025〜アルハバードのギルドにて
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今回はギルドでお話をする回。
北のシルバードと比べると人の往来の数が違う。
元々北には魔王領があったから、国軍関連施設や冒険者の為になる施設が多かった。
しかし、アルハバードは東側の国との交易の中心となる街だ。
「初めて来たけど、王都並の人の多さだぜ、アミナは逸れるなよ。」
「了解だよ!お兄ちゃん!!」
アミナはナミトの肩の上にいるからそうそう逸れないだろう。
逸れてもナミトが契約の力で場所が分かるから問題無い。
やはり大通りには人も馬車も多い。
戦争の気配はあまり感じられないな。
「そういや、シルバさんはギルドの場所覚えてるのか?」
「あぁ、この先直ぐの所だ。上手いことこの魔獣の件で市長と会う機会が取れるといいんだが……」
いざとなればクロムウェアの名を使うしかない。
人が大勢いる中で知られたくないから、気をつけなければならないが。
「あれがギルド?」
ナミトの肩にいるアミナは遠くまで見えるのだろう。
ギルドの場所を指さしている。
「そうだ、あそこが目的地だ。」
ギルドの建物は他の街にも同じような造りで建っている。
実に分かりやすい。
俺達はそのまま冒険者ギルドへ入っていく。
途端に内部がざわつきはじめる。
仮面という言葉が幾つも上がっているので、俺達のせいである。
気にせず受付まで行き、冒険者証明を出す。
「ここに来る途中で魔獣を狩ってきた。かなりの大物だから買取をお願いしたいのだが。」
ここの受付嬢はこの仮面を見ても動じず証明を確認した。
「お疲れ様ですシルバ様。買い取りの件かしこまりました。どのような魔獣を持ってきて頂けたのでしょうか?」
「あの仮面を前にして狼狽えないとは凄いな。」
ナミトは黙ってなさい。
フォレストザウルスはここで出すには大きすぎるな。
「収納に入っているんだが、ココでは狭くて出せない。フォレストザウルスと言えば分かるか?」
「………本当ですか?」
受付嬢は目を見開く。
周囲も再びざわめく。
「信用できないならココで出してもいい。」
「っ!?いえ、それは困るので解体場へご案内致します。アルバートさん、解体場へシルバ様を。私はーー様に連絡を取りますので」
「了解だ」
受付嬢の後ろから見たことのある顔が出てきた。
ん?あいつはシルバードにいたタンバートではないか?
スキンヘッドにいかつい顔の男だ。
「タンバートが何故ここに……?」
ナミトも気がついたか。
「あぁ、タンバートの兄貴を知ってるんだな。似てるだろう?良く間違われるんだ。俺はアルバート、解体場へ案内するぜ」
ふむ、双子と言うやつか。
ならば似ているのも納得だ。
口調も多少タンバートの方が粗野だったかもしれん。
俺達は、アルバートに連れられて解体場へと向かう。
「ここが大型魔獣の解体場だ。スタッフは受付が呼んでおいたからすぐに来る。先んじて例のやつを俺に拝ませてくれ」
「分かった」
俺は、収納からフォレストザウルスの頭と胴体を取り出して、解体場の真ん中に置いた。
魔王領にいたやつよりも幾分小さいが、東側にしてはまぁまぁのサイズだ。
「マジかよ……これをあんたらだけでやったってのかよ……」
「いや、実際にやったのはシルバさんだけだぜ。近づいて首を落として終わりだな。俺らは近くにいただけだ。」
ただでさえ驚いたアルバートの表情が、ナミトのセリフで更に酷くなった。
「あんたバケモンだな。コイツはココ最近になって近くの森の中に住み始めて、雑魚魔獣を食い荒らし、街道を荒らし、討伐に向かった冒険者をも蹴散らしたヤツでな。付いたあだ名が〈災害〉だ。ランク関係無しの停滞依頼に格上げする所だったんだよ。」
この街じゃあ狩れるやつがいないからな。
とアルバートは小声で漏らした。
やはりどこも冒険者の質は高くないようだ。
魔王を討伐して以降、ランクの高い冒険者は散り散りになってしまったからな。
国を出ている可能性も高い。
最高ランクのやつらは軒並み、勇者の手元だ。
こういう時こそ勇者パーティが各地を回って治安に努めるべきなのだがな。
王も何を考えている……?
「そもそも街道を荒らしたこともあり、コイツは市長から直々の依頼だ。この街はつい最近になって国の所属を変えたからな。面倒事は早めに処理したいという気持ちもあったんだろうけどな」
相変わらず対応が早い所を見ると市長は変わっていないと思える。
そんな所で、スタッフが続々と集まってきた。
「アルバートさん!コイツですね!!例の災害は!!」
「おう、なるべく早く解体頼むぜ!!」
解体スタッフはアルバートとニ、三言話すと離れていき、フォレストザウルスを囲んで色々と話している。
「お前らは今回の依頼の詳細を知らないよな?」
「そういえば知らないな」
あの市長が依頼を出しているならば、素材は恐らく市長行き。
冒険者は報酬のみになるだろう。
ギルドにも報酬を払うと言ったところか。
「今回の素材は、市長へ引き渡す代わりにお前たちには多額の報酬が支払われる。……なのだが、お前達は依頼を受けていない。そこで直に市長がここに来るだろう。お前達と交渉するためにな。」
そもそもフォレストザウルスの素材はいらない。
市長と話す機会が出来たのは好都合だ。
「ギルドの応接室を使うからそこで待っていてくれればいい。来るまで仲間で相談しておけ」
「ふむ、ではそうさせてもらう」
俺達は応接室に案内された。
防音の魔道具が使われていて、盗聴が出来ないようになっている。
「シルバさん。市長と会ったことがあるんだよな?」
「死ぬ前にな。世間では死んだことになっているが、あの市長も薄々原因が分かっているとは思うぞ」
市長にだけは俺の正体を明かそうと思っている。
ただ、その前に色々聞いておく。
勇者が何かをやった。
それが原因で国の所属を変えたのだと思っている。
国を変えるというのは大きな決断が必要で、手間も金も掛かる。
待つこと数十分。
応接室の扉がノックされる。
「シルバ様、市長がお見えになりました。お通ししても宜しいでしょうか?」
「お願いする。」
久々に市長と会うな。
まさかのタンバートの親族が出てくる。
皆さん、覚えていますよね?(笑)




