第75話 はじめての学園と、可愛いもふもふ園
がたごとと揺れていた馬車の車輪が、不意に、滑るような感覚に変わった。
どうやら、旧市街の荒れた石畳から、学園都市の整備された、綺麗な道に入ったらしい。
窓の外を流れる景色が、だんだんと、洗練されたものに変わっていく。
やがて、馬車の速度が、ゆっくりと落ちていった。
目の前には、巨大な、白亜のアーチが見えてくる。
王立ラピスフォード学園の、正門だ。
「……着いたわ」
馬車が、学園の敷地内に、静かに到着する。
広大なキャンパスが目の前に広がっていた。
手入れの行き届いた、広大な芝生。
歴史を感じさせる、壮麗な校舎の数々。
遠くには、魔法館の尖塔も見える。
久しぶりの空気ね。
あの、特別入試の日以来だ。
あの時は、緊張と不安と、ほんの少しの恐怖で、胸がいっぱいだった。
だけど、今は違う。
私の胸の中にあるのは、これから始まる、新しい生活への大きな期待だ。
馬車が、完全に停止した。
私は、馬車からそっと降りる。
春の温かい風が、私の金髪を優しく撫でていった。
「ミレイユ、ありがとう。送ってくれて」
「いえ、とんでもございません。エリス様」
御者台から、ミレイユが優しく微笑み返してくれた。
今日の彼女は、アーベント家に仕えるメイドとして、胸を張っているように見える。
「夕方になったら、また、こちらでお待ちしておりますね」
「うん。ありがとう。それじゃあ、行ってくるわ」
私は、ミレイユにもう一度手を振ると、学園の中へと足を踏み入れた。
学園内は、本当にきれいだった。
石畳の道は、塵一つ落ちていない。
道の両脇には、色とりどりの花が咲き誇っている。
しばらく案内の看板を頼りに、歩いていると。
私の目の前に、ひときわ楽しげな一角が見えてきた。
可愛らしい、低い柵で囲われた、広大な緑の広場。
そこには、たくさんの動物たちがいた。
「わぁ……!」
私は、思わず声を上げた。
看板には、使い魔待機所(もふもふ園)と、可愛らしい文字で書かれている。
ここなら、ポムを預けれるようになるのね。
広場の中では、生徒たちの使い魔らしき、もふもふたちが集まっている。
小さな竜が、光の玉を追いかけていたり。
水辺では、宝石のような鱗を持つ水トカゲが、気持ちよさそうに甲羅干しをしていたり。
中には、モフモフした巨大な狼が、生徒にお腹を撫でられて、だらしなく寝そべっている姿も見える。
運動をするための、障害物コースや、ほかのもふもふたちと交流ができる広場も、完備されている。
なんて、素敵な場所なんだろう。
学園に通うことになった時、一番心配だったのが、ポムのことだった。
特定の錬金術授業では、ポムも一緒に受けていいと、許可をもらっている。
だけどここなら、ポムも退屈せずに過ごせそうだ。
お昼休みにも、こうして会いに来られるし。
最高の環境だわ。
私の学園生活への期待が、ますます高まっていく。
私は、もふもふ園の場所をしっかりと覚えると、再び歩き始めた。
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