騒動の予感
ムメイ達が今いる街はミュルー。
ゼビウスが飛ばした二つの街の残り一つで、それなりの大きさではあるが特に何か名産品があるわけでもない。
「ヒールハイじゃないの?」
「ん? まあここまで来て一個飛ばすのも何か気になるし、一日ぐらいいいかなって」
「そういう事なら……」
トクメならば確実に疑っていただろうゼビウスの言葉にムメイはあっさり納得し、シスも特に何も思っていないようだった。
しかしヴィルモントだけはゼビウスを睨みつけていた。
「何」
「……絆されたか。以外と情に厚いのだな」
「……ふーん、ヴィルモントはそんなに早くヒールハイに帰りたいんだ。何か理由でもあんの? 長時間日光に晒されて弱ってきたとか?」
「………………」
「あっ、ヴィルモント!」
挑発するも見事に仕返しされ痛い所を突かれたヴィルモントは一際強くゼビウスを睨みつけると何も言わず街の中へと消えていき、ダルマは慌てて後を追った。
「相変わらず分かりやすい奴。ん?」
気づけばムメイとトクメもいない。
ムメイも何だかんだこの旅行の終わりに気づき、最後の一日としてトクメと一緒に行動しようとしたらしい。
「シス、俺達も街を見て回るか。これと言った名産がないだけで、街にある品は質がいいし種類もあるから見るだけでも楽しいかも」
「あ、ああ」
それならばとゼビウスもシスと旅行最後の街の観光を楽しむ事にした。
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その日の晩、トクメの取った宿は広い露天風呂があり折角だからと向かったのだがそこには先客がいた。
「あれま、偶然」
七大悪魔の筆頭ともいえる魔界最強の悪魔、サタンが。
サタンはヘラヘラしながら軽く手を振りゼビウスに挨拶をしているが他にもいたベルゼブブとベルフェゴール、そしてゼビウスの変化に気づいたシスに緊張が走った。