02話 道場
初めての作品です
5話まで一気に投稿します
改善点があったら全部気兼ねなく教えてください
それを踏まえて6話以降をより良くして出します
よろしくお願いします
その後、両親と話し合った結果、俺は道場に通うことになった。
理由は単純。何も分からず突き進むより、プロに教えてもらった方が明らかに良い。
父の知り合いである永瀬さんがこの道のプロと言われたので、経営している道場に、しばらくお世話になることに決まり、今、そこへと向かっている。
ガチャ。
扉を開けると、そこには本物の“道場”があった。いや、道場じゃなきゃおかしいんだが……剣道場、柔道場、弓道場……それらを全部足して三で割らなかったような広い場所だった。
ただ、一つだけ妙なことがあった。
───誰もいない。弟子も、師匠も。
「すみませーん、永瀬さんはいらっしゃいますかー?」
問いかけた声は、見事なエコーとなって広い道場に吸い込まれていく。5分経ち、6分経っても、人の気配は一つも感じない。
(……え?ここ、合ってるよな?)
不安になり、もう一度叫んだ。
「永瀬さーん!」
「うるさいな……聞こえてるよ、後ろにいただろ」
「うわっ!?」
背後からぬるっと現れたのは──寝起き全開の人物。
ぼさぼさの髪に、気だるげな表情。そして信じられないほど細い身体。
「……返事くらい、してくださいよ……」
「寝起きなんだ。耳元で叫ぶなって……」
どうやらわざと驚かせたわけではなく、本当に今起きたばかりらしい。
が、それ以上に驚いたのは──女性だったことだ。
しかも、華奢すぎる。いや、細いどころか、健康診断で必ず医者に呼び止められるレベル。
「えーっと……妹さん、ですか?」
俺が半信半疑で尋ねると、彼女はぼんやりした目をこちらに向けて、さらりと言った。
「いや、お前の父、宮田政憲の知り合いだ。そして、ここの道場の主だよ」
「え、マジで……」
冗談かと思ったが、彼女は真顔だった。
男女差別をするつもりはないが、想像していた「道場主」のイメージとは、あまりにもかけ離れていた。
「なんだ、私で驚いたか?この華奢な私で?」
……正直、驚いた。この道のプロと聞いていたが、それすらも怪しい。この俺ですら勝てる気しかしない。
「じゃあ───一本取りでもするか?先に倒れたら負け。これだったら信じられるだろ?」
寝起きの華奢な女性 vs 超元気な男子高校生。
負ける要素など一つもない。……と、このときは本気で思っていた。
「わかりまし──」
「よし。スタート!」
言い終わる前に、世界がひっくり返った。
永瀬さんの姿がかき消え、気づけば天井が視界いっぱいに広がっていたのだ。
──そう。一瞬で負けたのだ。
そして、体力テストで万年Eだったことを思い出す。
「大丈夫か?」
永瀬さんが覗き込んでくる。その瞳に、わずかな笑みが浮かんでいた。
「……信じてくれたか?」
「……はい」
「それならよかった。これからよろしくな、誠」
「よろしくお願いします……永瀬さん」
彼女は軽く笑いながら続ける。
「タメ口でいいよ。どうせ数ヶ月したら呼び捨てするだろうし」
「……わかった、師匠」
なるほど、そういう感じか。思ったよりフレンドリーだな。
◆◆◆◆◆
しばらくして、俺は負け試合の余韻を引きずりながら、散らかった荷物を片付けていた。
道場の静けさと、さっきまでの衝撃の落差がえげつない。
「……誠」
不意に、師匠が声をかけてきた。
さっきまで眠たげだった表情とは違い、少しだけ真剣な声。
「お前は、何になりたいんだ?」
「……何になりたいって?」
「そう。将来の夢だよ。冒険者でも、教師でも、なんでもいい」
俺は少し考えて、口を開いた。
「うーん……トップかな?」
「トップ? 大学の?それは難しいぞ?」
「いや、世界で」
「……世界?」
師匠の目が、わずかに細くなった。
その瞬間、背中に風を感じた──かと思った次の瞬間。
「うわっ───!?」
俺の身体は宙を舞い、ドンッと音を立てて床に落ちた。
さっきよりも、ちょっとだけ丁寧な投げ技だった。
師匠は笑って言う。
「そしたら予定は変更だ。今日から“世界を獲る”ためのメニューにしよう」
……あ、どうやらパンドラの箱を開けちゃったみたいだ。
◆◆◆◆◆
「ほら、もっと走れ」
外周2キロを10周、合計20キロ。
この無茶なトレーニングを考えたのは、もちろん俺の師匠こと永瀬さん。
そして、そのメニューに絶対服従するかのように走らされているのが──宮田誠、そう、俺である。死にかけながら。
「む、無茶です……」
「何言ってんだ。まだ始まったばかりだろ。そんなんじゃ世界は遠いぞ?」
(......最初から世界を狙うわけないだろ)
師匠は散歩中の犬に声をかけるみたいに、さらりと言う。
……いや、俺は犬じゃなくて死にかけの高校生なんだが?
「ぜぇ……はぁ……もう……無理……です……」
「まだ3周目だぞ?言っとくが、まだ3キロしか走ってない」
──殺す気か?
正直、メニューもきついが、それ以上に俺自身が貧弱すぎるのだ。
「どうか……今日はこれで……」
「……しょうがない。今日はこれで終わりにするか」
ようやく解放され、道場に戻ったところで─。
「誠、お前は貧弱すぎる」
まさか。自分より細いやつに言われるほどムカつく言葉はない。……ただ、師匠ならしゃあない。そうやって落ち着かせるしかない。
「わかりました。では具体的にどうすれば良いですか?」
「物分かりが早いね。じゃあ、明日からのメニュー。朝に3キロ走って、腹筋50回、腕立て30回、スクワット5分間。これが基本」
──死んだな、俺。
「……それって、死ぬやつじゃないですか?」
「1ヶ月したら慣れると思うよ?」
このメニューができる気がしない……。
「まあ、これができるようになると、モテるよ?」
「マジすか!?外周行ってきます!」
青春を捨てたことで女子と話す機会がなく、女子を神格化している俺は再び飛び出した。
──そして、30分後。
「……ただいま……戻りました……」
全身汗まみれで這いつくばる俺を見て、師匠はただ一言。
「……根性だけはあるな」
まだまだ先は長そうだ
最後まで読んでくれてありがとね!
ギャグ多めで楽しく書きたいと思います。
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