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【書籍化決定】転生処理ミスで貧乏貴族にされたけど、錬金術で無双します!~もふもふとお金を稼いで家を救います~  作者: 空月そらら
第一章

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第52話 特別入試、三つの試練

決戦の日の朝。

 

お屋敷の玄関には、私の家族全員が揃ってくれていた。

 

皆、少しだけ緊張した面持ちで、私を見送ってくれる。

 

「準備は万端ですわね、エリス様」

 

ミレイユが、私の服装の最終チェックをしてくれた。

 

今日の日のために、お母様が仕立ててくれた、一番上等なワンピースだ。

 

胸には、アーベント家のささやかな紋章が、刺繍されている。

 

「お姉ちゃま! がんばってね!」

 

リアが、私の腰にぎゅっと抱きついてきた。

 

その小さな体の温もりが、私の不安を、少しだけ溶かしてくれる。

 

ああ、なんて可愛いんだろう。

 

「うん。頑張ってくるわ」

 

私がそう返事をすると、私の足元で、ポムが「きゃん!」と一声、力強く鳴いた。

 

今日の試験に、ポムは連れていけない。

 

あくまで、自分の錬金術を見せる試験だからだ。

 

「エリス」

 

お母様が、私の肩に、そっと手を置いた。

 

「あなたなら大丈夫。自信を持って、胸を張っていらっしゃい」

 

「ああ」

 

お父様も、力強く頷く。

 

「アーベント家の誇りを胸に、堂々と挑んでこい」

 

お母様の優しい言葉と、お父様の力強い激励。

 

それが、私の心を、温かい勇気で満たしてくれた。

 

私が自分で選んだ、修羅の道。

 

だけど、実力で掴み取れる未来があるなら、私は行ってみたい。

 

その時だった。

 

お屋敷の前に一台の壮麗な馬車が、静かに停まる。

 

黒塗りの車体には、ラスール公爵家の紋章が金色に輝いていた。

 

扉が開き、現れたのは、あの執事長のゼドリック。

 

「エリス様。お待たせいたしました」

 

ゼドリックさんは恭しく一礼すると、馬車の扉を開けてくれる。

 

その内部を見て、私は思わず息を呑んだ。

 

座席は、ふかふかの赤いベルベット張り。

 

窓には、美しいレースのカーテン。

 

今まで私が乗っていた古びた辻馬車とは、何もかもが、違っていた。

 

私は、もう一度家族の顔を見つめる。

 

みんな、笑顔で手を振ってくれているようだ。

 

私はその笑顔を胸に、馬車の中へと、足を踏み入れた。

 

やがて、馬車の車輪が滑るように動き出す。

 

窓の外を見慣れた景色が、流れていった。

 

私は、ふと前世のことを思い出す。

 

そういえば、大学受験の時も、こんな風に緊張していたな。

 

あの時は、必死で勉強した。

 

だけど、一つだけ、決定的に違うことがある。

 

あの時は、たった一人だった。

 

でも、今の私には応援してくれる温かい家族がいる。

 

それだけで、私は何倍も強くなれる気がした。

 

私は、挑戦することが好きなのだろう。

 

そんな自分の新しい一面に気づきながら、朝日の中を、まっすぐに進んでいくのだった。


 ◇ ◇ ◇


「着きました、エリス様」


ゼドリックさんの静かな声。

 

私は馬車の窓から、外の景色を眺めた。

 

そこに広がっていたのは、巨大な、純白の学び舎。

 

私が前世で通っていた大学とは、比べものにならないくらい、壮大だった。


私は大きく目を見開く。

 

ゼドリックさんが素早く馬車を停め、扉を開けてエスコートしてくれた。

 

馬車を降りて、地に足を着ける。

 

豊かな自然に囲まれた美しい学園。


なんて綺麗なのだろう。


「ゼドリックさん、ありがとうございます」

 

「いえ。では私はここで待機しております。エリス様、どうか頑張ってください」

 

「うん、頑張ってくるわ」


そう言って、私は一人、学園の門へと歩を進めていく。

 

今日は特別入試の日だからか、学生たちの姿は見当たらない。

 

静かで、どこか張り詰めた空気が、漂っていた。


私は奥に進んでいく。


そこには巨大な柱が何本もそびえ立っていた。

 

そして、その近くに、教師らしき人たちが立っているのが見える。

 

私は少し緊張しながら、その受付へと向かった。


「失礼します。本日、特別推薦入学試験を受けにまいりました、エリス・フォン・アーベントです」


私がそう名乗ると、受付にいた、厳格そうな雰囲気の女性教師が、手元のリストに目を落とした。

 

彼女の名前は、リディア先生というらしい。


「アーベント家令嬢、エリス様ですね。推薦者はラスール公爵オルダス様。確認いたしました」


リディア先生は、事務的な口調でそう言うと、一枚の羊皮紙を私に手渡した。


「こちらが、本日の試験に関する案内書です。よくお読みになって、第一試験会場である『第一号室』へ、時間までにお向かいください」

 

「ありがとうございます」


私はそれらを受け取ると、深々と一礼した。

 

そして、案内された方向へと、歩き始める。

 

長い、長い廊下。

 

コツ、コツ、と私の小さな足音だけが、静かに響いていた。


歩きながら、私は渡された案内書に目を通す。

 

そこに書かれていたのは、あまりにも過酷な、試験内容だった。

 

まず、今回の特別入試では、三つの試験が課せられるらしい。


一つ目は、専門技能披露。

 

受験生が、それぞれ最も得意とするスキルを、試験官たちの前で披露する。

 

私なら錬金術。


他の人なら魔法や剣技、といったところだろう。


二つ目は、魔力測定。

 

ただ魔力量が多ければ良いわけではなく、平均値を越えることが、最低条件。


そして、最後は、実戦総合演習。

 

受験生は、特殊な魔道具によって、学園が管理する広大な森に転移させられる。

 

そして、小さな水晶玉を、全て見つけ出し、破壊すること。

 

体力と、判断力。


その全てが、試される。


「……思ったより、本格的な試験みたい」


私は、ごくりと喉を鳴らす。

 

だけど、不思議と恐怖はなかった。

 

むしろ、武者震いがするくらいだ。

 

やってやる。

 

絶対に、合格してみせる。


私は、案内書の地図を頼りに、長い廊下を進んでいく。

 

やがて、私の目の前に、ひときわ大きく、重厚な扉が現れた。

 

扉の上には、「第一号室」と、プレートが掲げられている。


ここが、私の運命を決める、最初の舞台。

 

私は一度だけ、大きく深呼吸をする。

 

そして、その扉へと向かうのだった。

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