016〜ナミトVS村長
閲覧ありがとうございます。
少しゴタゴタしており、投稿が空きました。
次の日。
俺は倉庫の前にある広いスペースに魔法によって模擬戦のエリアを構築する。
致死のダメージを阻害する結界を張り、本気で戦える舞台だ。
例え首を斬られようとも、斬れない。
ただし、結界内での活動は出来なくなる。
それはそこに倒れて動けなくなる程度だが、まぁ死亡判定だな。
「さぁ、俺が舞台を整えておいた!!この中では死ぬことも無いから存分に死闘を繰り広げて構わんぞ!!」
それを聞いてナミトと村長は少し肩を落としている。
「防死結界とか、一人で魔導師が張るものじゃねぇから……普通は数人がかりとか、魔導具を使うモノだから……」
細かいことは気にするな!!
俺だから出来るのだよ。
「さぁ、準備はいいか!?」
ギャラリーも集まり、結界の外で楽しみに待っている。
ナミトと村長は結界の中心へ向かい、お互いに向き合う。
「アルゴ村、村長ジルベール・アルゴ参る!!」
「ナミト・ウェイド行くぜ!!」
そういえば村長の名前、聞いてなかったな。
村長としか呼んでいなかったし、
二人が名乗りを上げ、戦いが始まる。
まず、開始と同時にナミトが爆発したように前へ飛び出した。
覚えたばかりの敏捷増加を早速使いこなしている。
一瞬でジルベールの目の前に迫るナミト。
そのままの勢いで手に持った剣を横薙ぎ一閃。
しかし、ジルベールは短距離転移でその場を離脱。
ナミトの背後に現れる。
ジルベールは開始直後、剣を持っていたはずだが、武器は槍へと変わっている。
剣を振るって隙のあるその背中へ槍を突きだす。
だが、ナミトも振るった剣の勢いを使って身体を捻るようにして回転。
剣の腹を使って槍を受け流す。
そして二人は弾かれるように距離を取った。
ホンの数秒だがかなり濃い戦いが行われている。
やはりジルベールは戦いのセンスがある。
武器の切り替えと短距離転移を自分のモノにしてしまっている。
そしてナミトも騎士としての戦い方に魔法を併用することを覚えた。
ナギの戦い方は騎士の中でも攻撃的だ。
疾風の如く敵前へ迫り、烈火の如く激しい連撃をもって敵を殲滅するのだ。
オレやナミトと違い、魔力による強化をせずにそういった戦い方が出来るあいつはどこかおかしいと思う。
曲がりなりにも、ナミトはその戦い方に近いモノを手に入れた。
幾度と無くジルベールへ迫り、剣を振るう。
ジルベールも負けじと武器を切り替えながら応戦するが、ナミトの戦い方が止まらない。
流れるように剣を振るうその動きは、停滞する事が少ない。
動作と動作の間の繋ぎ目が少ないのだ。
繋ぎ目に来る攻撃も障壁で捌く。
「攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ」
だがジルベールも少しずつ慣れてきている。
弓と槍で、短距離転移を使いながらある程度の距離を取って戦い始めた。
そして、隙あらば剣を取り眼前に迫る。
「チィ、一瞬で離れていきやがる!!じれってぇなぁ!!離れても矢が飛んできやがるし!」
「何という剣捌きだ!!まるで竜巻のようだな!!飲まれないようにしなければな!!」
ナミトは剣が止まることを否とし、回転しながら戦うことが増えた。
故に竜巻のようだとジルベールは称した。
短距離転移の多様。
一瞬でヒットアンドアウェイを繰り返す。
アウェイしたあと直ぐに弓矢を放つので、こちらも攻撃に停滞が少ないのだ。
王都の騎士団でもここまでの模擬戦は中々お目にかかれないだろう。
村人は既に大歓声を上げて二人を応援している。
「ただ、そろそろ終わりだな」
小一時間、激しい戦いを繰り広げている二人だが、いまだに決定打は無い。
そして、精神力とは別に減るものがある。
「なにっ!?転移がっ!?」
それは魔力である。
短距離転移は、魔力の消費量が少なくは無い。
ジルベール本人は気がついていないようだったが、持っている魔力が多いのだ。
だからあそこまで戦えた。
それに反してナミトは、ジルベール程の魔力は無い。
だが敏捷増加の魔法と障壁の魔法の消費量は上手く使えば、少なくて済む。
持ち前の戦い方も噛み合い、魔力は残っている。
結果、転移が出来なくなったジルベールの胴体をナミトの剣が薙ぐ。
「ぐぅっ!!」
ジルベールはその場に崩れ落ちて、動けなくなった。
死亡判定だな。
「勝者が決まったな。ナミトの勝ちだ!!」
俺は観客と二人に向けて声を上げた。
再び、大歓声が村を包んだのだった。
魔力の節約でナミトの勝利でした。




