表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】転生処理ミスで貧乏貴族にされたけど、錬金術で無双します!~もふもふとお金を稼いで家を救います~  作者: 空月そらら
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/73

第12話 錬金術の道を歩み出す

「え? なあに?」

 

「ラスール公爵家のご令息、ルートス様のことよ。原因不明の、重い病に倒れられたんですって」

 

「ええっ!? あの、ルートス様が!? 嘘でしょ!?」


 ラスール公爵家。

 

 その名前に、私の心臓が、どくん、と大きく跳ねた。

 

 このアステル王国に二つある、最高位の公爵家。

 

 一つは、私の家を陥れた、憎きアルバ公爵家。

 

 そして、もう一つが、このラスール公爵家だ。

 

 アルバ公爵家とは、長年、権力を二分してきた、いわばライバルのような家系。


 そのご子息が、病気……?


 なんだか、妙な胸騒ぎがする。


 少女たちのひそひそ話は、まだ続いていた。


「なんでも、どんな名医にも、神官様にも、原因が分からないらしいの。アルバ公爵家が裏で何か仕掛けた、なんて黒い噂まで流れてるくらいよ」

 

「こ、怖い……。でも、私たちで、何かできないかしら?錬金術で、病気を治す薬とか……」

 

「無理よ! 私たちなんて、まだ基礎を学んでるだけじゃない。そんなこと、できるわけないわ」


 ……そうだろうな。

 

 私にだって、関係のない話だ。

 

 公爵家のご子息の病気なんて、雲の上の出来事。

 

 きっと、そのうち、大陸一の名医か、高名な聖女様でも現れて、あっさりと治してしまうに違いない。


 私は、自分にそう言い聞かせた。

 

 今は、他人の心配をしている場合じゃない。

 

 自分の足元を、固めるのが先だ。


 私は再び本に視線を落とし、その内容を頭に叩き込む。

 

 やる気が、みなぎってきた。

 

 早くお家に帰って、この本に書かれていることを、試してみたい。


 私は、意を決して椅子から立ち上がった。

 

 銅貨四十枚の錬金術の入門書を、小脇に抱える。

 

 そして、次に、薬草の本が置いてあるコーナーへと向かった。


 薬草図鑑は、どれも高価なものばかりだった。

 

 分厚くて、精密な挿絵が入った本格的なものは、銀貨どころか、金貨で取引されている。

 

 今の私には、到底手が出ない。


 私は、棚の隅にあった、一番安くて、一番薄い本を手に取った。

 

『森の恵み入門 ~身近な薬草50選~』

 

 値段は、銅貨十枚。

 

 内容は、リリ草のような、ありふれた薬草ばかりだったけど、今の私には、これで十分。

 

 ここから、一歩ずつ、始めればいい。


 私は、二冊の本を抱えて、レジカウンターへと向かった。

 

 厳めしい顔をした、老人の店主が、私を見て少しだけ目を見開く。


「……ほう。嬢ちゃん、錬金術と薬学かい。また、渋いところを……」

 

「はい。勉強したいので」

 

「そうかい。まあ、頑張りな」


 店主は、ぶっきらぼうにそう言うと、銅貨を五十枚、受け取った。

 

 ずしりと重かった巾着袋が、一気に軽くなる。

 

 だけど、私の心は、むしろ、翼が生えたかのように軽やかだった。


 店を出ると、外はもう、オレンジ色の夕日に染まり始めていた。

 

 私は、手に入れた二冊の宝物を、ぎゅっと胸に抱きしめる。

 

 この本が、私を、そして家族を、救ってくれる。

 

 そんな確信に満ちた足取りで、私はルンルンと、我が家へと続く道を、駆け出す。

 

 これが、私の長い錬金術師への道の、本当の始まり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ