055〜先へ
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クロムは、神の力を解放していきます。
それはスイッチを入れて直ぐだ。
世界が変わったようだった。
全身の感覚が全て鋭敏になり、魔法を使っていないのに周りの現象を感知出来る。
魔力の流れ、空気の流れ、生物の気配。
そういったものが手に取るように分かる。
何だこれは……?
感覚の強化だけではない。
二つの感情を同時に使っただけで、引き出せる魔力が数倍になったと感じる。
全身の隅々まで魔力が行き渡り、常に身体強化をされているような状態だ。
「三割程度の力でこれだけの力が出るならば、三つの感情を使ったらどうなる?」
コレは試さずにはいられない。
神の力とはこれ以上か。
勝てるはずも無いな。
では、次の段階だ。
一度今の状態を解除して、三つ同時発動を試す。
「よし、行くぞ!」
“怒りを楽しむことを喜ぶ”でいいはずだ。
スイッチを三つ同時に入れる。
………何が変わった?
確かにオレは三つの力を同時に使えている。
だが、二つ同時と何も感覚が変わらない。
そんなバカな。
神の力を三つも使って変わらないのか?
………違う。
気がついてしまった。
周囲との時間の流れが違う。
思考加速とでも言うべきか。
周りの流れと、オレの思考の速さが合わない。
体感で周りが十秒経つ間に、オレは四十〜五十秒位考えることが出来ている。
これは凄まじいな。
だが、まだもう一段階あるのだ。
では一度解除して次の段階………。
っ!?
力を解除した途端、全身の力が抜けた。
膝を付いて両手も地面を付く。
頭痛も酷い。
あれだけの力を使って全く反動が無い訳が無いというわけか。
「脱力、頭痛、全身の痛み、これは魔力もギリギリまで減っているな。」
生身で使うとこうなるのか。
『血反吐を吐いて鍛えて、再度死んでもいいくらい鍛えて、それでも勝てるかどうか下手したら存在ごと消滅する』
神に挑むとはこういうことか。
レナ様が言っていた意味が再度思い浮かんだ。
だったら血反吐を吐いて、死ぬほど鍛えればいいというわけだ。
まずは二つの感情で三割の力で十分に動けるようにする。
そして五割、七割と上げていき全力を出せるようにする。
そして三つ同時。
その後に四つ同時発動を試そう。
今のオレでは四つ使ったら死ぬだろう。
ならば身体を作り変えてやる。
その日からオレの修行が開始された。
ディオス達にも感情の繋ぎ方は教えたが、まだ一つの感情しか使えないのでしっかりとは教えていない。
そこからは地獄とも言える日々だった。
本当に、血反吐を吐いた事もあった。
力の配分を少しでも失敗すると、何も動けなくなる。
時には荒野で倒れていた所をエリックに助けられ、アルティアに自粛期間を設けられた。
ディオス達の中では、アルティアが先に2つ目の感情の力を使えるようになった。
オレは死にものぐるいの生活を数ヶ月続けた。
そして三つの力を同時に扱う訓練の最中だ。
「レメア王国とオージェ神聖国が戦争だと……?」
「あぁ、既にアルハバードでは、戦端が開かれている。貴様は既知の者が多いだろうと思い、伝えておくことにした。行くなら止めん。だが、無理はするな。シェリアとまた会うのだろう?」
ディオスから詳細を聞いた。
オレがレメア王国に帰還したと布告し、アルハバードが王国へ戻った。
そして勇者やそれに同伴して国を出た者達が、オージェ神聖国へ。
そして宣戦布告だ。
………これは確実に女神の仕業だな。
まだ、神の力は十分に使えるようにはなっていないが、行かねばなるまい。
勇者とミアはナギ達では手に負えない。
特にミアは女神そのものだ。
あの時から更に強化されているはずだ。
シェリアはまだ戻らないが、オレは行こう。
シェリアをアルティア達に任せ、アルハバード付近の拠点へ向かった。
あの時とは違い本当に戦争が始まった。
オレは急いで戦いの場へ………。
次回は視点が変わります。
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