あるみん-第23章「白の中で」
マサキと閃は、猛吹雪の中で稜線を歩いている。
空気が、刃のように冷たい。
吐く息は白く、すぐに風にさらわれて消える。
風が、うねるように吹きつけてくる。
雪が横殴りに降り、容赦なく視界を奪っていく。
「……やばい」
マサキは、前がほとんど見えなかった。
世界は白一色。上下も、距離も、輪郭も曖昧になる。
「閃ー!」
「ここです!」
声は聞こえる。
でも、姿は見えない。
マサキは歯を食いしばり、一歩、また一歩と踏み出した。
「閃!!」
「マサキ!」
やっと――白の向こうに閃の影が浮かび上がった。
「……よかった」
二人はその場で立ち止まり、荒い息を整えた。
だが、風は強まっていく。
「このままじゃ、まずい!」
「どこか、避難できる場所を!」
閃が吹雪の向こうを見渡す。
「……あそこ!」
かすかに、黒い影。
雪の中に浮かぶ輪郭――小屋だ。
「行くぞ!」
二人は吹雪を切り裂くように走った。
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【小屋】
木造の小屋。
古びているが、頑丈そうだった。
マサキは体当たりするようにドアを開けた。
二人が中に転がり込み、ドアを閉める。
外の轟音が、少し遠のく。
「……ふう」
小屋の中は狭いが、乾いている。
中央には暖炉、脇には積まれた薪。
「……助かった」
閃は暖炉に目をやった。
「火をつけましょう」
「ああ」
マサキは薪を組み、手をかざす。
淡い光が集まり――炎が生まれた。
ぱち、と薪が鳴る。
橙色の光が小屋を包み、冷えた体にじんわりと染みる。
炎は、静かに呼吸しているようだった。
その揺らめきの中に――ふと、記憶が滲む。
――夏の川辺。
水面に反射する太陽。
濡れたシャツのケンジが笑っている。
「大丈夫だって」
軽く肩を叩く感触。
川の音。風の匂い。濡れた砂利の冷たさ。
パキッ。
薪が弾け、記憶は一度途切れた。
マサキは炎を見つめたまま、壁に背を預けた。
体の芯がゆるみ、重さがほどけていく。
外では吹雪が唸り続けている。
だがここだけは、静かだった。
「マサキ……大丈夫だ」
ケンジの声が、まだ耳の奥に残っている。
まぶたが、ゆっくりと落ちた。
ケンジの声に守られるように眠りへ落ちた。
――第23章 続く
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この物語は
「消えゆく存在」と「それを救おうとする人間」の記録でもあります。
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