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ダルマでも読めなかった心中

アルバートが合流した現在、改めて王城を取り戻す為の話し合いがヴィルモントの城で行われていた。


「……というわけでして、大臣の中には反対する者も僅かにいましたがその者達は全員地下牢に入れられています。カイゼル様もその中におられました」

「ふむ。一先ず安心と言いたいところだが、いつ命が経たれるかも分からぬ状況ではやはり急いで王都に戻らねばならんな」

「はい、大臣の中に陛下がカイゼル様を次期国王に任命しようとしている事を知っている者がいました。処刑はドミニク様が止めていましたが、強行される可能性もあります」

「ならば王城を取り返す者とカイゼルを救出する者、二つに戦力を分けんといかんか……」


 圧倒的に数が少ない状態で更に戦力を分散させるのはリスクしかないがカイゼルを放置するわけにはいかず、王の眉間には深いシワが入っている。


「……ねえ、その牢屋ってどんな鍵を使っているの? カードキータイプ?」


 そんな王を見かねたのかムメイが話に入ってきた。


「いや、普通のシリンダータイプだ。しかし簡単に脱走出来んよう一般のものより複雑な仕組みになっておるから鍵が無くてはまず開かん。そして鍵は恐らく大臣か腕の立つ者が持っているだろう」


 何か良い案があるのかと王が答えると、ムメイは唇に指を当て少し考えてから口を開いた。


「少し難しくても……私なら鍵が無くても外せると思う」


 そう言ったムメイの手には魔力を具現化させた針金のような物が複数本。


「そのカイゼルって人の救出は私だけで大丈夫だから戦力を分ける必要はないわ」

「ピッキングか。その技術を教えたのはトクメだな」

「魔法だけに頼らず自分の力だけで出来る技術もあった方がいいからって強制的に。でも実際今役に立ちそうだしいいじゃない、悪事を働くわけでもないし」


 そう言う割にムメイはヴィルモントを見ようとしない。

 やはり多少思うところはあるらしい。


「そうだ。城内は魔法妨害の魔道具が使われていますから魔法は使えません。その道具はそのまま維持出来ますか?」

「あ、魔法使えないなら具現化も出来ないから……」

「……」

「誰か針金か何かそれに似たやつ持っていない?」

「それでしたら私のヘアピンをどうぞ。丁度王とお揃いのを用意しようと思っていたのでそのまま形を崩されても構いませんよ」

「ありがとう」

「何故私に聞かん。ピッキングツールの方が時間もかからん、特別に貸してやろう」


 わざわざヴィルモントを見てから聞いたのが気にいらなかったのか、少し不満気ではあるが見せびらかすようピッキングツールを見せてきた。


「針金とかの方が慣れているから遠慮しとく」

「慣れる程やっているのか」

「……そっちこそなんで開錠専用の道具持っているのよ。しかもそれ私物でしょう」

「…………」

「…………」


 険悪でも冷たいわけでもない、何とも言えない微妙な空気が流れた。


「余とインネレは城に乗り込むぞ。反乱を起こした主導者、ドミニクを抑える。主導者を捕まえれば反乱は鎮まる」

「では私は敵の注意を引きつけます、陛下とインネレ・オルガーネ様はその先に城へとお入りください」

「お、俺は何をしたらいいんだ?」

「シス殿は私と同じく敵の注意を引きつける役をお願いします。シス殿は裏手から、出来ればオルトロスの姿でなるべく派手に暴れていただけますか」

「……殺すのか?」

「いいえ。恐らく相手は騎士団、ですが彼らは家族を人質にされている可能性が高いです。少なくとも副団長は確実です。なので気絶させるか行動不能程度に抑えていただければ」

「ああ、分かった」

「よし、ならば一刻も早く王都へ向かうとしよう」


 ムメイとヴィルモントによって発生した空気を変えられる者はおらず、また喧嘩をしているわけでもないので仲裁のしようがない為とにかく話を進めようと王城を取り戻す作戦が素早く練られていった。

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