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カルネアの栄光  作者: 酒精四十度
【第一章 ラヴェンシア大陸動乱】
26/155

1_25.ヴァルネク海軍の秘密兵器

ヴァルネクの中央戦線攻略作戦は第二段階に入っていた。

トムヴァル海岸を砲撃し続けたヴァインベック中将率いる教化第一艦隊は、予定の時間一杯まで砲撃を続行した後に引き上げていった。そして、その海域には教化第二艦隊が入れ替わりに到着した。


ステパン中将率いるヴァルネク教化第二艦隊は、対艦攻撃能力に特化した艦隊だった。

つまり作戦の第一段階にてロドーニア方面に同盟軍の艦隊が誘引されるのであればそれで良し、だがもし同盟艦隊がドムヴァルに駆け付ける様なら陸上への射撃に特化した第一艦隊と入れ替わり敵艦隊と交戦するのを目的としていたのだ。そして、この艦隊は、数は少ないが魔導砲による攻撃において比類無い高い能力を持っていた。


対する同盟軍艦隊はオストルスキ海軍を筆頭に、ドムヴァル、サライ、オラテア、ロジュミタール、そしてロドーニア海軍の計6ヵ国、艦隊総数180隻にも及ぶ各国海軍が参戦していたのだ。対するヴァルネク教化第二艦隊は80隻、単純に考えて2:1以上の戦力比があるにも関わらず後退しようとしないヴァルネク海軍に対し、オストルスキ海軍総司令官アムンセンは不安な気持ちを消せなかった。


「やつら何か切り札でも持っているのか…?」


「アムンセン提督、例え連中に切り札があったとしても2対1の状況を覆すのは難しいと考えますが。」


「そうだロアール大佐、オクニツアでは我々にも魔法士という切り札によって敵戦力漸減は相当に成功したが、結局は負けた。今回は我々が逆に連中を喰う番だ。順当に戦えば負けはしない。だが油断は禁物だ。敵を侮らず、我々は望まれる結果を出す為にここに居るのだ。各艦戦闘準備を通達。」


「了解です。各艦隊に通達。これよりヴァルネク海軍との交戦に入る。戦闘準備!」


同盟軍は各国毎6つの艦隊をそれぞれ各2列に進みながら大きく広がりながら展開を開始していた。数に勝る同盟軍はドムヴァル艦隊を緩く包囲するような形で展開を開始していたが、ヴァルネクを包囲を嫌って北方に移動を開始していた。ヴァルネク海軍のステパン中将は教化第二艦隊を5つに塊に分け、やってくる同盟軍艦隊左翼に対して挟み撃ちをするような動きを一瞬見せたが、そのまま北上を開始した。


同盟軍はこのヴァルネク艦隊の動きを察知していた上で、上空には陸上基地からやってきた浮遊機部隊が制空しながら観測を続けていた。双方の艦隊はお互いを喰らう為にヘビの様に機動をしながら、ドムヴァル沖を遊弋していた。そうしてヴァルネク艦隊が射程距離に入った段階で射撃を開始し、同盟艦隊の付近に巨大は水柱が立ち昇った。


「……敵が発砲しました!」


「な、なんだっ、この威力と射程はっ!!」


「信じられん、こちらは重巡だぞ!? 至近弾だけでこれだけ揺れるのか? 一体どんな弾を使っているんだ?」


「敵艦隊の砲は明らかに我々より射程が長く威力が大きい。だが、懐に飛び込み先に当ててしまえば数で押せる。各艦増速せよ!敵を射程内に収めるのだ!」


「敵艦の方が優速です、距離が縮まりません!」


「ちっ、進路3-0-0に転進。突っ込んでくる敵艦隊に集中砲火を浴びせろ!」


だが、同盟軍の増速は全く意味が無かったのだ。

ヴァルネク艦隊は同盟国艦隊よりも優速であり、しかも射程も長かった。つまりは同盟国艦隊は全くヴァルネクを捕捉出来ないままに撃たれ続け、各艦隊に被害が徐々に広がってきた。同盟軍全艦隊のうち1割程に被害が出た時点で、ヴァルネク艦隊に対する被害はたったの二隻に過ぎなかったのだ。そして、攻撃は広がって展開していた同盟軍右翼のサライ艦隊に集中し始めた。


「どうやら劣勢で挑んできた事にはキッチリと意味があったらしいな……」


「巡洋艦パスロー、被弾により戦列離脱! 駆逐艦データーに命中弾!」


「艦長、我が艦が夾叉されましたっ!」


「くっ、衝撃に備えろっ!!」


サライ海軍旗艦アルボー大佐の戦艦エイリークは機関部を撃ち抜かれ、敵中に孤立した。


「ここまでか。総員退艦せよ! 敵の攻撃が集中する、総員退艦だ!」


「大佐、未だこの船は砲が生きてる。最後まで撃てますぜ。」


「馬鹿な、貴様等直ぐに退艦しろ!」


「なに、最後までお供しましよ、艦長。前部砲塔!前方の敵艦隊を照準しろ!」


「前方の敵艦発砲!」


「撃ち返せ!!」


戦艦エイリークは止めを刺そうと接近していたヴァルネクの巡洋艦1隻を道連れにしつつ、大量の命中弾を浴びて轟沈した。だが、この海域では未だ同盟艦隊の方が数的には優勢だった。


「なかなかに数的劣勢は覆せんな。」


「ですが、我々の被害は3隻、敵同盟軍は既に20隻が戦闘不能です。」


「だが同盟軍は160隻。我が方は77隻だ。未だ倍以上だな。……そろそろか。」


「準備は出来ております。現在位置は、敵同盟軍後方4kで潜航中。」


「よし、通信開け。魔導潜航部隊、前方の敵艦隊に対し攻撃を開始せよ。」


今回の戦いにあたり、ヴァルネク海軍の秘匿していた兵器はたった一つ。

それは魔導反応遮蔽装置だったのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] この潜水艦らしきもの… 日本側は簡単に探知できるのだろうか?
[一言] 魔導潜航部隊…日本側の潜水艦みたいな奴か。ここまでくるとガルディシアじゃ対抗できないのは明らかだよな…そして日本側もそろそろ警戒しないと厳しいか?
2021/07/09 22:33 退会済み
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