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続・報告会

 ゼビウスの用意したほうじ茶とミルクはなくなり要望は全く叶わなかったが話すべき事は話したのでトクメは席を立とうしたが、そのタイミングを見計ったように白い液体で満たされた新たなピッチャーがドスっと勢いよく置かれた。


 ピッチャーの中身はラッシー。


「私が話す事はもうないが?」

「俺があんの。ムメイちゃんいないし丁度いいなって」


 ゼビウスがムメイの事で話があるとしたら一つしかない。

 トクメは椅子に座り直し姿勢を正した。


「フローラの事か」

「うん、まあそこまで重大な事じゃないんだけどさ……その、何というか……えーと……。……って、さ……」


 ゼビウスにしては珍しく言いにくそうにモゴモゴと聞き取れない程の小声で何か言っているが、トクメは特に急かしたりする事なく静かにジッと待っている。


「…………」

「……落としちゃった」

「は?」

「だから、フローラの魂を落としたみたいで……何処にもないんだよ」


 誤魔化すようにトクメのコップにピッチャーを注ぐと予想外だったのか、意外と素直に飲み出した。


「落とした場所に心当たりは?」

「めっちゃある。蠱毒の攻撃避けてる時に落としたっぽい。しかも近くの村には新鮮な死体が沢山あるから勝手に適当なのに入って転生してそう」

「そうか……だがそれならば何の問題もないだろう。死体に関しては事前に私が許可を取ってあるから管理者が騒ぐ事はない」


 予想外ではあったが大した事ではなかったようでトクメは安心したようにラッシーを再び口にしようとして何か思いついたらしく動きを止め、自空間からレモン果汁を取り出すとラッシーに入れた。

 それを見ていたゼビウスは極自然にトクメからレモン果汁を受け取ると同じくラッシーに入れ、トクメは特に気にした様子もなく話を続けていく。


「出来れば転生に使う死体と場所は選定したかったが……幸いムメイはもう回復している、早々にクツズから離れればいいだけの話だ」

「……あの蠱毒最古の怪物だろ、それで別世界への移動は確定なんだよな」

「そうだな、またこちらに戻ってくる可能性はあるが接触してくる事はないだろう」

「……時間操作も確定なんだよな。…………」

「……何が言いたい?」


 無言で見つめてくるゼビウスを不審に思い尋ねると意味ありげに深いため息を吐いた。


「こんだけ話してるのにお前何も感じないの? 俺今すっげぇ嫌な予感してるんだけど」

「と言うと?」

「フローラの魂は過去に移動してて、次にどこへ行こうと転生して成長したフローラに会いそう」

「考えすぎではないか?」

「そう言うなら次の行き先お前が決める? 言っとくけど、万一転生したフローラにムメイちゃんが会ってそれが原因でまた発狂して暴れたらお前責任取れよ」


 ムメイはトクメに保護される前にフローラの記憶が原因で発狂して幾つもの村を壊し、トクメ程ではないにしても大量の死者を出した過去がある。

 ゼビウスが警戒しているのはそれであり、普段でもだが特に仕事を終えたばかりの今、更に死者を出すのは避けたい。


「というわけで、俺としてはクツズだけじゃなくてこの大陸から離れたい」

「……ダルマの子供探しがあるからまだ大陸を離れる事は出来ん。せめてここから正反対の方向にある街へ向かうとするか……ならば北にあるヒールハイが最適だな」

「…………」

「何だ?」

「前にも聞いたけど、お前何でそんなにダルマに協力的なの?」

「別に協力しているつもりはない。貸しを作っているだけだ」

「ふーん」


 確実に何か裏がある。

 質問に答えているようでダルマ相手に貸しを作る理由を話そうとしないトクメにゼビウスはつまらなさそうに返事をすると、残っていたラッシーに大量の蜂蜜を注いだ。


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