表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルネアの栄光  作者: 酒精四十度
【第一章 ラヴェンシア大陸動乱】
7/155

1_06.サルバシュの命運

「ふむ、グジェゴシェク将軍。それで我が軍への被害はどの程度だったのだ?」


「はい、ボルダーチュク法王。我が方はエストーノ軍の先遣師団が全滅致しまして……」


「いや将軍。聞きたいのは我が軍の被害だ。」


「は……それは……我が第二軍は待機していた為、装備人員共に被害はありませんでした。」


「そうか、それは重畳だった。何れにせよ、その攻撃はロドーニアの魔法攻撃だろう。今や文献程度でしか残っては居らんと思っていたが、実在したとはな。だが、これでロドーニアも此度の戦いに敵側で参戦した事が判明した。これは少々戦略を変えねばならん。恐らくはロドーニアの海軍はオクニツアを補給地にして魔法士と共に物資を陸揚げしておるのだろう。だが何れにせよ、グジェゴシェク将軍。貴公の第二軍は動くなよ。」


「ボルダーチュク猊下。北方の我が第一軍も現状待機をしておりますが、第二軍に行われたような攻撃を受けた場合には独自に後退を行っても宜しいでしょうか?」


「ふむ、それなのだが……グジェゴシェク将軍。どう思う?貴官の考えを聞きたい。」


「はい。恐らくあの攻撃は、あ、魔法攻撃ですな。あれは恐らく魔法攻撃を行う為に準備時間と場所の指定が必要な攻撃でありましょう。状況を説明しますと後退する敵同盟軍に対してエスノート軍を充て、リェカの領地に入ったエストーノ軍を丸ごと包んだ状態で何等かの魔法攻撃を行った模様です。攻撃の種類は判明しませんが装備の類には目立った被害はありませんが兵のみが倒れておりました。つまりは人体に直接作用する攻撃である模様です。」


「ふむ、なるほどな。指定された場所に入り込んだ敵を一気に殲滅する類であろう。つまりは待ちの戦法である訳だ。とするならば、こちらが攻勢を行わなければ敵の魔法攻撃を受ける事もあるまい。シルヴェステル将軍、貴公の第一軍も防衛に徹せよ。何れにせよ貴公の軍が動くのはサルバシュが陥落した後だ。サルバシュが落ちれば、西方に孤立した同盟軍の補給路は海路のオクニツアしか無くなる。それに気が付いた同盟は何とかしてサルバシュを奪還しようとするだろう。その時が貴公らの出番だ。」


「御意に。ボルダーチェク猊下。」


同盟軍首脳陣が考えていたヴァルネク連合の主攻目標はリェカ王国と読んでおり、ここに同盟軍主力を集中させていたが初戦のリェカ西方国境付近での魔法攻撃でエストーノ先遣師団が壊滅して以降は完全にヴァルネク軍は防衛体制と取り続け、リェカ戦線は膠着状態に陥っていた。


ヴァルネクはマゾビエスキを占領した第一軍と第二軍、そしてセレ王国を占領した第三軍と第四軍が同盟国境付近に張り付いて防衛体制を取っていた。現在、サルバシュを攻略しているのはキウロスに駐留するコルダビア第一打撃軍とロジャイネに駐留するコルダビア第二打撃軍が担当し、それぞれがサルバシュの北西と北東から挟撃体制で侵入を開始した。


ヴァルネクのボルダーチュク法王は、サルバシュが陥落した以降は西方に孤立した同盟軍主力がサルバシュ奪回の為に戦力を北方に集中するだろう事を想定して、その瞬間にヴァルネク第一軍と第二軍にリェカ王国から始まる同盟軍蹂躙の戦いを企画していたのだ。このボルダーチュクの戦略によってサルバシュ北方の第一防衛線に配備されていたサルバシュ防衛軍の主力は、そもそもサルバシュが主戦場となる事を想定していなかった事から、初戦で守備部隊のほとんどが壊滅し、あっという間に第一防衛ラインは突破された。そして第二防衛線には二線級の部隊しか残っては居なかった。


「ミハウ総統!サルバシュのシュライデン大統領から緊急通信が入っております!」


「何事だ!?今出る。 ……これはシュライデン閣下、如何なされましたか?」


「ミハウ総統、我が国は現在ヴァルネク連合からの攻撃を受けている! 既に第一防衛ラインが突破され、防衛戦力も乏しい。どうにか我が国に援軍を送れないだろうか?」


「なんですと…!? 奴らの目標はサルバシュだったのか……大統領、急ぎ送るにも陸上戦力主力はリェカにある。どんなに急いでも3日はかかる。いや、浮遊機部隊を可能な限り搔き集めて送る。それまで持たせてくれ!」


「分かった、頼む。浮遊部隊か……ここに攻めて来たヴァルネク連合の主力はコルダビア軍だ。連中の対空兵器やら浮遊機はヴァルネクに比べて弱いと聞いている。なんとか侵攻勢力に空爆が間に合えば現有戦力でも耐えきる事が出来るだろう。それまでに陸上戦力を送って頂きたい。可能だろうか、ミハウ総統?」


「…恐らくは、サルバシュを落とす目的は我々同盟側の西方諸国への補給路分断だろう。恐らくサルバシュが落ちた段階で、リェカへの攻略へと進む筈だ。とするならば、依然としてリェカからの戦力は割けん。だが、ロドーニアの魔法士を送る。」


「ロドーニアの魔法士? 伝説では無かったのか……どれ程の戦力となり得るのだろうか?」


「ふむ……リェカの戦いでは、敵1個師団を魔法士一人で全滅させた。その魔法士を3名浮遊機で送る。それまでは持ち堪えてくれ。それから万が一に備えて脱出艇の用意もして欲しいのだ、シュライデン大統領。」


「……分かりました、何とか持ち堪えて見せましょう。……リェカの様子はどうですか?」


「リェカの西方戦線は完全に膠着している。ヴァルネクの軍は魔法士の一撃を喰らった後は防衛体制をとっているのだ。ベラーネも同じく何ら動きは無い。どうやら我々の判断は謝りだった様だ。済まない、大統領。」


「いえ、それでは宜しく願います、ミハウ総統。」


こうしてリェカに集められた戦力のうち航空戦力の大部分をサルバシュに送る為、同盟軍の浮遊機部隊を搔き集め、そして魔法士へ状況を説明する為に同盟軍司令部に呼びつけた。


「なんですと? サルバシュが此度の主戦場であった、と?」


「そうだ、魔法士の方々。サルバシュが落ちれば西方の同盟諸国は陸路の補給線が切られて孤立する。我々は急ぎ、浮遊機を送り、空からの攻撃によってサルバシュに侵入した敵軍を叩く。そして魔法士の方々には、その攻撃の助攻を行って欲しい。ある程度、浮遊機で敵軍を集めた所に大規模魔法を打ち込めばサルバシュの侵攻を留める事が可能かと思う。如何だろうか?」


「なるほど…それであれば3名も必要は無いとは思いますな。一応は全員サルバシュに赴きますが。」


「それはどういう理由ですかな?」


「我々が全てサルバシュで大規模魔法を行使した場合、その後に行われるであろうヴァルネク軍本隊との決戦に我々が動けなくなりますぞ。それでも構わないのであれば、3名全てで動きますが。」


「そうか、その問題もあったか……分かった、それでは1名のみの派遣をお願い出来るだろうか。」


「承知致しましたぞ、ミハウ総統。」


こうしてサルバシュ方面に、2人目のロドーニアの魔法士アベルトと共に浮遊機部隊が飛び立った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 大統領という事だから、曲がりなりにも民主制があるという事だろうから、こちらの方が日本はやりやすいですかね… 魔石ジェノサイド国家は潰さんとな~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ