006〜賢者と知人
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今回は大体ナミトの話です。
「なぁ、あんた。さっき言ってた魔法、ホントに使えんのかよ?」
待ち時間、ナミトに突然話しかけられた。
「あぁ、もちろんだ。さっきの魔法は最小限まで威力を落として発動しようと思ってたんだけどな。」
恐らくタンバートなら耐えられたとは思う。
「いやいや……それでも多分あのオッサン死んでたよ」
何だと!?
魔王軍の幹部ともなれば、ガトリングバースト最大級の威力でも傷一つつかないぞ?
「あんたが驚愕していることに、俺は驚いているよ。あの魔法はあの万能賢者様が作り出した魔法だろ?この世に使える人がそんなにいるのか?」
そういうことか。
俺が作ったと思われているのか。
「いや、あの二つの魔法は厳密には賢者様が作ったものではない。過去の文献の情報を纏めて、復活させた過去の魔法だったはずだ。そしてその魔法を使っていたのは、英雄レナ・メシア様だ。魔力の量もそれなりに必要だが、順を追って演算すれば発動可能な魔法だよ。」
レナ様の魔法に比べたら、俺が作った魔法など児戯に等しい。
「あんた、ただの魔導師じゃねぇな。………賢者様が行方不明になった今、あんたのような男はあの勇者の目に入らないようにしたほうがいいぜ」
ナミトは小声で俺にそう言った。
……ナミト、こいつは何かを知っている人物のようだ。
街中で聞いたことよりも精度の高い情報を得られそうだ。
「勇者達、何かあったのか?賢者様が裏切ったっていう話は街で聞いたんだがな」
実際に裏切ったのは勇者の方だ。
そして勇者に敬称を付けず、賢者には付けるナミトの話し方も気になる。
「あのお方が裏切るわけがない。いや、むしろ裏切ったら勇者パーティーは全滅してたはずだ。それだけの力を持っていたし、弱きを助け強きを挫くっていう人ですね。そして闇魔法においてあの人の右に出る者はいない……と思ってました」
こいつ、俺の事を良く知ってる奴だったか。
そして俺がやらかしたというわけだ。
「ナミトは賢者様と面識が…?」
一応聞いておこう。
ガッツリ関わってて忘れてる人だったら悪い。
「賢者様って、南の方のフルール地方の公爵様お抱え魔導師なんだよな。で、俺はその公爵様のお抱え騎士団長ナギ・ウェイドの息子。ナミト・ウェイドだ。だから親父と一緒に何度か顔を合わせたことはある。」
………ガッツリ知ってる奴の息子だった。
何度か会ったことがある程度だから分からなかったな。
「俺、剣だけじゃ行き詰まってきてて、ある程度の魔法力もあるから魔王戦に参加した賢者様に弟子入りしようと思ってさ。親父に無断でここまで来た。」
おい、ナギのやつ相当慌ててるんじゃないか?
「はぁ…お前怒られんじゃないのか?まぁ、いいか。ナミト、この後時間取れるか?………賢者様について話がある。」
「っ!?やっぱり何か知ってるのか……」
味方は多いほうがいい。
俺は無言で頷く。
ナミトにはある程度のことは教えておこう。
その後受付嬢に再び呼ばれギルドカードを受け取る。
「シルバさん、タンバートさんがとんでもないやつが来たって騒いでましたけど、何をやったんですか?」
カードを渡される時に呆れた顔でそんなことを言っていたので、「得意な魔法を二つ見せようとしただけですよ」と答えておいた。
後ろでナミトが、その二つが規格外過ぎたんだよと呟いていた。
もう少し自重したほうがいいのかもしれない、と感じたのは遅かったかもしれない。
騎士団長ナギと賢者は年齢こそ離れてはいるものの友人のような関係です。




