ヴィルモントの意外な一面
作戦は出来たがその前に解決すべき問題がありムメイ達はまだヒールハイに留まっていた。
「どうやって王都に、いやまずはどうやってヒールハイから出るべきかだな」
既にヒールハイに大臣の手の者がいる以上、ヴィルモントの城から出るのすら警戒しなくてはいけない。
「……陛下、私はこの国出身でない事は知っておられますよね」
考え込んでいる王にヴィルモントが話しかけた。
「む? うむ、ローラントを後見人として身分を与えたのは余だからな。最初は準男爵だったが今では伯爵、相当なものだ」
「ええ、その通りです。私が国を出て大分時間も経っていますし、そろそろお父様に近況報告の為に手紙を出そうかと思っています。そして私がどれ程成功したかを証明する為に贈り物も用意しようかと。お父様の好む食物は勿論私が取り扱っている様々な国の装飾品に宝石、あとお父様に似合う衣服も贈りたいですし……それらを分かりやすく種類別に分けて箱に入れたとしても相当な大きさと数になります。当然怪しむ者は出てくるでしょうが中を調べられた所で私がお父様にお渡しする物に低品質なのは勿論不純な物など入れませんのでいくら探られたところで痛くも痒くもありません」
「お、おお……?」
いきなりの早口に王は少し気圧されているようだが、要は敵の注意を引きつけるのでその隙にヒールハイを出たらよいのではと言いたいらしい。
「…………」
「言っておくがこれは緊急事態で必要だからするだけだ。決して私がお父様恋しさや寂しさで連絡を取ろうとしているわけではない」
「何も言っていないし思ってすらいないわよ」
「分かっているが念の為だ。私は純粋にお父様を敬い慕っているだけだ」
何か言いたげな視線を寄越すムメイにヴィルモントは無表情で視線も寄越さず話しているが、誰も何も言っていないだけにより一層ある疑問を強めていた。
「と、とりあえずヒールハイを出るのは大丈夫そうだが次は馬車か。馬車内にも敵がいると考えるならば王都までは乗れん。そもそも乗るのを避けるべきか、しかし魔法も使えぬ今時間を考えるとやはり馬車が最適だが……」
微妙な空気を切り替えるように王が話題を逸らし、それにアルバートが乗った。
「その件については私にお任せください、良い案があります」
心強い発言ではあるがアルバートの目が若干死んでいる。
いつぞやの時と同じ目である事にムメイは気づいた。
「ねえ、もしかして……」
「緊急事態です。この状況で私個人の感情など不要。ええ、本当に、陛下を助けるのに躊躇いなど……ありません」
「???」
この中では唯一事情を知らない王とインネレだけが不思議そうな表情を浮かべていた。