第66話 優しい笑顔
お母様が、心配そうな、それでいて少しだけワクワクしたような顔で尋ねる。
「うん、すごく大変だったのよ! 全部で三つあってね。最初はね、錬金術の実技だったの」
私は、今日の出来事を興奮冷めやらぬまま、順に話し始めた。
研究室がものすごく散らかっていたこと。
担当のメアリー先生が、だらしないけど、すごく鋭い人だったこと。
レシピもなしに、罠だらけの材料の中から、ちゃんとした素材を選び出して、《マナポーション》を作ったこと。
「まあ! すごいじゃない、エリス!」
お母様が、嬉しそうに声を上げる。
その隣で、お父様も満足そうに頷いていた。
次に、魔力測定でAランクだったこと。
他の受験生には、もっとすごいSランクの子もいたこと。
それを話すと、今度はお父様が、少しだけ驚いたように、感心した声を出した。
「ほう、Aランクとは、大したものだ。さすがは、私の娘だ。だが、Sランクとは……上には上がいるものだな。油断はできんぞ」
「はい!」
そして、最後の、森での試験。
青と紫と赤のオーブを手に入れるのが、どれだけ大変だったか。 少しだけ危険な場面もあったけれど、そこは上手くぼかして話した。
妹のリアは、私の冒険譚に、もう夢中だった。
テーブルに、小さな身を乗り出して、目をきらきらさせている。
「おねえちゃま、すごーい! オーブって、本当に、きらきらしてるの? 宝石みたい?」
「ええ、とっても綺麗だったわよ。まるで、虹のかけらみたいだったわ」
「わー! いいなー! 今度、リアにも見せてね!」
「ええ、もちろんよ」
私は、リアのふわふわの銀髪を、優しく撫でた。
お父様は、私の話を最後まで聞き終えると、満足そうに、深く、深く頷いた。
「素晴らしい。本当によくぞやり遂げたな、エリス。危険な試験だったようだが、お前の知恵と勇気、そして日々の鍛錬が、見事に道を切り開いたのだな。父として、誇らしいぞ」
そのストレートで、力強い賞賛の言葉に、私の頬が少しだけ熱くなった。
照れくさいけど、すごく嬉しい。
お母様も、隣で涙ぐみながら、優しく微笑んでいる。
「本当に、よく頑張ったわね、エリス。今日は、もうゆっくり休みなさい」
「うん!」
そんな私たちの会話を、ミレイユは少し離れた壁際で、微笑みながら見守っていた。
彼女の目元が、やっぱり少しだけ潤んでいるように見えたのは、きっと気のせいではないのだろう。
温かい食事。優しい家族の笑顔。
そして、私の足元で満足そうに欠伸をしながら丸くなっている、ポム。
これ以上ないくらい、幸せな、幸せな時間だった。
この、かけがえのない幸せを守るためにも、私は絶対に学園に合格しなくちゃいけない。
改めて、心の底からそう強く思った。
【作者からのお願いです】
・面白い!
・続きが読みたい!
・更新応援してる!
と、少しでも思ってくださった方は、
【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】
皆様の応援が作者の原動力になります!
何卒よろしくお願いします!




