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【書籍化決定】転生処理ミスで貧乏貴族にされたけど、錬金術で無双します!~もふもふとお金を稼いで家を救います~  作者: 空月そらら
第一章

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第67話 夜空の窓と、見えざる影

温かい夕食を終えて部屋に戻った私は、もう立っているのもやっとだった。


今日の試験は想像以上に体力を消耗したらしい。


私はベッドに倒れ込むようにして、その柔らかな感触に身を委ねた。


ふかふかのお布団が心地いい。


窓の外はすっかり夜の闇に包まれていた。


近くの窓から冷たい空気が流れ込んでくる。


私は身を起こして窓辺に寄りかかり、夜空を眺めた。


星が降るようにたくさん瞬いている。


もう冬が近づいていて空気が澄んでいるからだろうか。


夜風が肌寒くて、私は思わず自分の両腕を抱きしめた。


窓ガラスに映る自分の姿は、まだ頼りない八歳の少女だ。


私はそんな自分の姿を見つめながら、今後のことを思う。


試験には、たぶん合格できているはず。


そうなれば来年の春からは、夢にまで見た王立学園に通うことができる。


ラスール公爵様が、後ろ盾になってくれると約束してくれた。


今、この家はオルダス公爵の支援を少しずつ受け始めている。


お父様がおっしゃっていたけれど、そんな一気に大金が送られてくるわけではないらしい。


貴族社会というのは色々と面倒なのだ。


だから少しずつ、目立たない形で支援を進めていく、と。


それでも、あの日の食卓に並んだシチューのように。


私たちの生活は、確実に、良い方向へと向かい始めているはずだ。


だけど。


私の心には、晴れやかな未来への期待と同時に、拭いきれない不安の影も落ちていた。


アルバ公爵の動きが気になる。


私たちの動き、そして私の存在に、あの人はもう気づいているだろう。


ラスール公爵のご子息、ルートス君を救ってしまったことも。


きっと、良い気はしていないはずだ。


宰相という地位。


それは、国王陛下の次に、この国で最も高い権力を持つ地位だ。


そんな相手から見れば、今の私たちアーベント家なんて、道端の石ころみたいなものだろう。


指先一つで、簡単に潰されてしまうかもしれない。


私はアルバ公爵の本当の目的が分からない。


一体何を企んでいるのだろう。


ただ権力を握りたいだけ?


それだけのために、父を陥れたというの?


お父様だって、あまり詳しくは教えてくれない。


五年前の事件の核心に触れようとすると、いつも悲しそうな顔をして、口を閉ざしてしまう。


一体、お父様は、アルバ公爵の何を見たのだろう。


どんな、恐ろしい秘密を、知ってしまったのだろう。


私はそんな解けない謎を思いながら、冷たい窓ガラスに額を押し当てた。


頭の中が、ぐるぐると、まとまらない。


考えれば考えるほど、不安が大きくなっていく。


その時だった。 部屋の扉が、カチャリ、と小さな音を立てて、少しだけ開いた。


私は驚いて、そちらを見る。 暗い廊下から、ひょっこりと、白い小さな顔が覗いた。


「……ポム?」


私の声に、ポムは嬉しそうに「きゅるん」と鳴くと、とてとてと軽い足取りで部屋に入ってきた。


そして、まっすぐにベッドへとやってくる。


私がベッドの上にスペースを作ってあげると、ポムはぴょんと飛び乗ってきた。


そして、私の横に、ぴったりと体を寄せて丸くなる。


「ふふ、どうしたの? 寂しくなっちゃった?」


私がその柔らかな背中を撫でてやると、ポムは心地よさそうに目を細めた。


温かい体温が、じんわりと伝わってくる。


可愛い相棒だ。


そうだ。


私は、一人じゃない。


どんなに大きな敵が相手でも、どんなに暗い未来が待っていたとしても。


私には、この、かけがえのない相棒がいてくれる。


そして、私を信じてくれる、温かい家族がいる。


私はポムを優しく抱きしめた。


胸の中にあった不安が、少しずつ、溶けていくのを感じる。


大丈夫。きっと、何とかなる。


私とポムがいれば、なんだってできるはずだ。


私はポムの温もりを感じながら、ゆっくりと瞼を閉じた。


窓の外では、星々が、静かに私たちを見守ってくれている。


今はただ、この安らぎの中で、眠ろう。


明日からの、戦いに備えて。


私の逆転劇はまだ、始まったばかりなのだから。

【作者からのお願いです】


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