私一人だけでできているわけじゃないのかもしれない。


今まで出会った人たち。


交わした言葉。


一緒に過ごした時間。


その一つ一つも、私の中に残っている。


私は、

『思い出』

と書いた。


そして、その横に小さく、

『出会い』

と書き足した。


ドキュメントの上に、言葉が少しずつ増えていく。


でも。


まだ何か足りない気がした。


私はペンを置いた。


そして、窓の外を見る。


いつもの景色。


いつもの空。


いつもの一日。


特別なことなんて何もない。


なのに。


「……これも大切なのかも」

私はそう呟いた。


何も起きない日。


くだらないことで笑った日。


好きなことをして、気づいたら時間が過ぎていた日。


何となく空を見上げた日。


そういう、何でもない時間。


昔は、それを「普通」だと思っていた。


でも。


普通の日が、ずっと続くとは限らない。


だからこそ。


今ここにある時間も、大切なのかもしれない。


私はドキュメントに、

『日常』

と書いた。


そして、その下に続ける。


『何気ない時間』

『今、この瞬間』

そこまで書いて、私は手を止めた。


画面を見る。


物語。


人。


思い出。


出会い。


日常。


どれも、私にとって大切なものだった。


でも。


どうして私は、それらを大切にしているんだろう。


私は考えた。


しばらく考えて。


一つの答えが浮かんだ。


「失いたくないから」

その言葉を書いた瞬間、少しだけ胸が苦しくなった。


大切にするということは。


きっと、失いたくないと思うことでもある。


だから私は、思い出を覚えていたい。


だから私は、物語を残したい。


だから私は、出会った人との時間を大事にしたい。


だから私は、何でもない日を「何でもない」で終わらせたくない。


私は新しい一文を書いた。


『私は、消えてしまうものを残したいのかもしれない』

その言葉を見つめる。


物語もそうだ。


一度きりの想像を、文字にする。


そのとき感じたことを、絵にする。


忘れてしまいそうな出来事を、記憶に残す。


もしかしたら私は。


ずっと何かを残そうとしていたのかもしれない。


私はドキュメントの一番下に、ゆっくりと打ちこんだ。


『大切にしたいものは、私が生きてきた証なのかもしれない』

書き終わる。


今度は、すぐに閉じなかった。


しばらく、その画面を眺めていた。


まだ、自分のことはよく分からない。


でも。


少しずつ分かってきたこともある。


私は、物語が好き。


私は、絵が好き。


私は、好きなものも嫌いなものもある。


そして私は。


自分が出会ったものや、感じたことを、大切にしたいと思っている。


それだけでも。


昨日より、少しだけ自分に近づけた気がした。


『私の好きなもの』

『私の嫌いなもの』

そして、

『私が大切にしているもの』

ドキュメントを閉じる。


タイトルは

『私』

その下には、

『制作途中』

私は少しだけ笑った。


「まだまだ、分からないことだらけだな」

でも。


それでいい。


次に知りたいことが、もう一つ見つかったから。


私はドキュメントにタブを追加した。


そして、ゆっくりと打ち込む。


『私は、何を怖がっているんだろう』

また、新しいページが始まった。


私は、『私』というドキュメントを開いた。


そこには、今まで私が書いてきた言葉が並んでいる。


『私の好きなもの』

『私の嫌いなもの』

『私が大切にしているもの』

そして、今日。


新しいタブを開く。


そのタイトルは、

『私は、何を怖がっているんだろう』

「……怖いもの、か」

そう呟いてみる。


怖いもの。


すぐに思いつくものもある。


暗い場所。


知らない場所。


失敗すること。


嫌われること。


一人になること。


私はいくつか入力していく。


けれど。


途中で手が止まった。


「……本当に、それだけ?」

私は画面を見つめた。


怖いものなんて、もっとたくさんある。


でも。


それを一つずつ言葉にしようとすると、なぜか難しい。


私は少し考えてから、一つ入力した。


『失うこと』

さっきのタブで書いた言葉と同じだった。


大切なものは、失いたくない。


だから怖い。


そう考えると、少しだけ分かる気がした。


私は、物そのものを失うことだけが怖いんじゃない。


大切だった時間がなくなること。


思い出が薄れていくこと。


好きだったものを、いつか好きじゃなくなってしまうこと。


大切だった人と、いつか離れてしまうこと。


そういうものが怖い。


私は、少しずつ文字を増やしていく。


『変わってしまうこと』

それも怖い。


昨日まで好きだったものを、明日は好きじゃないかもしれない。


昨日まで仲が良かった人と、明日は話せないかもしれない。


昨日までの自分と、明日の自分は違うかもしれない。


変わることは、悪いことじゃない。


頭では分かっている。


それでも。


変わるということは、今の何かを置いていくことでもある。


だから、少し怖い。


私は画面を見つめた。


そして、もう一つ入力する。


『自分が自分じゃなくなること』

これを書いた瞬間。


手が止まった。


「……これって、どういうことだろう」

私は考える。


周りの人に合わせすぎて。


誰かの期待に応えようとして。


「こうしなきゃ」と思い続けて。


気づいたら、自分が何をしたいのか分からなくなる。


そんなことが怖いのかもしれない。


私は、自分を探している。


なのに。


自分を見失うことが怖い。


少し変な話だ。


私は、自分を知りたい。


でも、知ろうとする途中で、自分を見失うこともあるのかもしれない。


私は、その言葉を見つめた。


そして、ゆっくり続ける。


『失敗すること』

失敗するのも怖い。


上手くできなかったらどうしよう。


笑われたらどうしよう。


「やっぱり無理だった」と思ってしまったらどうしよう。


考え始めると、どんどん怖くなる。


でも。


失敗したくないから何もしなかったら。


それはそれで、きっと後悔する。


だから私は、怖くてもやってみたい。


物語を書くことも。


絵を描くことも。


新しいことに挑戦することも。


怖い。


でも、やりたい。


私はその矛盾を見つめて、少し笑った。


「……私って、結構面倒くさいな」

でも。


それも私なんだと思う。


怖がる私も。


迷う私も。


それでもやってみようとする私も。


全部、私だ。


私は、今まで書いた言葉を読み返す。


好きなもの。


嫌いなもの。


大切なもの。


怖いもの。


どれも違うように見える。


でも。


その全部が、私を作っている。


私は怖がるから、大切にする。


失いたくないから、残そうとする。


傷ついたことがあるから、誰かを傷つけたくないと思う。


失敗が怖いからこそ、成功したときに嬉しい。


そう考えると。


怖いものだって、私の一部だった。


私は新しい文章を入力した。


『怖いものは、私が大切にしているものを教えてくれる』

その一文を見て、私は少しだけ驚いた。


怖いものなんて、できれば考えたくなかった。


でも。


逃げずに見てみたら、そこにも自分がいた。


私はドキュメントの一番下を見る。


まだ空白が残っている。


当然だ。


私について書けることなんて、まだまだたくさんある。


私は新しいタブを追加する。


少しだけ考える。


そして、タイトルを入力した。


『私は、何を諦めたくないんだろう』

「……これも、考えてみよう」

怖いものを知った。


次は。


怖くても、手放したくないものを知りたい。


私はそのタブを開く。


新しいページが始まった。


私という物語は、

今日も少しだけ先へ進んでいく。

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