第48話 真実の告白
「「「な、なんと!!?」」」
オルダス公爵の、驚愕の声。
他のメイドたちや、執事長は、あまりの衝撃に、目をくるくると、回している。
私は、顔の表情を必死に無のまま、保っていた。
だけど、額からは、滝のような冷や汗が、だらだらと、流れ落ちていく。
ポムーーーーーーっ!!
なんてことしてくれてるのよーーーーーっ!?
まさか、こんなストレートに、私を売るなんて!
私が次のどんな言い訳をすればいいのか、頭をフル回転させていると、静寂を破って、ドルガンさんの、楽しそうな声が、響いた。
「――やはりな」
彼は、全てをお見通しだったという顔で、頷いた。
「オルダス公爵。どうやら、このポーションを作った、正体不明の師匠とやらは、最初から、存在せんようだ。この小娘の、苦し紛れの、大嘘だった、というわけだ」
「なっ……! ドルガン殿、それは、まことか!?」
ドルガンさんは、私の頭を、わしわしと、撫でながら、続ける。
「この小娘は、俺のところに、以前から自作の回復薬を売りに来ていた。その品質は、そこらの錬金術師が作るものとは比べ物にならん代物だ。そして、先ほどの、あのご令息の病状の説明。あれは、誰かから伝え聞いた言葉ではない。自らの頭で、理論を構築し、完全に理解した者の言葉だ」
そして、ドルガンさんは、私の膝の上の、ポムを見下ろした。
「それに、この不思議な獣……ポム、と言ったか。こいつは、ただの魔物ではない。この小娘の、規格外の錬金を助ける、何か、特別な力を持った、相棒なのだろう。……違うか? エリス」
私の策は、全て、この大きなドワーフにお見通しだったというわけだ。
もはや、隠し通すことは、できない。
私は、観念して、こくり、と、小さく頷いた。
その場の空気が凍り付く。
目の前の、たった八歳の小さな少女が、この国の誰にもできなかった、奇跡を成し遂げた。
その、信じがたい事実への畏怖とそして、感謝。
「……そうか」
公爵は、ゆっくりと席を立つと、私の目の前にやってきた。
そして、私の小さな手を、その、大きな温かい手で、そっと握りしめた。
「……君が、君が、たった一人で、ルートスを……」
その声は、震えていた。
驚きも、怒りも、全てを洗い流すほどの、深い、深い、感謝。
「……ありがとう。エリス嬢。君こそが、我が家の、真の、恩人だ」
もう、嘘をつく必要はなかった。
私は、改めて自分の言葉で、錬金術についてそして、ルートス令息の病の、本当の原因について説明した。
私の話を、公爵は、一言も聞き漏らすまいというように、真剣な表情で、聞いてくれた。
説明が終わると、公爵は頷いた。
「……なるほどな。全て、理解した。エリス嬢。改めて、君に、頼みがある。息子の体は、まだ、完全に回復したわけではない。どうか、これからもこの屋敷に通い、彼の様子を見てもらえんか?」
私が頷くと、公爵は、ほっとしたように息をついた。
そして、部屋にいる、他の者たちに向かって、低い声で命じる。
「――皆、この部屋から、出ていくように。エリス嬢と儂とで、少し、込み入った話を、せねばならん」
その言葉に、ドルガンさん、そして執事長のゼドリックさんや、メイドたちは、一礼して静かに部屋から退出していった。
ドルガンさんは、「やれやれ」と、肩をすくめている。
部屋には、私と、公爵様、そして、私の膝の上で何食わぬ顔で毛づくろいをしている、ポムだけが、残された。
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