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【書籍化決定】転生処理ミスで貧乏貴族にされたけど、錬金術で無双します!~もふもふとお金を稼いで家を救います~  作者: 空月そらら
第一章

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第43話 ギルドマスターの決断

夜明け前の、冷たい空気。

 

私はポーチに収められた、たった一本の小瓶を胸に抱き、相棒のポムと共に冒険者ギルドへとひた走っていた。


「はぁ、はぁっ……! 早く、行かないと……!」


石畳を蹴る小さな足が、もつれそうになる。

 

息が切れ、心臓が張り裂けそうなくらい痛い。

 

だけど、止まるわけにはいかなかった。

 

私の手の中にあるこの薬が、消えかけている命を救う、最後の希望かもしれないのだから。


私の隣を、ポムが息一つ切らさずに並走してくれている。

 

その小さな体躯からは想像もつかないほどの身体能力。

 

私が追いつけるように、速度を合わせてくれているのが分かった。


やがて、見慣れた剣と盾の紋章が見えてくる。

 

まだ朝日も昇らない早朝だというのに、ギルドの扉には、明かりが灯っていた。


私は、勢いよくその扉を押し開ける。

 

がらんとしたホールには、夜通し酒を飲んでいたのであろう、数人の冒険者がテーブルに突っ伏しているだけ。

 

その静寂の中に、私の荒い息遣いだけが響いた。


カウンターの向こうで、書類整理をしていたミミさんが、私の姿を見て驚きに目を見開いた。


「エリスちゃん!? それにポムちゃんまで……! こんな朝早くに、どうしたのよ!?」


ミミさんは、私の汗だくの姿と、ただならぬ雰囲気に戸惑い、カウンターから出てこようとする。

 

だけど、私には彼女に説明している時間すら惜しかった。


「ギルドマスターを! ドルガンさんを呼んでください!」


私は叫ぶように、そう言った。


「ルートス令息を救うためのポーションが、できたと!」


私の大声が、静かなホールにこだまする。


その言葉が終わるか終わらないかのうちに、奥の執務室の扉が、凄まじい音を立てて、勢いよく開かれた。


「――できたのか、小娘!!」


現れたのは、寝間着代わりのシャツ一枚という姿の、ギルドマスターのドルガンさんだった。

 

その手には、まだ読みかけだったであろう報告書が握られている。

 

どうやら、彼もまたこの国の危機に、一睡もせずに情報を集めていたらしい。


ドルガンさんは、ドカドカと地響きのような足音を立てて、私の元へと駆け寄ってきた。

 

その鬼気迫る表情に、私はゴクリと喉を鳴らす。


「こ、これです。師匠が……昨夜、徹夜で、作ってくれました」


 私はポーチから、あのオーロラ色に輝く《魔力調律薬》を取り出し、震える手で、彼に差し出した。

 

 小さな小瓶が、ギルドのランプの光を受けて、まるで自ら発光しているかのように、神秘的な輝きを放つ。


ドルガンさんは、それを奪い取るように受け取ると、すぐに鑑定用のモノクルを目に装着し、食い入るように、その中身を凝視した。

 

そして、次の瞬間。

 

彼の額に、玉のような汗が、ぶわりと浮かび上がった。


「……こいつは……この前のポーションとは、比べ物にならん……。なんだ、この魔力は……!? まるで、生命そのものを、小瓶に凝縮したかのようだ……!」


ドルガンさんは、驚愕に声を震わせ、それと同時に、決意を固めたように、私の目をまっすぐに射抜いた。


「この薬の効果は、一体何なのだ? ただの回復薬とは、明らかに次元が違うぞ」

 

「はい。師匠が言うには、これは、三つの異なる奇跡の素材を、一つの液体に調和させた、特別なポーション、だと」

 

「み、三つだと……!? 馬鹿な、相反する性質の素材を、三つもだと……!? ……さ、流石は、お前の師匠だ……!」


ドルガンさんは、ぶるりと一度、体を震わせた。

 

そして、すぐに向き直る。


「よし、一刻の猶予もない! 今すぐ、これをラスール公爵邸に届けるぞ!」

 

「はい! お願いします!」


私が力強く頷くと、ドルガンさんは、なぜか疑問符を浮かべた顔で、私を見る。


「何を言っている。この薬の効果を、誰が公爵閣下に説明するのだ。作った本人が姿を見せん以上、その弟子である、お前がついてくるのが筋だろうが」

 

「わ、私も、ですか!?」


まあ、それもそうだろう。

 

師匠は架空の存在。


何かあった時の責任は、すべて運び屋である私が、負わなければならないのだから。


「ちょ、ちょっと待ってください、ギルドマスター!」


今まで、呆然と成り行きを見守っていたミミさんが、ようやく我に返って、慌てたように声を上げた。


「一体、どうなっているんですか!? もしかして、そのポ-ションが、本当に、あのご令息に効くとでも……!?」

 

「ああ。この国の、最後の希望かもしれん」


ドルガンさんがそう言うと、彼はポーションを衝撃から守るための、頑丈な小さな木箱に収め、それを私の手にぐいっと握らせた。


「いいか、小娘。絶対に、これを落とすなよ」


そして、次の瞬間。

 

私の体は、ふわりと、宙に浮いた。


「わあ!?」


ドルガンさんが、まるで米俵でも担ぐかのように、私を軽々とお姫様だっこしたのだ。

 

あまりにも突然の出来事に、私の頭は、真っ白になる。


「一刻を争う! 公爵家から、正式な迎えの馬車が来るのを待っていては、手遅れになるやもしれん! 強行だ!」


ドルガンさんは、そう雄叫びを上げると、私の返事も待たずに、ギルドの扉へと向かって、走り出した。


「そこの犬っころも、遅れずについてこい!」

 

「きゃん!」


ポムも、心得たとばかりに、一声鳴いて、その後に続く。

 

後ろで、ミミさんが「ギルドマスター!? 営業時間が……!」と何か叫んでいたけれど、その声は、あっという間に、遠ざかっていった。

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