第53話 四人の挑戦者
第一演習室の重い扉を開け、私は中へと足を踏み入れる。
そこは、だだっ広い講堂のような場所だ。
壁際に並べられた長机には、すでに名前のプレートが置かれている。
私は自分の名前「エリス・フォン・アーベント」と書かれたプレートを見つけ、指定された席にちょこんと座った。
やがて、私の他にも、三人の受験生が部屋に入ってきた。
一人は、とんがり帽子をかぶった紫髪の女の子。
いかにも魔術師、といった感じだ。
二人目は、陽だまりのような優しい雰囲気を持つ、金髪の長い髪の少女。
その身にまとう清らかな魔力は、彼女が聖職者であることを示しているみたい。
三人目は、背中に長い剣を背負った、黒髪ショートカットの男の子。
その鋭い眼光は、優れた剣士のもので間違いない。
私を含めて、受験生は、たったの四人。
なるほど。
特別推薦の試験というのは、これほどまでに狭き門だったのね。
私たちが席に着くと、やがて、正面の扉が開かれた。
そして、一人の、屈強な体つきの男が、入ってくる。
白髪の顎髭をたくわえた、歴戦の猛者のような風格。
彼が、この第一試験の、試験官らしい。
「――よく集まった、諸君」
その声は、戦場に響き渡る号令のように、力強かった。
「今回の特別入試に来てくれたこと、光栄に思う。まず、試験の内容は、各自、案内書で把握しているな?」
私たちは、こくり、と静かに頷く。
「よろしい」
男は、バチン!と、大きく手を鳴らした。
すると、私たちの目の前の空間が、淡く光る。
そして、一枚の水晶でできた薄いカードが、それぞれの机の上に、すっと現れた。
「そのカードは、諸君の受験票であり、身分証となる。今後の試験結果も、全て、そこに記録される。決して、なくさぬように」
私は、ふとそのカードを手に取ってみる。
ひんやりとしていて、滑らかな感触。
中には、私の名前と、魔力の紋章のようなものが、淡く輝いていた。
「では、各自、これより、専門技能を披露する試験室へと、移動してもらう。そのカードに、向かうべき部屋が、記されているはずだ。確認し、速やかに、移動せよ!」
言われて、私はカードに視線を落とす。
確かに、表面に【行き先:Q棟 研究室3】と、文字が浮かび上がっていた。
錬金術の試験だから、実験室が使われる、ということね。
私たちは、一斉に立ち上がり、それぞれ、自分の試験室へと向かうため講堂を出て長い廊下を歩き始めた。
「はぁ……緊張するわね……」
この、独特の空気感。
前世の記憶を持っていても、やっぱり、試験というのは、緊張してしまうものだ。
だけど、やるしかない。
私は、きゅっと、小さな拳を握りしめ、歩を進めるのだった。
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