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妹いじめの罪とはなんですか?

作者: さとう あか


「マリアンヌ!お前のように妹をいじめるような奴とは結婚できない!

妹いじめの罪で婚約破棄する!」


そんなことを我が侯爵家主催のガーデンパーティーでわたしの婚約者のアルフォンス様はわたしを指差しそう言った。


妹いじめ?

わたしに妹はいたでしょうか?

なにを言っているのでしょうか?


そんなことを考えていたら返答が遅れてしまった。

返答が遅れたのをバカにされているとアルフォンス様は受け取ったようでさらに怒ったようにこう続けた。


「お前がリリアンをいじめていることを知らないとでもおもったのか!」


え?りりあん?

どうして今リリアンの名前が出るんですか?


ちらりとリリアンの顔を見てみると、お茶の用意をしていたリリアンもどうして自分の名前が出てきたのかわからないようで困惑した表情で固まっていた。

人のことを言えませんが、あまり顔に感情を出してはいけませんよ。


「一体妹いじめとはなんですか?それにわたしはリリアンをいじめてなどはいませんよ。」


「この後に及んでまだそんなことを言うのか!」


この後に及んでってなにがこの後になんでしょうか?

わたしを指さしてそういうアルフォンス様に少しばかり憤りを感じつつもそれをあらわにしてはならないと自分を律する。


「ですから、なんのことですか?」


「お前は妹であるリリアンをいじめているだろう!

このパーティーの場でも侍女の格好をさせて無理やり働かさせている!」


え?


そんな会場中の疑問の声が聞こえてくるかのような静寂だった。

しかし、アルフォンス様は皆が自分の話を聞き入っているのだと思い話を続ける。


「いつも口うるさくリリアンの所作に口出ししているし、一緒にいる時だって座らせたりもしないだろう!

これをいじめと言わずになんという!」


わたしはこの時始めて知りました。

人間驚くと本当に開いた口がふさがらないということを。

しかし、なんとか手に持っていたハンカチーフで口元を隠します。


「アルフォンス様、」


「なんだ!」


どうしてそんなに怒っているのでしょうか。

どうしてそんな風に考えてしまったのでしょうか。

驚きを隠せないままわたしはアルフォンス様に告げます。


「リリアンはわたしの妹ではありません。侍女です。」


「まだそんなことを…」


「本当です!わたしはマリアンヌお嬢様の侍女です!妹ではございません!」


お茶の用意をしていたリリアンが小走りでやってきてわたしとアルフォンス様の間にやってきました。


「かわいそうなリリアン。マリアンヌにいじめられてそういわされているんだね。」


「違います!

母と共にこのお屋敷で幼い頃から住み込みで雇っていただいているのです!

幼い頃からお嬢様とともにこのお屋敷で育ったわたしはれっきとしたお嬢様の侍女であって妹ではありません!」


そう、リリアンのお母様は子爵夫人であったけれども旦那様を病気で早くに亡くしてしまった。

それでリリアンのお母様は当時幼いリリアンを抱えて実家に戻ろうとも考えていたらしいのですが

、あまりお金の余裕がない実家にお世話になるのもどうなのかと考えていたそうです。

そんな時に、両親が我が家で働いてみないかと声をかけて働いてもらっているのですが、アルフォンス様にはうまく伝わっていないようでした。


「そう何度も説明したではありませんか!」


ここでリリアンから衝撃の事実が飛び出す。

これが初めてではなかったらしい。


「お嬢様がわたしの所作について言うのはわたしがこれから王宮の侍女試験を受けるのに備えているからです!座らないのは当たり前です、主人の前で座る使用人がいますか!?」


そう、リリアンは自身のお母様やわたしのお母様からもう少し見聞をひろめたほうがいいということで王宮の侍女試験を受けることを勧められて、本人も気合を入れて頑張っているのである。

その試験対策の一環で最近は特に所作やマナー、改善点などを伝えていた。


まあ、確かに主人が勧めてもよっぽどのことがないと使用人は座らないわね…

勧めてないしね…


「君はマリアンヌと違って僕に小言を言ったりせず優しかったじゃないか!」


「優しい!?そんな、お嬢様の婚約者にお嬢様がおっしゃるような初歩的な注意が言えるわけないじゃないですか!」


「2人きりで話もして交友を深めたじゃないか!」


「このお屋敷でですよね!?しかも2人きりではありませんよ!アルフォンス様の侍従の方もいらっしゃいましたし私以外の侍女も同席していましたよ!?」


当家の侍女数名とアルフォンス様の侍従の方がリリアンの言葉に激しく頷いております。

どうやらトチ狂っているのはアルフォンス様だけのようです。


周囲もアルフォンス様の勘違いに引いています。

アルフォンス様は気がついてはいませんが。


屋敷のほうからお母様とリリアンのお母様がやってくるのが見えます。

騒ぎを見ていた侍女の誰かが報告に走っていったようです。


我が家の使用人の有能さに安心しつつもこれからどうすればこの自体が丸く収まるのかと、少しばかり頭がいたいです。









その後、私とアルフォンス様の婚約は継続となりました。

アルフォンス様は伯爵家の次男で継ぐ家もありません。なので我が家に婿入りするのですが、そんな方が我が侯爵家主催のガーデンパーティーという個人的な集まりではありましたが、問題を起こしてしまったのですから婚約した時以上にこちらに有利な条件で契約を結びなおすことができました。


婚約を解消、もしくは破棄してしまうとこちらになんの非もないので契約にあった以上の賠償金が請求され、さらによくない噂が社交界に噂が広まってしまうかもしれないということもあちらの親御さんはわかっていらしたようでした。


私がリリアンをいじめていた。

そうアルフォンス様は始終おっしゃっていたようでしたが、どこからどう見ても私とリリアンの関係は正しい主従関係であり、いじめに該当するようなこともありませんでした。


客観的には。


「リリアン、いくらあなたがアルフォンス様が私の伴侶にふさわしくないと思って行動してもアルフォンス様を選んだのは私よ?どうしてって顔をしているわね。あなたもわかるでしょう?とっても扱いやすいからよ。あの人なら私はいくらでも自由に政治や経済に干渉できるわ。あの人の顔と名前を使ってね。

だから、心配なんてしなくていいのよ?

それに今回のことで私はさらにアルフォンス様の弱みを掴むことができたわ。

だからあなたはなんの心配もせずに私に仕えていればいいわ。」


私がそういうと、リリアンは喉の奥から絞り出すように声を出して問いかけた。


「お嬢様、お嬢様はそれで幸せですか?」


「ええ、もちろんよ。」


私の答えにリリアンはどう思ったのかはわからないが、十年以上経った今では私の子供の乳母として働いてくれている。

そして私は、夫となったアルフォンス様との良き夫婦関係の構築に尽力している。

決して、尻に敷いているわけではない。

多分。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

結局、みんな幸せになったんだと思います!

尻に敷かれてもそれでうまく行っていればそれでいいんだと思います!

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