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GP12 「縦」

人数 62名

座標 100° 20km

傾斜 0°  0°

稼働エネルギーのリチャージが終わり、Insightから管が外れる。

割れた盾は使い潰す。散弾の使い所は少しずつ掴んできた気がする。


「よし、行けます」


補給ヘリが上に上がっていく。ここから後半戦だ。


「シュリ、機体の負荷見して」


「あ、はい」


映したコマンドを見つめるが、相変わらず分からない。それでも、前回開いた時より減っているのは分かる。


「今日は30位で降りるよ」


「…いいんですか?」


「良い。それまで逃げ続けるよ」


コメント欄が騒ついた。理由は明白だ。でも俺は否定する気は無かった。あれだけ俺の為に戦ってくれたDarlingとトゥエルブに無茶はさせられない。


「分かりました。全力で守ります」


「はいはい」


同接人数がガクッと下がった。それに対して、トゥエルブが視聴者にコメントする


「ごめんね。でも今回はダメ。ダーリンはもう頑張ったから」


「悲しい」

「せめてInsightだけでも」

「了解!あと少し頑張って!」

「いい試合を見たわ」


後半戦のピボットテーブルは、前半の喧騒が嘘のように静かだった。きっと、まだ誰も戦ってない。


「これだけ広いと、逃げ切れそうな気もしますけどね」


「あんた、ちゃんと動画観てた?」


「え?はい」


「数が減ると、何処にどんな戦法の奴がいるのかが分かりやすくなる。数が減るほど、鳩はより速く正確になる」


そして、ランカーであるトゥエルブと、前半で暴れた俺は、その標的になりやすい。


「今のランカーの位置、全部教えて」


トゥエルブがそうコメントに話しかけると、ずらりと数字が並んだ。それぞれが座標を現していて、何個か被っている。

俺にはどれが何なのか全然分からなかった。何人のランカーが居るのかも。


「ランカーは8人か…意外と多いね」


「今ので分かったんですね」


「行くよ、止まってられない。コメントのみんなも、ずっと教えててね」


永遠と流れ続ける数字は、ロギが触るコンピュータのコード画面のようだった。


トゥエルブの後ろをひたすら進む。音を立てず、周りの音は…少しずつ聴こえてくる。


ついさっきまで数字の羅列だったコメント欄が、文字に変わった。


「不味い、みんなしてそっち向かってる!」

「ランカー含めてみんなそっち行ってるよ」

「全方位からみんな来てる」

「逃げて!沢山来てる!」


「早すぎでしょ!シュリ、いい?こっから乱戦になる。しかも普段の倍以上になる。多分完全な連携は出来ない」


「じゃあ、もうリタイアしても」


「それが許されるならね!構えて、地形はちゃんと見な。縦になるかも」


トゥエルブの発言を遮るようにアラートが鳴った。ホバー走行をする相手機体が視界に入る。


「私と離れたら、自分を信じて」


「…了解です」


素早い動きで照準を乱してくるホバー機体に対して、正面から突っ込む。再び鳴るアラートは、前と横から同時に来た。小さく跳ねて、両方のグレネードを回避する。


正面のホバー機体に散弾を撃つ。進行方向と逆に回避した相手の動きを読んでブーストを吹かす。


Insightは、本来沢山積めるはずの背中に武装を積んでいない。故に素早さはこちらの方が上だ。


こちらの間合いギリギリで、タックルを仕掛けて来た相手に攻撃を入力する。Insightは銃剣を正面に構えた。綺麗に頭に入った相手機体は、頭が潰れて姿勢が崩れる。


相手の腿を掴んで、後ろから近付いてきた別の相手に投げつける。


その視界に、更に機体が映る。上から、正面から、次々と機体が来ている。


「何があったって言うんだ!?」


[さあな。お前は変わらずに行け]


「言われなくとも!」


別に、全員が俺やDarlingを狙ってる訳じゃない。集まったGP達が、お互いを攻撃し合っている。トゥエルブの言った通りの乱戦だ。


地面が傾いた。さっきより勢いが大きい。傾斜を見ると、既に15°を超えていた。後半戦開始時は0だったのに。


機体の制御を整えながらビル壁に移る。傾きは終わらない。ホバー走行をしていた機体が、その傾斜に逆らえずに下に下がっていく。


同じビル壁に来ようと飛んできた相手を散弾で牽制する。直撃を受けても突っ込んできたその機体は、上から落ちるように流されてきた別の機体と激突して落ちていった。


傾斜が30°を超えたのに、それでも傾きが止まらない。上にいた奴が流されて、更に同じ箇所に集まってきている。次々と残り人数が減っていく。


もうDarlingが何処にいるのか分からない。


コメント欄は阿鼻叫喚で高速で流れていく。もう何も読めない。

瓦礫やGPの壊れたパーツが横に落ちていく。


「…そこか、Insight!」


声がした。傾く地面の中、Aeriallagが横を飛んでいる。


Aeriallagは地形の変動を殆ど受けず、空中を飛びながら撃ってくる。次々飛んでくるミサイルを避けながら、次のビルへと移っていく。


「みんなお前を探しに来たんだぜ!縦になるのは何時ぶりだろうな。俺は心躍るぜ」


「楽しそうだな」


「もちろん、みんなそうさ。お前という狂気を一目見ようとゾロゾロ集まってきた。このたった数時間で、お前は今ピボットゲームで1番有名な名前だ」


同接人数は、さっきのガタ落ちからV字回復をして、今なお伸び続けている。傾斜は60°になった。


心臓がうるさい。楽しい。


「…嬉しいよ。ありがとう」


「あ?まぁ死ねよ」


「…いいぜ、楽しく死のう」


思い切り、Aeriallagに飛び込んだ。回避したAeriallagにブーストを吹かして詰める。正面のグレネードをギリギリで躱し、そのグレネードの後ろに盾をぶつけた。


爆風で加速したInsightの手が、Aeriallagの肩を掴む。


「正気じゃねぇな…!?」


「そうかもな!!」


Aeriallagは縦の地面にぶつかり、ビル壁に足を付ける。地面に押し付けて頭を殴る。4発目でInsightの左手が潰れた。


拘束を振りほどいたAeriallagが横の空に逃げる。ミサイルを避けながらビルを移る。


「…本当に、お前は最高だな!!Insight!!」


上からの弾丸で、Aeriallagの背部のスラスターが壊れた。推力を保てなくなったAeriallagが少しずつ下に堕ちていく。


「…君は、死ぬのが怖くないのか?」


上のビル壁に飛び乗ったOverdoseが俺を見下ろしてくる。


「別に」


「何故?」


「さぁ?」


Overdoseは立ち尽くしたまま、俺に銃口を向けた。


「…君達は、このゲームに相応しくない」


「シュリ!」


合図が来た。UIの残り人数は30を切っていた。上から落ちてきたDarlingの下に入り込んで掴む。


「待て!!」


DarlingがOverdoseを撃つ。軽々と避けながらも、Overdoseは追ってこない。


「…結局あんたは、最後まで口だけだ」


「…僕はお前を止める」


海に落ちながら遠ざかっていくOverdoseを、モニターに大きく出たUIが上書きする。


27th


海に叩きつけられたInsightが少しずつ浮上する。操縦桿から手を離して、青い空と横に生えるビルを見た。


「…面白ぇ」


今回のゲームは、またもOverdoseの1位で終わり、Overdoseの総合ランキングが3位になった。

最後まで地面が戻らなかったピボットテーブルは、全員が居なくなった後、少しずつ本来の姿を取り戻し、翌日には元に戻った。

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