003〜邪神のヒトリゴト
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今回は邪神さまのお話です。
彼には素質が無かった。
今は賢者なんて呼ばれてはいるけど、元々人より少しだけ魔法が得意だった孤児だ。
ただ、闇に対する素質が高かった。
闇は邪神の系譜。
人はそれを忌み嫌い、拒絶し、排除する。
そう、彼は捨てられたのだ。
邪神という存在のせいだけで、世界から消えていく命は数知れず。
だから私は優しい人のふりをして種を蒔く。
闇だけにとどまらない力の種を。
彼もその一人だった。
よほど邪神の力との相性が良かったのだろう。
闇は勿論、魔法に特化した賢者にまで成長した。
それは努力の証。
私は種を蒔くだけしか出来ない。
それを開花させるのは個人の努力のみ。
『頑張れば頑張っただけ、人は高みへ登ることが出来る。あとはキミ次第だ。キミのため、そして……』
『ボク〈世界〉の為に頑張ってくれたまえ』
私は、子供が平気で見捨てられていくこの世界を変えたかった。
だからこそ邪神となり、この系譜の種を蒔く。
種の中からあのクソ女神を倒せる子が現れるまで。
『しかし、あの子の素質は過去イチかもしれないね。死して種は私の元に戻ってきたというのに、種の中に消滅せずに魂が残っていた。しかも私の中で思考まで巡らせ、私と会話まで出来た。いい加減あのクソ女神が好き勝手やるのも終わりにさせなきゃねぇ』
この世界はお前の好きにはさせない。
なぜ英雄が邪神になったのかというお話でした。
邪神の一人称は『ボク』と『私』を使い分けてます。
基本的に、人と会話するときは『ボク』で、一人でで自分を呼ぶときには『私』を使ってます。
次話からまたクロムウェアのお話です。




