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さようなら

「お、やっぱりいた。怪我はしていないか?」

「ゼビウス!!」


 穴から出た先にはムメイを背負ったゼビウスがいた。

 しかしその背後には先程の蠱毒が黒い手を伸ばしゼビウスとムメイを取り込もうとしている。


 咄嗟にシスは持っていた札を使おうとしたが、相手の行動を知っていたのかゼビウスは振り向きもせず雷に似た白い光を相手に浴びせ、蠱毒はプスプスと黒い煙を上げながら地面に伏せた。


「? 蠱毒だよなこれ? 何で浄化されない?」

「私と同じ世界最古の怪物だからだ。数多の生物を取り込み蠱毒となっても元は世界最古の怪物、不老不死が消える事はない」

「うわ、不老不死って浄化も効かねえのかよ面倒くせえ」


 外に出たらシスを始末する気でいたトクメだがちゃんとムメイを連れて来ている事に気づき、悔しさと安堵が混ざった複雑な表情を浮かべながらゼビウスの疑問に答えた。


「それよりムメイを見るにまだ体調が戻っていないようだが何故連れて来た」


 しかしそれでもやはり何かしら文句はつけないと気が済まないらしい。


「あんな危険な村にムメイちゃんだけ置いて行けるわけないだろ。それに置いて行ったらお前もシスを何処かに置き去りにしそうだし」

「危険? 何があった」

「その話は後で。それよりアレだ、死なないだけじゃなくて浄化も無理ならどうすんの」


 アレ、とゼビウスが目で促したのは伏せたままの蠱毒。

 死なないがやはり痛覚はあるらしく、痛みに耐えるように全身を震わせながらトクメとダルマの元へ這いずって来た。


『アスが……ああ、あす……我々が一つに戻れる明日が来たというのに……何故……』


 外に出られたからか蠱毒は多少正気を取り戻したらしくようやくまともな言葉を話しているが、それでもまだ大分怪しい。


「戻りはしないだろう、私達が一つになったところで別の何かになるだけだ」

「うむ、そもそも妾達は一体の怪物として活動する直前にディメントレウスに七つに分けられた故、今の妾達の姿の方が正しい姿と言えるじゃろ」

『お、おお……おおお、おおおおおあああああ…………』


 トクメとダルマの完全拒否に蠱毒は再び正気を失ったのか頭と思わしき部分を掻きむしり、身体をブルブル震わせ黒い手の部分が辺りへ飛び散った。


「うわっ、また来た!」

「シス、外に出た蠱毒とはいえ最古の怪物が入っているから念の為攻撃はするな」


 その手はシスやゼビウスを掴もうと向かってきているが、本体と思わしき部分から離れると時間で消滅するらしくゼビウスは先程の魔法を使わずに避けて自然消滅させている。

 その様子を見ながらシスもゼビウスの言う通りに札で反撃はせずひたすら避けに徹した。


 その内蠱毒は普通の人の大きさにまで縮み、代わりにその背後に大きな黒い穴が開いた。

 その向こうからは明らかにこことは違う風景が見えている。


『わ、私達は……私……オレ……? あ、ああ、あああ……』


 やがて蠱毒はその穴に倒れ込むように入ると完全に姿を消した。


「あ。逃げた……?」

「多分こことは違う世界に行ったんじゃないか? 世界最古の怪物って別世界に行く力ある奴いたし」

「……ぅ……」

「あ、ムメイちゃん起きた? シスと合流出来たしムメイちゃんもほら、トクメのとこ行く?」

「ムメイっ」


 ゼビウスがムメイを降ろすとすかさずトクメが近づいて来た。


 一応ムメイの体調が落ち着いたとはいえまだ意識はしっかりしていないらしく、支えにするようにトクメの服を掴んでいる。


 そして。


「ぁ……お、お父、さん……」

「!!?」


 顔を見上げながらムメイがトクメの事を初めて『お父さん』と呼んだ。


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