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【書籍予約受付中&コミカライズ】転生処理ミスで貧乏貴族にされたけど、錬金術で無双します!~もふもふとお金を稼いで家を救います~  作者: 空月そらら
第二章

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第95話 陽だまりの森の攻防

ポムの白い背中を追いかけて、私は森の奥へと進んでいく。


木々の隙間から差し込む光が、少しずつ強くなってきた。


「きゅるんっ!」


先を走っていたポムが、不意に立ち止まって誇らしげに鳴いた。


そこは、森の中にぽっかりと開いた、円形の広場のような場所だった。


頭上を覆う枝葉がなく、さんさんと太陽の光が降り注いでいる。


そして、その光を全身に浴びて、一面に咲き誇る植物があった。


「わぁ……!」


私は思わず、感嘆の声を漏らした。


太陽の光をたっぷりと吸収し、自ら発光しているかのように黄金色に輝く葉。


間違いない。


アイラ先生の課題に必要な素材の一つ。


「トパーズ草の群生地だ!」


市場で見たことのある乾燥した茶色い葉とは、まるで別物だ。


瑞々しく、生命力に満ち溢れ、風に揺れるたびにキラキラと金色の波を作っている。


これほど見事なトパーズ草が、こんな近くの森に群生していたなんて。


「すごいわ、ポム! 大正解よ!」


私が褒めると、ポムは嬉しそうに尻尾を振りちぎらんばかりに揺らした。


私は興奮を抑えきれず、群生地へと駆け寄ろうとする。


早く、あの美しい葉を手に入れたい。


最高のポーションを作るための、第一歩だ。


しかし、私がトパーズ草に手を伸ばそうとした、その瞬間。


ズンッ……!


足元の地面が、不自然に大きく揺れた。


「え……?」


ただの地震ではない。


目の前にある、数本の大木のうちの一本が、メキメキと嫌な音を立てて動き出したのだ。


太い根が土を蹴り破り、まるで足のように地面を踏みしめる。


幹には、樹皮がひび割れてできたような、歪な目と口の形が浮かび上がっていた。


「嘘、でしょ……?」


私は息を呑み、無意識のうちに後ずさった。


ただの木ではない。


これは、木に擬態して獲物を待ち伏せる、森の危険生物。


「トレント……!」


人間のような形をした、巨大な木の魔物だ。


太い枝を腕のように振り上げ、ギギギという耳障りな声で威嚇してくる。


トパーズ草の豊かな魔力に惹かれて、この群生地を住処にしていたのだろうか。


「グルァァァッ!」


トレントが、丸太のように太い腕を振り下ろしてきた。


「ポム、私の後ろに隠れて!」


私は叫びながら、ポムを庇うように前に出た。


ポムは戦う魔物ではない。


ここは私がなんとかしなければ。


「ふぅ……」


私は短く息を吐き、右手に魔力を集中させる。


相手は木の魔物。


弱点は言うまでもなく、火属性だ。


だが、ここで強力な魔法を無闇に放てば、足元に広がる貴重なトパーズ草まで燃えカスになってしまう。


草を傷つけず、トレントだけを的確に焼き払う精密なコントロールが必要だ。


私は詠唱を紡ぐ。


「炎よ、我が意思のままに集え――」


私の手のひらに、赤い魔力の光が集まり始める。


それは次第に熱を帯び、ソフトボールほどの大きさの火の玉となった。


「これでも喰らいなさい! 《ファイアボール!》」


私が腕を振り抜くと、火の玉は一直線にトレントの胴体へと向かって飛んでいった。


ドゴォォォンッ!


ファイアボールはトレントの胸の中心に命中し、激しい爆発を引き起こす。


「ギィェェェッ!?」


トレントは苦痛の叫びを上げ、その巨体を大きくよろめかせた。


……あれ?


私は、自分の放った魔法の威力に少しだけ驚いていた。


以前に使った時よりも、明らかに火の玉の密度が高く、爆発の威力も増している。


それに、魔力を放出する時の感覚が、以前よりもずっとスムーズで、クリアなのだ。


もしかして……。


私は自分の手のひらを見つめた。


私は毎日、欠かさず錬金術の基礎訓練を行ってきた。


素材から魔力を抽出し、融合させ、定着させるという、極めて繊細な魔力操作。


自分自身でも薄々気づいてはいたけれど。


錬金術という精密な技術を使い続けることによって、私自身の魔力回路が鍛えられ、魔法の質そのものが底上げされているみたいだ。


初級魔法でこれだけの威力が出せるなら。


いつか、もっと高度な中級魔法や上級魔法を学ぶのも、ありかもしれない。


魔法科のユリさんのように、強力な魔法を自在に操れるようになれば、冒険者としての幅もぐっと広がるはずだ。


「よし、トドメよ!」


私は再び魔力を練り上げ、今度は両手に二つのファイアボールを作り出す。


「ダブル・ファイアボール!」


放たれた二つの火炎は、トレントの両腕の付け根に正確に命中した。


ボォォォッ!という音と共に、乾燥した樹皮に一気に火が回る。


「ガァァァァッ……!」


トレントはたまらず地面に倒れ込み、そのまま火だるまになって動かなくなった。


やがて魔物の体は炭化し、粒子となって森の空気に溶けていく。


あとに残されたのは、無傷で黄金色に輝くトパーズ草の群生だけだった。


「ふぅ……終わったわ」


私が安堵の息を吐くと、後ろで縮こまっていたポムが「きゅぅん」と鳴いてすり寄ってきた。


「大丈夫よ、ポム。もう怖くないわ」


私はポムの頭を撫でて安心させる。


いよいよお目当ての素材採取だ。


「ポム、お願いできる?」


私の言葉に、ポムは力強く頷いた。


そして、トパーズ草の群生の中に鼻を突っ込み、忙しなく匂いを嗅ぎ始める。


これだけたくさん咲いているけれど、品質には必ずばらつきがあるはずだ。


アイラ先生を唸らせるポーションを作るには、妥協は許されない。


「きゅんっ!」


しばらくして、ポムが一本のトパーズ草の前で立ち止まり、前足で軽く地面を叩いた。


「これね?」


私がそっと近づいて見てみると、そのトパーズ草は他のものと比べて、明らかに光の強さが違っていた。


葉の表面には、朝露のように魔力の雫がうっすらと浮かんでいる。


「すごい……。本当に一番魔力を含んだ、最高品質のトパーズ草だわ」


ポムの優れた嗅覚は、魔力の濃淡まで正確に嗅ぎ分けることができるのだ。


まさに、錬金術師にとって最高の相棒である。


「ありがとう、ポム! 助かるわ」


私は錬金キットから専用の小さなハサミを取り出し、根元から丁寧に葉を切り取った。


魔力が逃げないように、すぐに密閉できるガラスの小瓶へと大切に保管する。


同じようにして、ポムが厳選してくれた数本の最高品質の葉を採取した。


「よし、一つ目クリアね!」


私はガラス瓶を太陽の光に透かして、満足げに微笑んだ。


瓶の中で、トパーズ草がキラキラと黄金の光を放っている。


「残る素材は、あと一つ」


私はポーチに小瓶をしまい、北の方角へと視線を向けた。


休んでいる暇はない。


日が沈む前に、次の目的地へ向かわなければ。


「次は水晶洞窟ね。行くわよ、ポム!」


「きゅるんっ!」


私とポムは息つく暇もなく、次なる目的地を目指して、木漏れ日の森を駆け出していくのだった。

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