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間話 ルドラとサリア

 ある街から少し離れた森の中でサリアはルドラを呼び出した。

 ルドラは依頼か何かと思ったが、サリアがいつになく真剣な顔をしているので珍しく何も言わず話し出すのを静かに待っている。


「……あ、あのね、ルドラ。今日は依頼とかじゃなくて……その、大事な話があって……」


 暫く待つとサリアは意を決したように真っ直ぐルドラの顔を見上げた。


「私……私、ルドラの事が好きなの! だから……私と恋人になってください!」

「!!」


 そう言ったサリアの顔は耳まで赤く染まり緊張し過ぎているのか若干涙目になっている。


 その姿は擁護心をくすぐられ大変可愛らしい。

 しかしルドラはサリアを妹のようにしか思っておらず、そう告げてまたいつものように笑いながら頭を撫でようと腕を上げて止めた。


 サリアは少し引っ込み思案な所があり、こんな風に真っ直ぐにこちらを見ながら強く自分の意思を伝えるのは今までなかった。

 それだけサリアは本気である事が分かると、ルドラも本気で答えなければいけないと覚悟を決めた。


「すまんサリア! 俺、他に好きな人がいるんだ!」


 正面から告白してきてくれたサリアに、ルドラもまた正直に告白した。


「向こうは友達か、もしくは知り合いぐらいにしか思っていないかもしれない。でも諦めたくないんだ!」


 サリアは何も言わない。

 勢いよく頭を下げた為今サリアがどんな表情をしているのかは分からない。


 それでもルドラはサリアが話し出すまで静かに待った。


「……うん、知っている。ミスラさんでしょ?」


 少ししてから話し出したサリアの声は少し震えている。

 ルドラがゆっくり顔を上げると声に反してサリアは優しい笑顔を浮かべていた。


「いつも見てたもん。ミスラさんと話している時のルドラ、すっごく嬉しそうな顔していた。本当はこのままでいたかった。でも……」


 話していく内にサリアの目には涙が溜まりはじめ、声は震えているがそれでも話すのを止めずルドラも黙ったまま静かに聞いている。


「でも、ルドラはミスラさんに好きになってもらう為にいつも一生懸命だった。好きだって伝えて、好きになってもらえるように動いていた。なのに私は……ただ好きだと想っているだけで、何も行動してこなかった。そんなの、好きになってもらえる筈がないって気づいちゃって。今更伝えても、どうしようもないって……それでも、どうしても言いたかった」

「サリア……」

「だから、ありがとう」

「え?」


 そう言ってサリアはにっこりと笑った。

 目にはまだ涙が溜まっていたが、その表情は晴れやかとしている。


「私の告白を聞いてくれて。……仲間だとかそんなのじゃなくて、ちゃんと女として見てくれた上で返事をくれて。そしてごめんね。私、これ以上ルドラと一緒にいる事は出来ない」

「…………」


 それは当然とも言える事だった。

 告白して断っただけでも十分過ぎる程に気まずいが、ルドラには他に好きな人がいる。

 そんな状態でこれから先ずっとルドラと居続けられる程サリアの心は強くなかった。


「今までありがとう。ルドラとの冒険、とっても楽しかった」


 サリアはしっかりと頭を下げてお礼を言うとルドラに背を向け先程出てきた街とは違う方向へと歩き出した。


「……サリアっ!」


 そんな背中を見ながらルドラは思わずサリアを呼び止めた。

 サリアは素直に足を止め振り返り、素直に待っている。


「その、俺よりいい男は中々いないかもしれねえ。でも、サリアの事を一途に想って誰よりも大事にしてくれる奴は必ずいる! 俺が保証する! お前はいい女だ!」


 言われた言葉にサリアは一度驚きで目を開くと、とうとう大量の涙が流れ出した。


「うん……うん、ありがとう。ルドラの恋はきっと上手くいくよ、私が保証する」


 泣きながらも笑顔でそう言うとサリアは今度こそ背を向けた。


「……よしっ!」


 サリアの姿を見送るとルドラは気合を入れるように自分の両頬を叩いた。


「サリアが勇気を出して告白してくれたんだ。俺だってずっとこのままでいるわけにはいかないよな」


 そう言ってルドラも自分の想い人、ミスラのいる街へと向かって歩き出した。


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