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ゼビウスVSリビウス

 ムメイ達のいる場所から少し離れた浜辺でゼビウスはリビウスと睨み合っていた。


 しばらく無言の時間が続いていたが、おもむろにゼビウスが口を開いた。


「俺さあ、前から気になってたんだよ……お前単体の強さはどの程度なのか」


 ゼビウスはリビウスに勝った事がない。

 父親殺しなどの冤罪を着せられてからは首輪の力もあり抵抗出来なかったが、神界にいた頃は反撃したりゼビウスから攻撃を仕掛けたりしていた。


 その全てに負けているのだが、いつも必ずカイウスが側にいた。


「カイウスが強いのは知ってんだよ、嫌という程な。けどさ、お前が俺を殴る時カイウスがいない事がなかったなって」

「カイウスは関係ない。お前が俺より弱いだけの話だろう」

「だから試させろって話だ、よっ!」


 話し終えると同時にゼビウスは殴りかかったがリビウスはそれをあっさり避けた。


「やはり俺の方が強い! っが!?」


 攻撃の隙をついたリビウスはゼビウスへカウンターを仕掛けようとしたが、腕に激痛が走り動きを止めた。

 腕を見れば軽い火傷ができており、バチバチと雷光が残っている。


「懐かしいよな。今みたいに俺が攻撃すると必ず片方が魔法を使って俺の足止めてさ、それでタコ殴り。属性は違うから全く同じってわけじゃないけど、まあ魔法って考えれば同じだしいっか」

「それだけで俺に勝ったつもりか!」

「いいや、お前相手ならそれだけで勝てる」

「ゼビウス! その減らず口、二度と叩けないようにしてやる!!」


 今度はリビウスが殴りかかった。


 ******


 あれから十分。


 お互い打ち合いが続いているが、リビウスの息は荒いのに対しゼビウスは全く乱れずそれどころか楽しそうに笑みを浮かべてさえいる。


「辛そうだな、歳か?」

「…………」


 力自体は互角でありお互い相手の攻撃を避けたり防御した隙を狙って魔法を放つのだが、その対応でゼビウスと差がついた。


 ゼビウスの雷魔法はかなりの威力がある為相殺を狙うには魔力の消耗が激しすぎる。更に掠るだけでも感電する為リビウスは安全な距離まで動いて避けなればいけない。


 それに対しゼビウスは、リビウスの魔法を魔力でもって完全に相殺している。


 体力の消耗が激しいリビウスと魔力の消耗が激しいゼビウス。

 本来ならゼビウスもリビウスのように息が切れるなり疲労を見せてもいい筈がそんな気配は全くなく、軽口を叩くあたりただの強がりでないのが窺える。


「お前、何だその異常なまでの魔力は……! 明らかにおかしいだろう!」

「ああ、うん、可笑しいだろう。笑えるよな」

「ゼビウス!! それ程の力! 一体どうやって手に入れた!!」

「何、欲しいの? でも欲しくて手に入るもんじゃないしなあ」


 ゼビウスの笑顔が歪んだ。先程と同じ顔で笑っている筈なのに異様な空気を感じリビウスの背に悪寒が走る。


「例えば、命と同じぐらい大事にしていた花畑を勝手に神族に渡された上に、精霊戦争の責任を元凶の七大精霊に擦りつけられてとことん責められ追い詰められたり。例えば、生まれた瞬間から自我を侵食される程の強烈な記憶と、癒える事のない激痛に全身絶え間なく襲われたり」


 一つ、話す度にゼビウスはクスクスと笑う。


「例えば、平和で穏やかな世界でのんびり過ごしていたのに、ある日いきなり世界が滅んで独りぼっちになったり」

「何が言いたい」

「……頭がさ、ぶっ壊れたら嫌でもこうなる。そのぶっ壊れ具合で魔力の量も増える。お前も魔力が欲しかったら今まで俺にしてきた事を全部自分でやってみたら? あ、でも父親殺したのはカイウスとお前だし、他の悪事も全部自分でした事だから壊れたところで魔力が増えたりしないか。だって自業自得だから」

「黙れ!!」


 馬鹿にされたように笑われリビウスは一瞬でゼビウスに近づくとその顔を殴り、そのまま鎖を掴んだ。


「捕まえた! いくら魔力があるからといっても純粋な力には勝てんだろう! そのまま地面に這いつくばっていろ! 今までのように! これからも!!」


 鎖を振り上げ地面に叩きつけようとしたリビウスだが、急に重さがなくなりつんのめったが何とか踏み耐えた。

 何が起きたと手元を見れば、そこには鎖と繋がった首輪だけしか残っていない。


「そんな首輪、外すだけならいつでも出来たんだよ。ただ外すとカイウスが気づいて五月蠅いから外さなかっただけ」

「ぐっ!」


 ゼビウスは背後から右腕を相手の首にまわしもう片方の腕でしっかり固定し締め上げたが、リビウスが意識を失いかけた瞬間に手を離した。


「がっ、ゲホッ!」


 地面に手をつき息を整えているリビウスの正面に立ちゼビウスは見下す。


「落とす事はしないから安心しろよ。いやぁ懐かしいなあ。最初こそ意識がなくなるまで締められたり殴られたりされたけど、反応ないのはつまらないからって意識を失うギリギリで解放されては締めての繰り返しだったよなあ」

「お前……まさか……」

「やられた事しかやらない。それ以上の事はしないしそれ以外の事もしない」


「安心だろ?」そう優しく囁くゼビウスに優しさは微塵もない。

 流石のリビウスも己の不利を悟り逃げ出そうとしたが、背後から電撃を受けその場に倒れた。


「何で逃げんだよ。別に逃げる必要はないだろ、俺が生きてんだから死ぬ事はないって分かるだろ」


 ゆっくり、ゼビウスは歩いて距離を詰めながらリビウスがこれ以上逃げられないよう周囲に電気を結界のように張り巡らせる。


「ふざけるなよ……! こんな結界、すぐになくしてやる! 来い!!」


 リビウスは空を見上げ大声で叫ぶが辺りは静かなまま誰も来ない。


「何故だ、何故来ない……! まさか耐性でも出来たのか!? たった一度で!!」

「ははっ、俺の味方についている奴を洗脳して戦わせようとしたのか? 誰を呼ぼうとした? まあ考えるまでもなく分かるけど」


 イリスはカイネが狙っているので除外、ルシアでは弱すぎる。


「ムメイちゃんは神通力に守られているから手出し出来ない、出来なかったが正しいか。簡単なものでも時間かかるんじゃ意味ないしな。じゃあ残るは一体だけ、でも何でそいつは来ないんだろうなー。神の洗脳が効かないのって何でだろうなー」

「……おい、まさか……」

「答えは簡単、違う神の加護を受けているから。だから同族の、しかも兄弟の洗脳なんか簡単に弾く」


 最後の手段も潰されリビウスはようやく自分の立場を理解した。


「ま、待て、謝るっ! 過去の事全て謝るから止めろ、それ以上近づくな……!」


 後ろに下がりたくとも電気の壁がある為動く事すら出来ない。

 再び、ゼビウスはリビウスの正面に立った。


「俺もよく『もう嫌だ、止めて』って必死に言ってたなあ。その時さ、一回でも止めた事あったか?」

「っ!!」

「言ったろ。やられた以上の事はしないけど、それ以外の事もしないって」


 ゼビウスは拳を振り上げた。


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