001〜外道勇者と回想
閲覧ありがとうございます。
勇者がどんなやつなのか、すぐ分かります(笑)
俺の名はクロムウェア。
勇者パーティーの賢者"だった"男だ。
王に依頼され、勇者と共に魔王を倒す旅に同行することとなった。
あの時断っておくべきだったと今更ながらに強く思う。
昔の俺がいれば今すぐにでもその顔面を爆破してやるところだ。
王からの依頼なのでどうしても断ることなど出来ないのだがな。
勇者カイトの第一印象は意味不明な奴だった。
異世界から来ただとか、女神様に頼まれたとか、選ばれし者だとか騒いでいた。
だが、過去の勇者が使っていた聖剣の封印を解いたことで周りがそれを認めてしまった。
いや、認めるしかなかった。
あいつは、聖剣を手に取るとこう言ったのだ。
「やはり女神サマの言った通りだなぁ。なぁ、お前ら魔王倒して欲しいんだろ?俺を勇者として認めてくれればいいんだよ。迷惑してんだろ?認めるだけだ、それだけでいいんだぜ?」
国としても魔王という存在は目の上のタンコブ。
是が非でも倒してほしい存在だ。
だが、そんな自称勇者の尊大な態度に騎士団長がキレた。
「小僧が聖剣を得たからと言ってほざくな!本当に魔王を倒せるのか試してやる。俺と試合をしてみろ!」
「カカッ、手っ取り早い話だ!行くぜオッサン!!」
勇者はその場で騎士団長へ襲いかかった。
王の御前だというのに……。
そして結果は騎士団長の惨敗だった。
勇者はやりすぎた。
騎士団長はもう騎士としては活躍できない身体となってしまった。
両腕の肘から先を消し飛ばされ、両足の膝から下も消し飛ばされた。
切り落とされたならまだ聖職者の魔法で繋ぎ治すことも出来ただろう。
消滅しては治しようが無い。
まぁ、そんなこともあり奴を認めるしかなかった。
皆、騎士団長の二の舞はゴメンだった。
勇者カイトは王へ魔王討伐の依頼を出すように脅した。
「ちゃあんと書面にして残しておけよぉ?後で知らねえとか言われたら消しちまうからなぁ!?」
その書面には、メンバーのサポートの依頼も含まれており、俺を含め5人が召集された。
賢者 クロムウェア・ウォーロード
異名〈万能〉全ての知識に通ず
聖騎士 アストン・ディローズ
異名〈鉄壁〉崩すこと敵わず
聖職者 シェリア・リクリッド
異名〈復元〉全ての傷を無へ
狙撃手 ファル・クランデル
異名〈百発必中〉逃れられる者無し
拳聖 ミア・ランバース
異名〈破壊神〉出会ったら逃げろ
5人がそれぞれの職業で、最高峰の実力者である。
そして旅を始めた後、すぐに感じた勇者への思いがこちらだ。
賢者「魔王と共に滅ぼしても構わないか?」
聖騎士「全力で関わりたくない」
聖職者「視線に入るのもイヤなんですけど」
狙撃手「こっそり撃ち抜いていいッスか?」
拳聖「頭かち割りますよ?」
全員が奴を嫌っていました。
メンバー全員が、勇者とは名ばかりの外道野郎にほとほと困り果てていた。
えぇ、だからこそ何故。
「最後に私を拘束するという行動に至ったのかが分からない」
無理だろうが、洗脳するにしてもそんな時間は無かったはずだ。
これは予想だが、女神のお告げというやつが関係しているのだろう。




