040〜誓い
閲覧ありがとうございます。
それなりに胸クソ悪いお話です。
お気をつけください。
教会の入り口に人が立っている。
そいつの事も見間違うことはない。
「ミナか……」
先日会ったばかりの拳聖がそこにいた。
「残念。そろそろこちら側に堕ちたと思って見に来たんだけど、遅かったかしら?」
割と無口だった筈のミナが饒舌に喋っている。
口調も違う。
「貴様、女神だな?」
「御名答。女神様に対して貴様とか不敬じゃない?天罰ものよ、邪神の手先サン?」
人を見下すような視線と話し方。
癇に障る。
そしてレナ様との繋がりも知っているか……。
だが、その前に!
「シェリアをこんな目に合わせたのは貴様だな!そして、ミナにも何かしているのか!?」
コレだけは確認しなければならない。
「あぁ、シェリアちゃんは私の手駒にする筈だったのよ。一応私の神殿の聖職者だし?だから存在を書き換えて、人から天使に昇格させてあげようとしたんだけど、思いの外精神が強くてねー。手間取っちゃったのよ。あぁ、ちなみにこのミナの身体はそもそも私がこうして下界で活動するためのモノだから。一応擬似的な人格は与えているから。安心して、魔王と戦っている時のこの子は私じゃないわよ。そもそもーーー」
聞けば聞くほど吐き気がする内容をつらつらと話す女神。
これ以上口を開くなと言ってやりたいが、コイツの口は軽い。
割と重要な情報をダダ漏れにしている。
「ーーー傑作よね。アンタを殺すためにミア以外の3人とも意識を持たせたまま操ってやったら、みぃんな発狂したのかって言うくらい喚き散らすんだもの。いつまでもグチグチ言ってたアストンとファルは邪魔だから死んでもらったし。」
「あぁ!?」
アストンとファルが死んだだと!?
そう簡単にあいつらがやられるとは思えないが、オレも殺されているから何とも言えねぇ。
「簡単よ。このミアの姿で近づけば終わり。バカみたいに仲間だと思ってるんだから。まぁ、そのミアの意志もこの前消したからもうこの子もタダのお人形よ。私が必要なのは勇者のあの子だけ。まぁ、勇者はぜーんぶ知ってるんだけどねー」
もうダメだ!
コイツの話は耐えられない!!
「それ以上口を開くなクソ女神ィ!!」
「あら?怒っちゃった?しょうがないじゃない。たかが人の分際で私に楯突こうとするんだもの。ミアだって、私に造られた存在のくせにあなたが死んだらイヤだなんて言い出すんだから。」
「口を開くなァ!!呪縛鎖檻!!」
闇の拘束魔法。
縛られた者は四肢の動きを止められ、動けなくなる。
「フフフ……消魔」
その女神の一言でオレの魔法が消滅した。
「バカな………」
「人レベルの魔法が今の私に通用するわけ無いでしょ?もう完全にこの身体は私が制御してるのだから。代わりに見せてあげるわ。もうこの国はいらないからね。さぁ…………これが天罰よ」
『天雷風陣』
上に手を掲げた女神から凄まじい魔力が溢れ、一瞬で教会の壁や屋根が消し飛んだ。
教会に光を取り込んでいた筈の空には黒雲が広がり、稲光を纏っている。
強風が吹き始め、周囲の建物を震わせる。
嵐を、作ったのか……?
「この街ごと吹き飛びなさい。じゃあねー」
その一言で落雷が始まった。
女神は消え、街中に幾度となく雷が“降ってくる”。
「ナミト!アミナ!拠点へ戻れ!!」
念の為にラインバードの付近の拠点への転移魔導具を渡しておいて良かった。
「アミナ!逃げるぜ!!」
「ヤバイヤバイよ!!」
直ぐに撤退していった二人はオレの言いたいことを直ぐに理解してくれた。
クソ女神は本気でこの街ごと消し去るつもりだ。
民間人はもういないが、街にはまだ冒険者がいる。
ナミト達には騎士団へ連絡してもらう。
「普通の落雷なら防げるが、どうだ?絶対防壁結界!!」
物理、魔法のどちらも防御出来る結界を作る魔法だ。
街の全てを包み込むのは不可能だが、中央付近はコレで……
「ちっ!やっぱりタダの嵐とは違うな!!」
数秒で結界にヒビが入る。
「絶対防壁結界!!」
壊されるなら何度でも張り直すだけだ。
その後、数分経ったがまだ落雷は続いている。
オレがいるこの中央付近には図書館がある。
ココは死守しないとレナ様の下へ至る手がかりが少なくなる。
「む、落雷が減ったか?」
結界の外側への落雷が減った気がした。
その時、結界に大きな衝撃が入り消滅しかけた。
「クソ、周りはある程度破壊したからココに威力を集中させてきたのか!!」
結界の上空だけに渦巻く雷雲があり、光を溜めている。
さっきの一撃よりも遥かに強力な雷撃が次に来る。
「だったら、絶対防壁結界五重だ!!」
五枚重ねの結界だ。
これ以上は結界の維持が出来ない。
「さぁ、来やがれ!!」
オレは上空を睨んで叫んだ。
轟音と共に、結界に衝撃が来て空が光に包まれた。
結界は一瞬で崩壊した。
オレは、逃げた………。
無意識に転移していた。
空から光の柱が落ちているラインバードの外に立ってそれを眺めている。
まだ死ねない。
シェリアの為にも。
そしてオレは………
アイツラに復讐しなきゃ気が済まない。
「女神と勇者………貴様らだけは許さねぇ!!」
もう一度、復活した時よりも強くそう誓った。
再び強く誓うクロム。
クロムの記憶が戻り、今までの口調と昔の口調が混ざるようになりました。
第一章のメインストーリーはここで終了です。
間話を挟み、第二章へ続きます。
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