045〜感情の力
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『クロムウェアは身体に帰ってきた。』
意識が身体に戻ってくるような感覚がする。
魂だけ引っ張られるというのは慣れない。
身体が重い。
どうやら何処かに寝かされているようで閉じている瞼を開くと、そこは祈りを捧げたへやでは無かった。
部屋にはベットがいくつか並んでいる。
「ここは神殿の中なのか?」
「あっ!目を覚ました!!」
声のする方に目を向けるとニールがいた。
そして直ぐに何処かへ走っていってしまう。
とりあえず身体を起こし、立ち上がるとディオスが部屋に入ってきた。
「目覚めたか……。祈りを始めたと思えば貴様が急に倒れたのだ。祈りを捧げることで魂を邪神様に呼ばれたのであろう?」
「あぁ、その通りだ。」
それが分かるということは、ディオスもそれを経験したということだな。
一度死ぬというのはそういうことか。
魂を抜かれ生きていないからな。
「となれば貴様は我と同類。我が心の力は“楽”だ。何事も楽しまねばならぬ。難儀なモノだ。」
感情の力か。
楽しむ力とはまた難しいな。
まだオレの怒りのほうが分かりやすい。
「その言い方であればオレの力は“怒”だ。怒りが原動力。そして邪神様にはディオスにその力の扱い方を習えと言われた」
「“怒”か……それもまた難儀だな。では、早速修行場へ案内しよう。」
そう言って、笑いながらディオスはオレの手を持って引っ張っていく。
神殿に連れてこられたときもそうだが、何故いちいちオレの手を掴む必要があるんだ。
「流石に自分で歩けるぞ。」
「まぁ、気にするな!!我が楽しいのだからな」
それは感情に流されてないか?
感情を制御するとは一体……。
結局、笑いながらディオスはオレを引っ張り続けた。
そして、一つの部屋の前で止まった。
「ここは心の修行場だ。部屋に入れば感情を揺さぶる出来事が幾度となく起きる。我はこの中で制御を学び修得した。耐えきれず廃人になる者も多いが……貴様はどうする?」
愚問だ。
オレが力を扱えるようになれば、シェリアを助けられるとも言われた。
そして死ぬ気でやっても勝てない相手なら、やらない訳がない。
「オレは復讐の為なら何でもやる。廃人になろうとも復讐してやるさ」
「クククッ!その意気や良し!!我はそもそも止めるつもりも無いがな!」
じゃあ聞くなよ。
「一つだけ、アドバイスをしておこう。呑まれども失うな、だ。」
ふむ……感情に呑まれても意識を失うなという意味か?
それとも他の意味もあるのだろうか。
まぁ、考えても分からない。
ここに入れば分かることだろう。
ディオスに礼を言い、オレは修得場の扉を開ける。
「コレは………」
扉の先には何もない。
光も何もない。
完全なる闇がそこにあった。
今、オレが立っている側の光すら通っていないのだ。
一目見ただけではそこに黒い壁があるような感じだ。
恐る恐る手を伸ばすと、確かにそこには何もない。
但し、伸ばした手の先は見えなくなっている。
そこで切断されたかのようだ。
片足も入れてみるが、床はそこにある。
だが、足は見えなくなった。
そして、少しだけ不快感が纏わりつく気がした。
「行ってくる。」
近くにいるディオスに一言だけ告げて、オレは中に身体ごと入っていく。
視界は闇に包まれた。
「………クロムウェア・ウォーロードよ。感情に狂うな………」
ディオスの声が誰もいない空間に小さく漏れた。
次回から修行パート突入です。
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