072〜勇者と神
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※多少の閲覧注意表現あり。
「痛い痛い痛いっ!!」
身体に無数の孔が空いたアルドミアは顔を抑えて、痛みに悶え叫んでいる。
「うぁ………」
カイトは両腕を失い、立ち上がることすら出来ず横たわっている。
「いいザマだなカイト」
「ク……クロ…ム……俺が…悪…かった……頼む……死にた…く…ない……」
失血も相当しているから、意識が大分薄くなってきているようだ。
そんなカイトの口から出た命乞いは酷く耳障りだった。
「カイト、お前は同じ事を言った人々の言葉を一切聞かず、暴力を振りかざしてきた。その力で誰かを助けたか?その手でこぼれ落ちる命を掬ったか?……答えは否だ。お前の手で奪ってきた命は数知れない。そんな人達がお前を許さないだろうし、何よりオレがお前を許さない。そのままゆっくりと、命が終わるのを感じていろ。じゃあな、カイト・シラサギ」
カイトの目に映るように踵を返す。
「ク…ロ…ム………待っ……て…………」
か細い声がオレを呼ぶが一瞥もくれてやらない。
勇者カイト、お前は絶望の中死ね。
そしてもう一人の所へ足を向ける。
オレの足音に反応する女神アルドミア。
「………カイト?早く私を助けなさい!!」
アルドミアは片目を穿ちぬかれている。
探知系の魔術も疎かにしてきたのだろう。
近くにいるのが俺だと分かっていない。
「カイトはもう死ぬ。あいつはオレに命乞いをしてきたがな。」
そこでオレだと分かり、振り向いたアルドミア。
「お前!!クロム!!人間がこんなことをして許されると思って!?」
オレが付けた傷すら治せないのにこんなにも強気でいられるとはな。
直ぐにでも滅してやりたいが、コイツには聞かなきゃならないことがある。
「一度だけ問う。シェリアを元に戻す方法は?」
「………アハハ!!そんなもの出来るわけ無いじゃない!!反転の術式は神の術式。過去の神の遺産を使ったのよ?戻し方なんて知るわけないじゃない。そもそもあの子はアンタがコロしムグッ!!」
「もういい」
オレはアルドミアの口に小さな球体を放り込み、口を塞ぐようにその顔を掴んだ。
「ン!!ンー!!!」
何か叫んでいるが気にしない。
「見たところ神と言っても、人の身体と大差無いようだ。お前に今飲み込ませたのは毒の丸薬。まず身体が麻痺したように動かなくなり、身体の先端から痛みが徐々に全身へと広がっていく。」
この説明の時点でアルドミアは涙を浮かべて首を必死に横へ振ろうとしている。
オレは続ける。
「痛みの中、気を失っても夢で幻覚がお前を襲う。今までお前が虐げてきた者達から、お前が一方的に搾取してきた者達から全てを奪われるそんな夢だ。やがて、身体の感覚が失われていき………」
オレはアルドミアの胸のあたりを指差し、
「心臓が止まる」
アルドミアは片目を目一杯開き、全身を震わせてボロボロと涙を流す。
もう身体の麻痺が始まっているのだろう。
手足を動かす様子もない。
「死にたくない……ヤダヤダヤダ!!」
口だけは動くから騒がしくなる。
「助けてっ!!アルヴァン様!!」
ここはオレの創り出した固有結界の中だ。
助けを求めても無駄だ。
だが、アルヴァンと言う名は何処かで聞いたことがある。
いつだ?思い出せ。
痛みが始まったアルドミアが、叫びだしたのを横目に見て記憶の海を潜る。
過去……レナ様に出会う前……もっと昔だ。
まだ力をもらう前のオレの記憶はかなり薄くなっている。
「あぁ、アルドミアはもうダメっぽいね」
「っ!?」
意識が一瞬で現実に引き戻される。
「カイト君も……もう死んでるね!」
固有結界の中に侵入者だと!?
「お前は誰だ!?どうやってここに入ってきた!!」
オレの中では既にコイツは敵性認定。
オレと同じような黒い髪で長髪。
切れ長の目、瞳は金色。
背も高いようだ。
全身黒一色の服装か。
冥迴剣を手に持ち警戒する。
「さっきアルドミアが言っていただろう?アルヴァン様って。そこまで私の名は知られていないのかな?アルヴァン・アトモス・ディオール、この世界においての初代勇者であり……この世界の神だ。」
そう言ったアルヴァンは恭しく頭を下げた。
思い出した!!
はるか昔のおとぎ話の勇者。
アルヴァン・アトモス・ディオール。
通称、『幻影の支配者』だ。
カイトとアルドミアへの復讐は完了しました。
そして、あの方降臨。
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