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カルネアの栄光  作者: 酒精四十度
【第二章 ドゥルグル魔導帝国の影】
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2_10.増援部隊到着

ヴォートラン派遣部隊が駐留するサライの航空前進基地は拡充を続けていた。

パッセロ爆撃機が着陸可能な4000m級滑走路を更に1本追加し、掩体壕の弾薬庫と航空燃料を備蓄可能なタンクを増設した。これらは日本から魔獣対策PKFの一環として供与されたブルトーザー数台によって、可及的速やかに整地が為され、ここラヴェンシア大陸で唯一無二とも言える航空機用基地としての機能を拡充し続けていたのだ。だが武器弾薬の製造拠点を持たず、全てがヴォートランからの輸送に頼っていた状況は変わらず、この点についてヴォートラン王立空軍第三空中艦隊司令ラッザロ大尉は常に危機感を持っていた。更に言うと、同盟軍の浮遊機部隊は先に行われた航空攻勢によって受けた打撃の痛手から立ち直ってはおらず、しかも溜め込んだ魔導結晶石を攻勢に使い込んでしまい、そもそも同盟軍が保有する魔導結晶石自体が欠乏気味となり、同盟軍の作戦方向は攻勢から防衛に舵を切っていた。

そこに王立空軍第一空中艦隊のエミリアーノ大尉が補充要員を率いてやって来たのだ。


「よぉ、久しぶりだな! 来たぞラッザロ!」


「ニッポンの訓練所以来だな。どうだ、慣れたか?」


「慣れた? ああ、パッセロか。訓練所でニッポンの連中がデケえ音立てて飛んでる奴に比べるとオモチャみたいなモンなんだろうが、アレはアレで良い機体だ。乗りやすい。初陣はガルディシア帝国かと思ったが、こっちが先になるとはな。で、どうなんだ? そのヴァルネクの奴は?」


「ここの連中は航空機の事を浮遊機と呼ぶらしい。それと航空燃料では無く魔導結晶石とやらを燃料としているらしいんだ。それが理由なのかは分からんが、重量物が積めんので爆撃機という物が存在しない」


「へえ、そいつは面白いな。他に航空機と違う所は?」


「搭載する武装が、魔導銃を元にしたモノでこいつは少々厄介だ。これも魔導結晶石からエネルギーを引き出して撃つらしいんだが、単発で撃ったり出力を上げて溜め撃ちしたりが可能だ。しかもこいつに当たると一撃で機体が燃える。文字通り燃え上がるんだ。ニッポンの技術者が何か小難しい事を言っていたが、テルなんとか反応に近いとか言っていたな」


「なんとか反応? なんだそりゃ?」


「外装が魔導銃で撃たれると、爆発的に燃えるんだとさ。つまり連中が撃つ弾は全て焼夷徹甲弾だと思って間違いない。我々の二個戦闘隊は今の所被害を受けてはいないが、そもそも戦闘機だからな。当てられる様な操縦はしていない」


「と、すると……成程俺達の様な遅い爆撃隊は危ういな。俺達が出る時は敵戦闘機が飛び回る状況は避けたい所だが…戦況はどうなんだ?」


「それがな……」


ラッザロ大尉はエミリアーノ大尉にざっくりと補充の戦闘機を要請した原因を伝えた。

二人の航空隊の司令官は戦況図を前に暗い顔をしながら溜息をついた。


ヴォートランからの追加支援の物資を降ろしている最中、あちこちで再会を喜ぶ声がしていた。航空基地に到着した補充の戦闘機パイロット達と最初に派遣されたパイロット達である。彼等は共に日本に派遣され、戦術飛行訓練を行っていたヴォートラン兵達である事から、殆どが本国に戻る事無く日本からラヴェンシア大陸まで派遣されてきた状況だったのだ。そして彼等は同時に日ヴォ合弁会社が製造したヴォートラン戦闘機セリエ用の様々な改造部品を持ち込んできた。慌ただしく運んできた部品を航空基地で降ろしている傍らで、久しぶりに会ったラッザロ大尉の部隊員達に、新しくやってきた補充のパイロット達が近況を報告し合っていた。


「漸く着任だな、最近の本国の様子はどうなんだ、レオンツィオ?」


「最近か? 随分ガルディシアは大人しくなっていると聞いたが……本国は平和なモンだ」


「大人しく、か…で、ニッポンでの訓練はどうだった?」


「ニッポンの訓練か……」


途端に来たばかりのヴォートランのパイロットは苦い顔をした。


「向こうのアグレッサー部隊って言うんだっけ? あそこの連中は化け物ばかりだ。同じ機体どころか、あっちが格下の機体に乗っての演習戦で数え切れん位撃墜判定喰らったわ」


「ああ……エネルギー管理の厳しいあの教官か? 俺も一度も勝てなかったな……」


「なんだ、お前もやられっぱなしだったのかよ、リベラトーレ」


「うるせえや。そもそも俺達がここに派遣される理由としては実際に戦闘を経験する事によって、来るべきガルディシア帝国との戦いに備えるという意味合いが強いと言う話だけどな……そもそもガルディシア帝国には航空戦力自体が無いんだよな。そういう意味では俺達がここで戦う事に意味あるのか? いや、もっと言うならガルディシアは俺達にここで経験を積む迄待ってくれるのか?」


「そいつは大丈夫だ、なんでもガルディシア帝国は殆ど内戦状態に陥ってるらしいぜ」


「内戦状態だと? 確かにエステリアと和平した後は静かだったが……」


「何でも旧エウグストの残党があちこちでゲリラ攻撃を仕掛けているらしいぜ。恐らく背後にニッポンが色々と手を回しているんだろうな」


「ひゃーニッポンおっかねえ。正面切ってもアレだけの戦闘力持ってんのに、態々搦め手かよ」


「まあ、バラディア大陸内でややこしい事になってればこっちに火の粉が飛ばなくて済むって寸法よ。俺達としちゃあ安心してこっちの戦いで経験積んでおきゃ間違いない」


「そういや何でも、ニッポンの企業がウチとの合弁企業を立てて弾薬や爆弾の製造に入るらしいぜ。原油関連のニッポンとの協定の中で弾薬関係の供給をうちの王様がごり押ししたらしいが、ここに来て効いてきたな」


「お前なんでそんな事まで知ってんだ、レオンツィオ?」


「まぁ、色々な。魚心あれば水心よ」


レオンツィオはにやりと笑った。

更新遅くなりまして申し訳無く。

それと本文少な目のも併せて謝罪。。


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