表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルネアの栄光  作者: 酒精四十度
【第一章 ラヴェンシア大陸動乱】
34/155

1_33.同盟軍の大規模航空攻勢

ドムヴァル北方戦区攻略の為にヴァルネク第四軍からコルダビア第一打撃軍司令官アンゼルム将軍が引き継いだ。彼は当初の予定通りにヴァルネク第四軍の作戦を引く継ぐとしていたが、北部戦区を叩く教化第一艦隊と共同してドムヴァル沖にて同盟艦隊の牽制と撃滅を目的としていた教化第二艦隊が南方海域に突如引き抜かれた事から、アンゼルム将軍は北方線区を侵攻速度を緩め、消極体攻勢へ転じたのだ。勿論、北部戦区遅延はヴァルネク正規軍が居ない今、ボルダーチュクにとっては織り込み済みだったのだ。だが中央線区を皮切りに前線で同時多発で始まった同盟軍からの大規模空襲は、ヴァルネク連合にとって全くの予想外だった。


それは初めて行われた同盟軍浮遊軍による乾坤一擲の作戦だったのだ。

魔導探知に拾われても陸軍と混同させるように低空を低速で侵入し、夜明け前に中央戦区と北方戦区に同盟軍浮遊機部隊は襲い掛かったのだ。だが中央戦区ではこの同盟軍浮遊機に対抗する為に、南方戦区の浮遊機も動員した上で中央戦区に跋扈する同盟軍機に対抗した。その為、中央戦区では侵入した同盟軍機の規模からするとそれ程に大きな被害は受けなかった。


だが、この大規模な同盟の攻勢に対し、連合国側は攻撃意図が掴めて居なかった。それはドムヴァル沖に遊弋するヴァルネク潜航部隊撃滅が主目的であり、そのカモフラージュとして行われた攻勢だった同盟の意図は完全に秘匿され、ヴァルネク連合は、何等かの地上戦力の掃討を狙った航空作戦という判断をしていたのだ。その為、この航空攻勢が終わった後の陸上戦力の前進に備えてヴァルネク連合の各前線は緊張した。


そして、同盟の空の攻勢が始まった時点で、ここロジャイネ軍港では前日の出撃によって数隻の敵艦を沈め補給に戻ってきたヴァルネク潜航部隊のアウグストゥフと二番艦オルシュテイン、三番艦シュドルツェ、四番艦オストルダの4隻が港の係留し補給を受けていた。そして各潜航部隊の乗組員達は上陸して、港近隣の酒場で乱痴気騒ぎを起こしていた最中だった。そこに一人の連絡将校ノードが慌てて酒場のドアを開け放ち叫んだ。


「グンドラフ司令!グンドラフ司令は居られるか!?」


「ん…俺だ。何事だ!? おいおい、ひでえ汗だな、ここで何件目だ?」


「はぁはぁ……すいません、ここで6軒目です。」


「いやぁ、済まんな。俺達は先程まで任務で潜っていたからな。もう皆、陸に上がって、この町の飲み屋は俺達潜航部隊で占領してる状況だ。で、何の用だ?」


「はい、北方戦区統括艦隊司令部からの指令です。急ぎロジャイネ港から本国も戻るように、との事です。」


「なんだと? 俺達は港に戻ったばかりで補給も何も終わっていないぞ?」


「ともかくも、急ぎ本国の港に戻れとの事です。」


「分かった。補給が済み次第すぐに帰港する。だが君も知っての通り、この辺りの酒場に皆が散らばっている。君にも各酒場を回って兵を戻すのに協力して貰いたいんだが。」


先程までに5件の酒場を回り、その乱痴気騒ぎを目の当たりにしていた連絡将校のノードは、あの連中に酒を飲むのを止めて艦に戻れと言った場合、どういう事態になるかを即座に把握して嫌な顔をした。


「いえ、しかし…グンドラフ司令、何等かの緊急連絡手段は無いのですか?」


「ははっ、冗談だよ。だが、何れにせよ補給が終わらない限り出港は出来ん。移動中も潜水しながらともなると、艦の点検も再度行わねばならん。その猶予は頂けるんだろうな?」


「いや、勿論です。何しろ燃料無しには動けませんから。ちなみにどの程度の時間が?」


「そうだな…点検も込みで8時間って所だろうな。勿論搭載する燃料は最低限の場合を想定してだが。」


「了解しました、そのように統括艦隊司令部に報告します。」


まだロジャイネ港には同盟軍の空襲は来ては居なかった。

だが、攻撃が始まった時点で攻勢の規模を把握したヴァルネク総軍北方線区の統括艦隊司令部ではバンカー等の遮蔽物が一切無いロジャイネ港で魔導潜航部隊が全て港に係留されており、無防備に補給を行っている事に思い当たり、直ぐに司令部命令で移動を発したが、そもそもが燃料を積んでいない状態で出港等出来ないのは当然だった。


そしてロジャイネとドムヴァルの間には、最前線にコルダビア第一打撃軍、そして半島にマルギタ第一突撃軍、ロジャイネ中央部にマルギタ第二突撃軍とザラウ国陸軍第一軍が駐屯していた。既に中央戦線からは、同盟軍の大規模攻撃の報告は上がってきており、ロジャイネの前線では戦線正面に意識を集中していたのだ。そして、遂に同盟軍の浮遊機群を思われる物を探知した。


「魔導反応探知…三方向からロジャイネに接近中。一つはロジャイネ北方からエルブ半島キウロス側のロジャイネ港を目標としている模様、一つは同じくエルブ半島を東から接近、もう一つは東南から接近中、恐らく前線部分に最も早く接触する模様です。」


「何故、今迄探知出来なかった? 規模はどの位だ?」


「恐らく低空を移動していて、陸軍と判別が付かなかったものと思われます。それと、北方から接近する敵は艦船に紛れて接近してきました。艦艇はそのまま戻って行くようですが、戻らない物が数十機おり、それが浮遊攻撃機かと思われます。」


「ああ、船であれば距離が有り過ぎて単なる哨戒と勘違いしたという事か。それにしても数十機とは、連中何かの勝負を掛けてきたという事なのか。」


「申し訳ありません。ただ北方の敵に限らず、全てが巧妙に欺瞞をしながら接近していた為、判断が付かなかった状況です。」


「ふーむ…何が目的だ? 中央戦線への攻撃と連動しているのは間違いないのだろうが……」


コルダビア第一打撃軍司令官アンゼルム将軍は、答えを期待せずに独り言を呟いた。

この時点で、同盟軍の攻撃はヴァルネクがロジャイネ港に駐留している魔導潜航部隊が狙いだったが陸軍側では誰も警戒をしておらず、一応の警戒の為に動いたのは統括艦隊司令部だけだったが、結局補給が終わる迄は無防備のままだった。



僅かに上がったコルダビア軍とマルギタ軍の浮遊機も、一番最初に接敵した東南から侵入した同盟軍への迎撃に追われ、そのままロジャイネの前線上空でなし崩し的に大規模航空戦に引き摺り込まれていった。


そして巧妙に欺瞞を行い低空から無防備なロジャイネ港に侵入した北方からの部隊は、何らの抵抗を受けずに4隻の魔導潜航艦たちを攻撃し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ