021〜黒龍の目覚め
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いじめられた黒龍が目を覚まします。
雷陣を使用してから少し経った時、黒龍が目を覚ましたようだ。
目を開けた黒龍は少しビクっとするが、大人しくしている。
「黒龍よ、私の言葉は理解出来るか?」
威圧的にならぬように声をかける。
『グルッ……』
黒龍は小さく頷く。
やはり言葉は通じるようだ。
魔王討伐の際にも、黒龍の集落近くを通るときには声をかけたからな。
あの時は勇者が大変だった。
『龍は討伐してなんぼだろ!?放っておいたら危ないだろうが!』
とかいってイキナリ攻め込もうとしてたからな。
全くヤツの頭の中はどうなっているのか分からん。
そういえばあの黒龍の集落は皆人化していたな。
「お前は人化出来ないのか?」
黒龍に聞いてみると、急に蹲って震えだした。
「大丈夫か?………シルバさん、コイツ泣いてるぜ、ここに来る前に何かあったんじゃねぇの?」
ナミトが近寄ってその身体を撫でている。
俺達は何もしない、大丈夫だ。
ナミトがそんな言葉をかけて優しく撫で続けている。
ふむ、確かに言葉が分かるうえに黒龍の上位種がそもそも人化も出来ないのはおかしい。
調べてみよう。
「“解析”!これは……呪いか?いや、何かに阻害されているのか?ふむ、この地に縛り付けられている。地縛楔の魔法か。ここから逃げられないようにするための魔法。凶暴な魔獣に使うやつだな。相当な魔力を使って撃ち込まれているな……」
龍は魔獣では無いというのにな。
勇者並のバカがまだいるということか。
これなら解除出来る。
これを使ったやつは、魔力だけでどうにかしただけだな。
地縛楔の魔法は簡易封印と言ってもいい。
そこから身動きさせない為のものだからな。
本来ならば、緻密な魔力操作をもってすぐには解けない組み方をしなければならない。
…………………イヤな予感がする。
これ、勇者の仕業じゃなかろうか?
「ナミト、一先ずコイツを苦しめている原因を排除する。」
「魔法で何かされてるってことなんだよな?」
「その通りだ。そしてやったのは恐らく勇者のバカだろう。解くのは簡単だ、これなら“解呪”で解ける。」
ほら解けた。
「普通は会話しながら解呪しないから……おい、もう大丈夫らしいぞ。」
ナミトが黒龍に声をかけている。
黒龍が再びその目を開くと、光と共にそのサイズを変えていく。
「うわぁぁぁん!お兄ちゃぁぁぁん!!」
「ぶげらばだ!!」
少女へと変わった黒龍は、泣きながら勢いよくナミトの腹部へ突っ込んでいった。
大人では無かったのか。
龍族は見た目では分かりにくいな。
その後、ナミトに抱きついた少女はアミナと名乗った。泣き止むと、色々と教えてくれた。
あの勇者は俺を殺した後に、色々やらかしながら帰っている可能性が分かった。
まさか、あの時の集落へ戻ってまで襲撃するとは思わなかったな。
「アミナはこれからどうする?俺達は勇者をどうにかするために先へ進むが……」
「お兄ちゃんに付いていくよ!」
アミナは何故かナミトの事をお兄ちゃんと呼び、ずっとくっついている。
ナミトも優しげな顔で頭を撫でている。
しかし、あの黒龍の集落には少女は居なかったと記憶しているが。
「アミナは元々その姿では無かったはずだが?」
「え?」
「分からない。私もそうだったと思うんだけど、思い出せない。凄く怖かった事と、集落の最後は覚えてる。」
恐怖による幼児退行が身体にまで影響しているのだろうか?
まぁ、ナミトに懐いているから契約はしやすいな。
「ナミトと共に行くなら、契約をしておいたほうがいい。お互いの場所も分かるから、連携も取りやすい。」
「分かった!ナミト!契約しよ!!」
「いいのか?アミナ、あの勇者にまた会うかもしれないんだぜ?」
「お兄ちゃんがいれば大丈夫!!」
何であそこまでナミトに懐いているのか……
記憶が戻れば分かるのだろうか。
まぁ、いずれ分かるだろう。
とりあえずナミトとアミナは契約を完了させた。
これで龍騎士だな。
そして今後の目的も見えてきた。
勇者の足跡を辿る。
俺達が旅の途中で、勇者を止めることが幾度と無くあった。
それを止めることが出来る人が居ない今、勇者はやりたい放題しながら帰国の途についている。
尻拭いをしながら、あの勇者を締め出すための外堀を埋めていこうではないか。
ナミトロリコン疑惑。
アミナの記憶がおぼろげなのは、今後のストーリで………




