028〜賢者の謀り
閲覧ありがとうございます。
賢者がまたやらかしますよー(。•̀ᴗ-)✧
今回の王国軍の進軍は瞬く間に街中に伝わった。
市長の回答次第では戦争になるという事もあり、役所には人が集まりつつあった。
この街には有望な冒険者はいない。
尚且、自衛の兵士だけではどうしょうもない数が攻めてきている。
市民の不安は募っている。
だったら俺が、俺達が戦争など出来ないようにしてしまえばいい。
ミアの相手は俺がする。
アミナを黒龍化させて、その上にナミトが騎乗。
黒炎で壁を作ってこの街に来れないようにする。
王国軍の兵士では龍には対抗出来ないからな。
指揮官も英雄レベルじゃなければ、龍と対峙などしたくないだろう。
だが、正体を隠さなければならない。この仮面は俺達の隠密行動の為に作ったモノだ。
これを付けて襲撃したら今後の行動に支障が出る。
「そうだ。いっそのことこちらを敵にしてしまえばいいのか」
「シルバさんがヤバいこと考えてる気がする」
「私はどーすればいいのー?」
策は決まった。
「作戦を説明する。ーーーーー。という感じだ。」
「マジかよ……」
「楽しそうだね!」
では、私は直ぐに準備をする。
一日もあれば十分だ。
一日くらいであれば王国軍はまだ指定の場所には到達できないからな。
一日後。
王国軍が進軍している地点に巨大な影が指す。
「龍だぁー!!!」
兵士たちが騒ぎ、隊列が一気に乱れる。
“紅い鱗”の龍が空を飛ぶ。
その背には紅蓮の鎧を身にまとう者が乗っている。
「新生魔王軍幹部が一人龍騎士のエルゴ参上!!」
龍と共に地面に降り立った紅蓮の鎧は巨大な槍を構えるとそう叫んだ。
顔まで鎧に覆われており表情は分からないが、声からして男だということは分かる。
「新生魔王軍の初陣だ!雑魚どもは吹き飛べ!!龍の獄炎!!」
紅の龍が口から炎弾を放つ。
炎弾は王国軍の“前方”に着弾し、爆風が吹き荒れる。
兵士たちは逃げ惑い指揮する者も腰を抜かしてしまっている。
「フハハハッ!!こんなものか!?王国軍は!!」
だが、その爆風の中から超スピードで一人飛び出して来た。
「魔王軍は滅ぼす……」
拳聖ミア・ランバースである。
構えた拳が紅蓮の男の頭を捉える。
「っ!?」
だが、その拳は頭部を粉砕せずに空を切る。
近距離転移だ。
若干体制が乱れたミアの横から紅の槍が迫る。
ミアは咄嗟に穂先を弾き距離を取る。
「爆炎槍!!」
巨大な槍を地面に突き立てると、距離を取ったミアに向かって地面が爆発していく。
ミアはそれをサイドステップで回避すると、再び加速して紅蓮の男へ殴りかかる。
「幻炎!」
ミアの拳は確実に当たるはずだったが、すり抜ける。
姿は見えるのに身体が其処には無かった。
「拳聖様の攻撃が当たらないだと!?」
腰が抜けた指揮官が遠くで声を上げている。
まぁ、最高クラスの戦力である拳聖が苦戦しているように見えるだろう。
グオァァァァ!!
そんな王国軍の近くに再び炎弾が落ちる。
ウワァァァァー!!
次々と兵士は逃げていく。
「何なんだコイツラは!?」
「雑魚に名乗ってもしょうがないが、特別に教えてやろう」
戦場に幻影で隠れていた俺は、ミア達が戦っている場所から少し離れた場所にいきなり出現する。
指揮官はギョッとした表情を浮かべる。
全身に漆黒の鎧を身に纏い、闇の魔力を周りに漂わせ派手に演出。
そこへ、紅蓮の鎧を着たナミトが俺の後ろに現れ、跪く。
紅の龍に“見せている”アミナも俺の後ろに飛んでくる。
「我は新たなる魔王なり。先代の脆弱な魔王と同じだと思うな?」
自分を中心に闇の魔力を放射する。
「魔王が復活したぞー!!!」
指揮官も兵士も面白いように転がりながら逃げていく。
「魔王………死ね!」
そんな中、魔力の放射を掻い潜りミアが突撃してくる。
洗脳か何かで思考が制限されているとは言え、猪突猛進過ぎるな。
だからナミトにすら手玉に取られていた。
ちなみに後ろで跪くナミトだが、装備の消費魔力がキツすぎて動けないだけである。
流石に装備で補正をかけても、拳聖と互角に戦うにはまだ早すぎる。
そんな拳聖の俺の頭を狙った拳は、闇の障壁に阻まれる。
その衝撃でスパークするように激しく明滅するが、物理と魔法のぶつかり合いでそんなことは普通起きない。
そう見せているだけ。
これは目眩ましだ。
どこから女神が見ているか分からないから激しい光を生み出して隠す。
女神の力がどれほどのものか分からない……
「全力で解呪する!!」
ミアの洗脳も解析妨害もまとめて消し飛ばしてくれる!!
兵士達からすると、いきなり現れた魔王を名乗るヤツに紅蓮の騎士と紅の龍が魔王に傅いているように見えました。
賢者は割と演技派です。




