063〜自らを捨てる
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バルキスは言葉を紡ぎ出す。
「落日の流星、終末の綺羅星、束ねろ、纏めろ、紡いで、廻れ……『円環破壊震』」
長い詠唱と共に放たれたのは、渦巻く光の円盤だった。
それなりの速度で俺に飛んでくるソレはどのような効果を持つか分からない。
ただ、あれに触れてはマズイと本能が叫ぶ。
かと言って、あれが消えずに一直線に進めば南部軍の陣まで届くかもしれない。
一か八か消し飛ばしてみよう。
流水十剣の一つとクロム装備、風斬の特殊能力を組み合わせた新たな剣技を放つ……
「飛斬流砂!!」
本来は脱力状態から、限界速度で剣を振るい相手を刻む流砂という技だが、クロム装備で更にブーストを掛けて加速。
そして風斬の飛ぶ斬撃を放つ。
俺は、一瞬で十以上の斬撃を飛ばすその技を……
「オラァァァァァァァ!!」
数秒に渡って出し続ける。
斬撃は光の円盤に当たり弾けて消えていく。
円盤もそれに合わせて小さくなっていき、消滅した。
「ウソでしょ!?」
俺の出した斬撃はまだ終わっていない。
魔法を繰り出して無防備に見物していたバルキスを襲う。
「マズっ!!」
「ヒャハハハ!!」
バルキスの前にジェイルが飛び出し、その全てを受ける。
そして俺の斬撃が生み出した砂塵に紛れてエリーが超スピードで接近してきた。
「ボロボロで、死んで」
俺の顔目掛けてその手を伸ばしてくる。
腐蝕と言っていたな。
俺はそれを短距離転移で躱す。
触れたらそこから腐らせるような現象を生み出すのだろう。
ジェイルはまだ復活していない。
そして俺はバルキスの後ろにいる。
「ボク狙いかよ!?」
その首を狙ったが、俺の刀は魔力のシールドに阻まれ減速し寸前で回避された。
「やらせねぇよ!」
いや、ジェイルの手がバルキスを後ろに引っ張ったのか。
まだ再生が終わっていない手がバルキスの首元を掴んでいる。
「落ちる光の柱、穿て『光槍』」
バルキスは後方へ飛びながら、こちらへ魔法を放つ。
クロムはあんな詠唱をしないで魔法を放つが、あの方が威力があるのだろうか?
飛んできた光の槍はそこまでの力は無さそうだったので斬り飛ばす。
「アイツ魔法斬ったんだけど!?」
イチイチ騒がしいやつだな。
俺は再び、短距離転移でバルキスの後ろへ。
「だからやらせねぇよっ!!ってうお!?」
即座にカバーに入ったジェイルへ俺は肉迫する。
「お前はバラバラにするよりもこうした方が良さそうだ。」
その土手っ腹に思い切り蹴りを放つ。
「てめえっ!!まさか!?」
衝撃の瞬間に、身体能力のブーストをかけてジェイルを遥か遠くに蹴っ飛ばした。
「うぉぉぉぉ!!?コノヤロオオォォォ!!」
叫びながら飛んでいくジェイル。
「しばらく戻ってこなくていいぞ」
そんなことをしている間にバルキスは離れ、またエリーが近くまで来ている。
そこに風を切る音がした。
身を捻りその場からズレると、そこには槍を持ったジェイルが飛んで来ていた。
それは俺が居た位置に槍を突き刺す瞬間だった。
どうやって戻ってきたんだ!?
「咄嗟に自分の首を千切って槍と一緒に投げたんだよ!で、再生して今ココだ。」
「なんてやつだ………」
「ジェイルってホントにイカれてるよねー」
「死んでも、治らない」
バルキスもエリーも近くまで来ている。
しまった……囲まれたか……。
「さて、騎士団長サン。ここまでだよ」
三人は俺を囲むように三方に立つ。
一人一人の練度は低い。
いつの間にか連携が取れ始めたのが問題だな。
一番面倒なジェイルを離脱させたと思っていたのだがな。
「仕方ない。これだけは使いたくなかった……」
いくらクロムの装備での底上げされていても、俺の戦闘力は限界がある。
魔力を流して魔導具の類は使えても、魔力を変換して魔法は使えない。
身体強化も使えないんだ、そういう体質。
唯一自らを強くする為の方法。
俺は風斬を自分の胸元の前で刀身を空へ向けるように持つ。
「お祈りか?」
ジェイルがヘラヘラした態度で笑う。
「刻まれた魂、磨かれた刃、鋭く、風を斬り裂け、銘は風斬、我が魂と共に一つ刃となり眼前の敵を屠れ」
祝詞を並べ放つ。
『覚悟はいいんだな』
風斬に刻まれた魂が俺に語りかける。
『あぁ、共に行こう』
『疾走れ風斬!!刀身一解!!』
ナギの最終手段発動。
ナギ視点もあと少しの予定です。
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