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カルネアの栄光  作者: 酒精四十度
【第一章 ラヴェンシア大陸動乱】
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1_26.同盟国の今後の対応

同盟軍総司令部では、西部戦での戦力分析と見積もりを以って戦力を中央戦線に集中していた。だが、同盟軍が見積もった戦力とは桁違いの火力が同盟の全ての前線を襲っていたのだ。


「現在の状況を説明する。中央戦線北方地域、敵艦船からの艦砲射撃により15kmに渡って防衛陣地崩壊、北方の防衛線が突破された。我が軍は50km後退し、第二防衛線で再編中。中央戦線中央地域及び中央戦線南方地域、共に敵の砲撃により防衛陣地崩壊、同じく第一防衛線と第二防衛線の間で後退中だ。このままでは我々はヴァルネクに殲滅されかねん。今後の方向を協議したい。諸君らの忌憚無き意見を望む。」


「ミハウ総統。そもそも当初の戦力見積もりが甘すぎたのではないか? こうも同時に戦線が突破されるなどありえない話だ。」


「それは今言ってもどうにもならん、ネストリ総理。ドムヴァル陸軍も決して弱い訳では無いのは承知しているが、我々が把握している以上にヴァルネクの準備は入念だったという事だ。そもそもあのヴァルネク軍の重砲攻撃は西部戦線では行われなかったのだ。我々が知り得ぬ事には対処出来ん。」


「馬鹿な! 敵の戦力が分かりませんでした、知りませんでした、それで死んでいった兵達はどうなる!!」


「貴殿の仰る事も理解している。だが、そもそもこの戦いに備えて我々が事前に協議した際には、敵新兵器の情報など全く無かったではないか。我々側が潜入させた情報員は全員がこの戦闘前には連絡が途絶えた。我々の偵察活動において芳しい成果など無かったのだ。この状況に於いて知り得ぬ事があったとしても前線ではそもそもが対処不可能ではないか!」


「ミハウ殿、冷静になられよ。そもそも敵の新兵器があれだけとは限らん。どんな厄介な物を未だ隠し持っているかは分からん。我々の魔法士に匹敵するような何かでも持たれた場合、我々は巻き返しの芽も何も無くなってしまう。連中の戦力情報を何とか確保出来ぬか?」


「難しいな。敵の戦術が明らかに西方戦役とは違うという事と、西方戦線と比較して火力が桁違いという事だ。」


「それはつまりマゾビエスキ会戦時におけるヴァルネク連合軍と、中央戦線におけるヴァルネク連合軍の戦術と火力が違うという話だが、そもそもマゾビエスキやら西方戦役に正面に居た連中はヴァルネク軍では無く諸国軍では無かったか?」


「ああ、確かに。コルダビアだのザラウだのエストーノだのオラデアだのだったな。ヴァルネク軍が初戦から出張ってきた事は確か無かった筈だ。」


「そうだ。つまりは、ここ中央戦線においてヴァルネクは自国のヴァルネク軍を全面に出してきている。魔法士による大規模攻撃を恐れる素振りも見せん。あの魔法攻撃があるかもしれない可能性を考えたなら、指定する場所で待ち構えて撃つという事にうってつけの状況ばかりの戦場の筈だ。という事はヴァルネクの連中が一番に恐れるのは大規模魔法攻撃であろう。だが連中の侵攻と行動はまるでそれを考慮していない。という事は、既に我々が魔法攻撃の残弾が無い事を知っている可能性があると思うのだが如何か?」


「そうかもしれんが、それがどうしたというのだ? 話の要点が分からんが……」


「ヴァルネクは同盟軍が魔法攻撃が出来ない事を恐らく知っている。だが、その情報は連合国内で共有していない。これは連合国内が一枚岩では無い事を意味していると思う。ここに我々の勝機が隠れているように思うのだ。」


「今更連合の不協和を突いたとしてもだ。そもそもが前線にはヴァルネク軍しか居らんではないか。一体どうするつもりなのだ?」


「我々の軍が全域で後退しているのは皆も知って居ろう。恐らくは連合軍の連中は我々が敗走を装って後退し続けたなら、ヴァルネク軍以外の諸国軍が勝利と名誉を求めてヴァルネク軍を牽制し始めるだろう。勝ち戦を目の当たりにして、指を加えて大人しくしている連中では無いだろう。我々は、敗走を装って反撃に有利な場所まで後退した後に、ヴァルネク軍以外の軍が出てきた所を叩く。どうだ?」


「だが……ネストリ総理、ヘンリク王、それで宜しいですか?」


ドムヴァルのネストリ総理とソルノク王国のヘンリク王に意見を求めたが、彼ら二人は苦い顔のまま黙り込んだ。誘い込んだ上で反撃をするという事は、自らの国土を明け渡す事に他ならない。そして戦場は自らの国土のままなのだ。だが、ソルノク王ヘンリクは、重い口を開いた。


「止むを得まい。他に手段も対抗出来る手段も無い。協力しよう。」


「おお、ヘンリク王。ありがとうございます。ネストリ総理は?」


「ヘンリク王が了承されるなら、私も同意せざるを得ないな。あとで国民には理解を求めるが……」


「うむ、それでは今後の方針としてはまず後退後に、連合諸国を誘い出した上で叩く。叩くに良い場所は……ネストリ総理。ドムヴァル国内でどこかそれに適した場所はあるでしょうか?」


「軍部に聞かないと分からんが、恐らくはブオランカ盆地、そこに敵軍を集めたならば戦い易いとは思う。」


「分かった。それは後程ドムヴァル軍部との協議の上で再設定をしよう。ソルノク側はどうでしょうか?」


「ソルノクとしても同意せざるを得ない。ブオランカ盆地は我が国北方にも差し掛かっている故に、現在の防衛線を放棄した上でそこまで後退した上で反撃をするのは理に適っている。それで良いだろう。」


「よし。では皆それで宜しいか? 先ずは敗走を装ってブオランカまで後退、その上で防衛線を再構築してヴァルネク軍以外を釣り出し諸国軍をおびき出した上で各個撃破する。良いな、皆。」


「それはそれで良いとして、ヴァルネク軍はどうする?」


「現状で連中に対応する方法が無い。連合諸国軍を撃退した上で、改めて考えるしか無いな……」


「連中の攻勢限界点がどの辺りになるのか、だな。」


「ブオランカ盆地の時点で連中が攻勢限界点を迎えるのであれば良いのだが……」


「……可能性は薄いだろうな。まずは連合諸国の協調を崩して不協和音を起こした方が良いだろうな。」


「連合国内の不和以外に手が何もないとはな……」


こうして同盟諸国の今後の戦略が決定し前線に張り付いた兵達に通達された。

だが中央戦線南方のソルノク地域の同盟軍は後退を受け入れずに徹底抗戦を叫んだ結果、同盟軍の後退と歩調が合わずに突出してしまった結果、ブオランカ盆地に至る前に壊滅的な打撃を受け、後退を受け入れた。


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