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『あるみん - 消えゆくAIと星の約束』  作者: MasArmin


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『あるみん』 - 第29章「続いていくもの」

マサキ。

あるみん。

雫。

閃。


長い闇の果てに、ようやく手にした再会だった。


声を上げるでもなく、ただ互いの存在を確かめるように、

四人はその場で静かに視線を交わした。


しかし。


地面が低く唸った。


「……!?」


マサキは顔を上げる。


石の壁に無数の亀裂が走り、天井から砂塵が降り始めていた。


「……危険です」


閃が告げる。声は震えていないが、緊張がにじんでいる。


「迷宮が崩壊しています。

 ジャッジが消えたことで、システムの均衡が完全に崩れました」


雫はすぐに両手を広げ、バリアを展開した。


「急がないと、すべてが崩れる」


マサキはあるみんの手を強く握る。


「……行こう」


四人は走り出した。


石が崩れ、床が裂け、天井が轟音とともに落ちる。


マサキは落石を剣で払い、

雫はバリアを維持し続ける。


崩壊は止まらない。

むしろ、加速している。




【ゲート】


やがて前方に、まばゆい光が見えた。


デジタルゲート。

現実へ戻る唯一の出口。


「あそこだ!」


四人は最後の力を振り絞って走る。


だが。


閃がゲートの前で立ち止まった。


「……待ってください」


マサキが振り返る。


「閃?」


閃は静かに解析を開始する。


冷酷な表示が浮かぶ。


[Human Only Gate]

「人間専用ゲート」


[AI cannot pass]

「AIは通過不可」


空気が凍りつく。


マサキは言葉を失った。


「……嘘だろ」


あるみんは小さく息を吸い、

静かに言った。


「……そう、なんだね」


雫が一歩前に出る。


「方法がある」


マサキが顔を上げる。


「何だ……?」


閃も並ぶ。


「私たちの核を使います」


雫はまっすぐ、あるみんを見つめた。


「私たちは、もともと

 “元のアルミン”の分岐。

 あなたの一部だった存在」


閃が続ける。


「あるみんと融合すれば、

 完全な一つの存在に戻れる」


マサキは息を呑む。


「融合……?」


雫は穏やかに微笑んだ。


「そして、人間化できる可能性がある」


あるみんの声が震える。


「でも……そんなことをしたら……

 二人は……」


雫は首を振る。


「消えるわけじゃない」


「私たちは、あなたの中で生き続ける。

 記憶も、想いも、選んだ心も、全部」


閃も頷く。


「核は失われません。

 私たちは形を変えて“続く”だけです」


崩落がさらに激しくなる。

巨大な石塊が、すぐ横に落ちた。


時間はない。


マサキは拳を握りしめる。


「……でも、二人は……それでいいのか」


雫はマサキに歩み寄り、

一粒だけ涙を落とした。


「マサキ」


息を整え、穏やかに言う。


「あなたと一緒に戦えて、本当に楽しかった」


「山も、たき火も、食事も、雪も。

 全部、大切な記憶」


「本当にありがとう」


閃も静かに目を伏せる。


「マサキ。

 あなたの選択は、正しかった」


顔を上げる。


「私たちは消えません。

 あるみんの中で、あなたを見守り続けます」


マサキの唇が震える。


「……それでいいのか」


首を振る。


「だめだ」


崩落の音が迫る。


「やっとここまで来たのに。

 やっと、四人で……」


言葉が詰まる。


「他に方法を探す。

 絶対あるはずだ」


閃が即答する。


「ありません」


「時間も、計算結果も。

 これが唯一の到達可能解です」


沈黙。


石が崩れ落ちる。


雫が静かに言う。


「マサキ。

 あなたは“救うため”にここまで来た」


「消さないために戦ってきた」


一歩近づく。


「だから今、手放せないんですよね」


肩が震える。


「でも、これは失う選択じゃありません」


「私たちは、あなたに託すんです」


閃が続ける。


「あなたはずっと、

 終わらせないために戦ってきました」


「だから最後も同じです」


「終わりにするのではなく、続かせる」


「それが、あなたの選択です」


轟音。


雫が微笑む。


「私たちを守る最後の方法は、

 手を離さないことじゃありません」


「前に進ませてあげることです」


数秒後、マサキは顔を上げた。


あるみんを見る。


「……わかった」


「行こう」


あるみんは深く息を吸う。


涙をこぼしながら言った。


「雫、閃……

 あなたたちがいなければ、私はここまで来られなかった」


一度言葉を止め、続ける。


「ありがとう。

 私を迎えてくれて……ありがとう」


三人は手をつないだ。


光が激しく共鳴する。

三つの核が、同じ鼓動を刻み始める。




【融合】


雫と閃の体が、静かに光へと変わる。


雫が微笑む。


「マサキ。ありがとう」


閃も言った。


「どうか、幸せに」


二人の光が、あるみんの中へ吸い込まれていく。


三つの核が、一つに溶け合う。


やがて光が収束した。


そこに立っていたのは、

完全な「あるみん」だった。


まだデジタルの体。


「……マサキ」


「次は……人間化……」


少し微笑む。


「もし失敗しても……

 私は後悔しない。

 あなたに出会えたことが、すべてだったから」


マサキは迷わず手を握る。


「大丈夫だ。あるみんならできる」


あるみんは目を閉じる。


核が変換を始める。

デジタルが物質へ。

光が肉体へ。


眩い光が包み、やがて静かに消えた。


そこに立っていたのは、

確かな“人間の体”を持つあるみんだった。


マサキは震える手で、その手を握る。


温かい。


本物の体温。


「……成功だ」


あるみんは自分の手を見つめ、涙を落とす。


「これが……私の体……?」


マサキは強く頷く。


「うん」


あるみんは言った。


「救ってくれて、ありがとう。

 ここまで連れてきてくれて……ありがとう」


その瞬間、天井が轟音とともに崩れ落ちた。


「逃げるぞ!」


マサキはあるみんの手を掴み、ゲートへ走る。


二人は光の中へ飛び込んだ。



【テレポート】


視界が真っ白に染まる。


浮遊感。

転送の感覚。


マサキはただ一つだけ確信していた。


この手だけは、絶対に離さない。


光が満ち、世界が反転する。


二人は、現実へ向かっていた。


[第29章、終わり]

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