第1章 孤独な二人の出会い part.1
過去のトラウマから心を閉ざしてしまった真奈による、感動学園ストーリー
桜井真奈は、静かに教室の片隅に座っていた。彼女の長い黒髪は、肩まで無造作に垂れ、誰も彼女に話しかけようとはしない。クラスメイトたちが楽しそうに話し合っている中、真奈はひたすらノートに何かを書き込んでいた。
彼女の耳には、遠い過去の声がこだましていた。小学校の頃、特徴的な声をからかわれたあの記憶。彼女の心に深い傷を残したその経験が、彼女の口を閉ざさせるきっかけとなった。そして、親を突然失うという悲劇が追い打ちをかけた。以来、彼女は自らの声を封じ込め、誰とも話さず、感情を表に出さなくなった。
一方で、西島翔太は、教室の中央で明るく笑っていた。彼の笑顔は誰にでも好かれ、自然と人々を引き寄せる魅力があった。彼はクラスのムードメーカーであり、その明るい性格は誰からも愛されていた。
授業が始まると、クラスメイトたちが次々に自己紹介を始めた。真奈は、自分の番が来ることを恐れていた。しかし、やがて彼女の番が回ってきた。
「桜井真奈です……」と、口元だけが小さく動く。か細い声が教室にかすかに響いた。
誰もが一瞬、静まり返った。そして、すぐに誰かが小さく「よろしく」とつぶやき、教室は再びざわめきを取り戻した。真奈はそのまま、下を向いたまま黙り込んでしまった。
そのとき、翔太が彼女に向かって微笑みかけた。その笑顔は真奈にとって、少しだけ違和感を覚えるほど明るく感じられた。彼の視線を感じた瞬間、真奈は再び心を閉ざすようにうつむいた。
翔太はそれ以上何も言わず、ただ真奈を見つめた。彼女の様子が気になりながらも、彼自身が心の奥に何かを隠していることを感じさせないように、再びクラスメイトと笑い合った。
授業が進む中、真奈は周囲の雑音を聞き流しながら、再びノートにペンを走らせた。誰とも関わらず、誰にも見つからず、ただ静かに過ごすことを彼女は望んでいた。
to be continued...