表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/26

GP22 「獣」

人数 79名

座標 20° 28km

傾斜 5° 5 °

Scale Rainの射撃を避ける。分かってはいたが狙いは俺だ。PandaやDarlingの攻撃を受けても気にもとめず、俺の方に真っ直ぐ来る。


「シュリ、お前とその機体を軍に持ち帰るのが、俺の仕事だ」


「…その機体に人が入ってるって、マジなのか?」


「らしいな、俺は学がねぇから詳しくは知らねぇよ。俺が拾われた頃にはこの人はもう動けないらしくてな…お前の機体の技術を模倣したらしい。お前の機体に入ってるそれ、俺らがあの時盗んだあれだよ。名前は何だったっけか」


「…OSか?」


「違う違う、なんか名前があるらしいんだ。お前なら知ってるだろ?俺は拾われるまで、おーえすってのも知らなかったけどな」


[…構わん、名乗ってやれ]


名乗る気は無い。これは隠す物だと、ロギから教わってる。その為のもうひとつの顔がある。


「…ペクトゥスだよ」


「そんな名前だったかな?まぁいいか。俺は持ち帰るだけだから」


サイトウは小さく唸った。齋藤はこういう時名乗りたいタイプだが、今じゃない。


[はい!ペクトゥスはシュリさんのアシストをする高性能AIです!]


余計な時に喋りやがった。慌ててペクトゥスのマイクを切るが、普通に遅い。


「いや、違うな。AIじゃないって、そう言ってた気がする…」


ゆっくり歩きながら詰めてくるScale Rainと距離を取りながら、視界に捉え続ける。Pandaが隙を伺っているが、Pandaの装備じゃ難しいらしい。


「ヒュドラ君、早く決めた方がいい。他の機体が少し集まって来ているらしいよ。配信してないそうだ…例の亡霊だね」


「分かってます!でも…」


「なぁ、シュリ。俺はあんま詳しく聞かされてないんだ。だから今この状況が、どこまで酷いのか分かってないんだよ。俺はお前みたいに賢くないしさ。今じゃ大きな軍の1番下だしさ…あんまり居心地は良くないんだ」


俺の記憶のリーダーは、こんなにお喋りじゃない。でも声や話し方は、俺の知ってるリーダーそのものだ。


こいつは本当にリーダーか?そんな疑問が頭に浮かぶ。


「…Pandaさん。俺、こいつの中身を暴きます。手伝ってくれませんか?」


トゥエルブが反応する。


「暴いてどうするのさ?」


「…どうするとかは決めてないです。でも確かめたい。じゃなきゃ終われません」


「…Insightか。いいね、レイドボスって訳だ。楽しませてくれよ。ヒュドラ君」


「…はい」


「よーしじゃあ作戦会議と行こう。ギル君も是非」


「…は?」


トゥエルブの呆れ声がする。リーダーの方も一瞬立ち止まった。


「…俺も?」


「そそ、君を倒すための作戦会議。君は硬いしなぁ。僕1人では無理そうだ。やっぱり決め手は、格闘兵器を持つInsightになるかな?」


「ちょちょ、Pandaさん?」


「僕とDarlingが上手く足止めして、その隙にInsightが脚を潰す。そしたらあとは無力化して、中身を暴こう。Scale Rainはどう立ち回る予定かな?」


「俺は…」


全く意味が分からない。この人はやっぱりおかしいのでは無いか。


「あぁ、これが使えるんだった」


Scale Rainが右手に持っていた銃を俺に向けた。発砲とほぼ同時にPandaが銃に弾を当てて軌道を逸らしてくれた。


「銃を使えるんだね。了解」


このレベルなら、俺が冷静に対応すれば十分勝てる。それなのに心のどこかで、自分の決めたことに反発している。


PandaがScale Rainの周りを高速で動きながら、的確に射撃を入れて行く。Darlingの射撃でぐらついた隙を見て接近する。


攻撃の入力に、Insightが反応しない。相手に当てる少し前で止まった。


その銃剣の先に、Scale Rainの手が伸びる。後ろに引いて構え直す。


[なるほどな…あれが同類か]


サイトウが攻撃を辞めた理由は、遅れて俺にも分かった。あのGPの中のOSが、サイトウのような人間臭い動きをしたからだ。


「人の脳みそ入れたOSって、ちゃんと動くんやね」


Pandaが俺に聞いてくるが、残念ながら俺は知らない。


「皮肉な話だね。人より先に壊れる為の人型ロボットに、人を詰めようなんてね」


「Scale Rainは壊れないぜ」


「そんな訳は無いよ、ギル君。残念ながら、それを教えるのは僕じゃないけど」


そう言いながら攻撃するPandaの攻撃は、Scale Rainには効いている様子はない。

対してScale Rainの射撃は、Pandaには当たらない。


[シュリ、何時まで耽ているつもりだ。動くぞ]


「…あぁ」


[あちらの中身が起き始めた。お前も動きを見れば分かるだろう]


Scale Rainの動きが、機械的な動きから徐々に滑らかになっていっている。

最初こそギリギリで躱していたPandaは、今は十分に距離を取って行動している。


[果たし合いは久しいな。胸が踊る]


「…リーダー」


Scale Rainが俺を見つめる。その奥の人間がどんな人なのか、俺は全く知らない。サイトウが勝手に盾を捨てて銃剣を両手で構える。


[…いざ]


「行くぞ!」


思い切り前に詰める。装甲の僅かな隙間を狙ったInsightの突きに、初めてScale Rainが大きく避けた。続けて前に出る。


Scale Rainは腕に纏った装甲で銃剣を受け止める。Insightでは押し切れず弾かれた。相手の突進を軽く跳ねて避ける。


素早く旋回して振り下ろした銃剣を、相手は的確に腕で受け止めた。


「…お前」


「もうお前じゃねぇよ、俺はシュリだ」


「…なら俺も、もうお前のリーダーじゃねぇ」


Scale Rainの蹴りを受けて後ろに下がる。臆することなく前に出る。大きく振りかぶった時、新しい声を拾った。


[…辞めろ]


一瞬立ち止まったScale Rainの脇に、銃剣を構え直したInsightが突きを入れる。Scale Rainは止まらず、もう片方の手でInsightを掴んだ。


[子供同士で争うのは辞めろ]


Scale Rainの中身だ。銃剣から手を離し、Insightは相手の顔面を殴る。その腕を掴んでギルは小さく笑う。


「ガラさんごめん、それは無理だ」


Scale Rainが片腕でInsightを放り投げる。明らかに俺たちよりパワーが上だ。


「シュリ…これがお前の手に入れた幸福だったんだな。全く…羨ましいぜ」


銃剣を引き抜いたScale Rainが手を広げて構える。


「こんなに楽しいことを、大人達は俺らを捨ててやってたんだな!行くぜシュリ!」


「あぁ!来いよギル!」


俺とScale Rainの間にPandaが割り込んだ。


「ごめんね!盛り上がってる所。別の亡霊が接近しているらしいから、早く逃げ」


Pandaを踏み越えてScale Rainに殴りかかる。腕で防いだScale Rainに、腰に提げていた緊急用のGPナイフを1本取り出したInsightはScale Rainに投げた。それをScale Rainがキャッチする。


サイトウはやっぱり戦いが好きだ。気が合う。


「…いいね、そう来なくちゃ」


[…貴様、何のつもりだ]


乗り気なギルとそうでもないガラと違い、俺たちInsightは勢いよく詰める。


亡霊なんてどうでもいい。今この瞬間、目の前にいる友と遊べるのが何よりも楽しいんだ。戦争だとか、人の命とか、そんなことどうでも良くなるくらいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ