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新たなメンバー、新たな旅立ち

 イリス達とは簡単に別れを告げトクメ達は街を出た。

 と言ってもあっさりしていたのはトクメだけで、ムメイとイリスはお互い別れを惜しみその横では何故かシスとウィルフが固い握手を交わしていた。


 トクメとしては、イリスはムメイの唯一の友なので別れを惜しむのは分かる。しかしシスとウィルフはいつの間に友になっていたのか。

 気にならなくはないが、シスに関してはよっぽどの事がない限り調べる気にもならないので放置した。


「……ねえ、ゼビウスの所に行かないの?」

「向かっているぞ。ほら、丁度あの一際影の濃い木の下に……」


 ケルベロスと違い冥界に閉じ込められ一切外へ出れなかったゼビウスは日光など強い光への耐性がない。

 吸血鬼と違い灰になりはしないがやはり刺激が強すぎるのか手で日光を遮っており、ケルベロスが心配しているのか周りをうろうろしている。


 ように見えたが、ゼビウスとケルベロス以外に見慣れない姿が一つあった。もしかしたらケルベロスはこれを警戒しているのかもしれない。


「あれ、数減った?」

「数が増えたのか?」


 ゼビウスとトクメの第一声は綺麗に被った。


 てっきりゼビウスだけかと思えばゼビウスの手には鎖に繋がれたレヴィアタン。


「うわ……」


 レヴィアタンの存在に気づいたムメイは嫌そうな声と表情になり少し距離を取ったのをトクメは見逃さなかった。

 そんなトクメの様子に気づかずゼビウスはシスと嬉しそうに話している。


「よし、トクメも来たし見送りはいいぞケルベロス。俺が留守の間冥界に関する事は全てお前に任せる。ただし何かあったら呼ぶように」

「はっ、ゼビウス様のお手を煩わせないよう全力を尽くします」

「違う違う」

「え?」


 穏やかに話をしていたゼビウスはケルベロスの中心にある頭と視線を合わせるようにしゃがみ込むと、優しく頭を撫で始めた。その顔も手つきも優しいが、何故か空気は冷たく張り詰めている。


「俺が出ないといけない事態まで発展したら面倒だから、ちょっとした労力で済むうちに俺を呼べって意味。分かったか?」

「あっ、は、はい!」

「よし」

「では私はこれで……オルトロス! くれぐれもゼビウス様に無茶をさせないようにな!」


 ゼビウスに深く頭を下げるとケルベロスはシスに忠告してから冥界へと戻っていった。


「……無茶言うなよ」

「ねえ、ゼビウスってもしかして……」

「ああ、うん。仕事が嫌いというか働くのが嫌いというか……簡単で楽な仕事しかしたがらない」


 小声ではあるがシスはムメイと仲良く話している。

 普段ならすぐ邪魔に入るトクメだが、今はそれどころではなかった。


 ムメイとレヴィアタンの間に何かあると察し、調べてみたら出てきたのはムメイへの侮辱に攻撃。


「捕まえたとは聞いていたがまさか連れてくるとはな、だが助かった」

「だろ? まあ冥界に置いといたらケルベロスの仕事が増えるから持ってきたんだけど。お前が持っとく?」


 現在レヴィアタンはゼビウスの力により身動きが取れず言葉すら発せない。

 唯一自由な目で何かを必死に訴えているが、トクメもゼビウスも応える気は一切ない。


「……転移魔法を使えば目的地までは一瞬だがこれは旅行だ、過程を楽しまねば。レヴィアタンの処遇に関しては道中で決めるとしよう」

「だな。ちょっと寄り道したりのんびりゆっくりしながら考えるか、時間ならいくらでもあるし」


 ふふふ、と妖しく笑うトクメとゼビウスに、会話こそ聞こえなかったがその雰囲気からろくでもない事だと察したシスとムメイは黙って距離を取った。


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