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戦い終わったその後

  現在ゼビウスは冥界にある自分の家のベッドに仰向けで寝たまま全く動けずにいた。

 すぐ側ではトクメが椅子に座り無表情で黙々とリンゴを剥いている。


「うぅ……嘘だろ、指一本も動かせねえ……」

「当然だ」


 ゼビウスの呻きにトクメはリンゴを剥く手は止めたが視線はそのまま動かさず素っ気なく答えた。


「鎮静剤の効果が切れていたとはいえ直後にあれだけ暴れて何の反動もないほうがおかしいだろう」

「なら鎮静剤打たなきゃ良かったんじゃ……」

「打つ前に警告した筈だ、はしゃぎ過ぎだと。あの時点でかなりの負担がかかっていたというのに聞きそうになかったから鎮静剤を打った、にも関わらず効果が切れた途端に動きまくったお前が悪い。自業自得以外に何と言う、因果応報か?」


 心なしかいつもよりか言い方がきつく冷たいトクメに何も言い返せなくなったゼビウスだが、トクメは他にも言いたい事があるのか再びリンゴを剥き始めながら口を開いた。


「結局あの後ヴィルモントの『終わり』という言葉で旅行も終わったとムメイは勘違いしてしまい、せめて最後の思い出としての観光や土産を買う事もなくグダグダな状況で旅行は終わってしまった。本来ならまだ旅行は続いていた筈なのに何故こうなった」

「それが本音か」


 そしてこれが真意ならばゼビウスは関係なくただの八つ当たりなのだが全くの無関係というわけでもなく、下手すると闘技場に参加しなければまだ引き延ばせたと言われそうなのでゼビウスはこれ以上トクメの機嫌が悪くならないよう何も言わずにいる。


「また旅行すればいいだろ、今度は行ってない大陸で。俺も付き合うから。それより腹減ったんだけどまだ剥いてんの? 何作ってんだよ」


 しかしこの拗ねているトクメを放置して微妙な空気のままでいるのも避けたいゼビウスは一応トクメを気遣いながら話題も変えようと空腹を訴えてみた。


「丁度今出来たところだ。今回はヒドラにしてみたのだが、時間が余ったのでそのままヤマタノオロチに変更した」


 ゼビウスが聞いた瞬間、無表情から一瞬でいつもの謎に自信の満ちた笑みと共に自慢げにリンゴを見せるとトクメは一番端の首を摘んで折り、自分の口へと運んだ。


「お前が食うのかよ。俺のは?」

「指一本動かせない今のお前ではすりおろしたリンゴでも消化は出来ないから諦めろ。回復したらメドゥーサでもグリフォンでも望みのものを作ってやろう。だから今は空腹を堪えながら私がリンゴを食べているのを大人しく見ている事だな」

「嫌がらせか」

「何を言う、正々堂々と揶揄える立場を手に入れた今それを思う存分利用し楽しまない理由はない」

「……そうかよ」


 恐らく以前の塩づくしの仕返しなのだろうが、こうなってはどう足掻いても勝てそうにないとゼビウスは観念し、せめてもの抵抗として静かに目を閉じた。

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